この家のような店の、困った認識について申したい | 神戸加納町「BAR志賀」と昼の顔(中毒性日記Blog版)

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水曜日。少し寒さは和らいだ感あり。

夜。店の終わりに近づいた頃の話。

 

………

 

「この店は、ハイソな人達が来る店なんですね」

 

店のお客さん(以下Aさん)が連れてきた男性が、帰り際に僕に聞こえるように言った。ここまで過ごした数時間で、おおよそその方の性格は判っていた。それはおそらく褒め言葉であり、僕が喜ぶものだと思ってそう表したのだろう。

 

この男性が「ここまで過ごした数時間」はこうだ。

 

看板もない、不可思議なロケーションの店に連れて来られて少しテンションが上がってたのかも知れない。この方はAさんの二つ年下らしいが、最初は対等に話していた。誰でも得意分野はあるもので、その部分ではAさんより分があるようだ。

 

しかしお酒も進んでか、ある時に立場が逆転する。

Aさんは誰もが羨む車を持っていて、見るからに高そうな時計やバッグを携えている。なぜか男性はそのうちに、Aさんを褒めることしかなかった。褒める…いい方を変えれば、下手に出てゴマをするしかしなくなったのだ。

「ずっと凄い時計してるなって思ってたんですよ」

「そんなにたくさん持ってるならくださいよ」

「なんなら運転手させてください」

と、褒めちぎった。その方の性格がどんどん見えてくる。

 

仮に自分の仕事が不安定で、状況が悪いとすれば転職や方向転換も必要なのだろう。しかしそうして自分を卑下しながら相手を褒めて、その人の「おこぼれをもらう」ような態度をする人は、Aさんに輪をかけて上手の人間に出会ってしまったらそちらに鞍替えをする。そういう人を、僕はこれまでたくさん見てきた。

 

………

 

「ハイソ?その意味合いがよく解りませんが、それは高いステイタスのことでしょうか?僕はその人のバックボーンや仕事の立場で判断などしませんよ。店には入社1年目の方もいらっしゃいますし、定年を迎え年に一度だけお越しになる方もあります。どの方も皆、私と差し向かいにお話をして、その人となりを互いに知った仲なのです。そんなウチのお客さんのことを『ハイソ』などと、簡単に一括りにしないでいただきたい」

 

そう丁重にお伝えした。Aさんは、次は志賀さんと話せばいいと笑った。男性は怪訝そうに、もしかすると「なんだ?この店は」と思ったのかも知れない。それでいい。ハッキリと伝えるということは、二度と会わないか、また会えるかのどちらかである。曖昧な態度は店の没個性であり、独特の空気も保たれなくなる。

 

僕の顧客の捉え方は、頻繁に来てくれることや、たくさんお金を落としてくれる人ではない。まぁこのように偏屈な性格だから、話し込んだ人だけに解ればいい。

 

このやり方は店を始めた頃から何ら変わっていない。ポリシーとかこだわりじゃなく、それしかできない僕だから仕方がない。見た目や上っ面で判断する人には一生混じり合うことのない理屈。

 

話し、感性が合う。そしてまた会いたいと願う。

 

そこに、その人のステイタスなどもうとっくに消え去っている。