「私はフラメンコダンサーになるんだ」


放課後の部室で、彼女は目を輝かせながら夢を語った。

将来なりたいものも人生の目標もなく精神的に自立していなかった当時の私としては、同年齢の友が自分の将来を語る姿がとても印象的で、忘れられない場面となった。


学年が進み、彼女と私は進路が分かれ、彼女は理系、私は文系。教室が離れ、自然と交流が減っていった。卒業後、私は地元に残り、彼女は東京の語学で有名な大学へ進学した。


それぞれの人生を歩み始め、時が流れた。自分の先行きに対して不安や迷いを感じた時、ふと彼女のことを思い出すそしてあの言葉を。


「私はフラメンコダンサーになるんだ」


ある時、風の噂で彼女がフラメンコダンサーになったと知った。やはり彼女は夢を実現させていたのだ。驚くべきことに、私に何気なく呟いたあの時の言葉の中に、彼女は自分の人生を確実に決定づけていたのだ。


いつか会えたら

自分の目で確かめられる日が来たら



2018年。

ついにその日が来た。

高校を卒業してから34年が経とうとしていた。この年、卒業以来、一度も出席したことのなかった同窓会に、初めて出席することになった。最初はサブ幹事というスタンスでの出席と考えていたが、なんとこの同窓会、ゲストが彼女というのを何日か前に耳にした。


いよいよ当日。

楽屋に入っているであろう彼女には会うこともできず、再会したのは、ステージ上の華としての彼女と、客席にいる私というシチュエーション。

華やかなドレスを着た彼女。

フラメンコギターの演奏や歌が会場に響き渡る。

舞台で美しく情熱的な踊りを披露している姿夢ではなく現実なのだ。



ステージ終了後、彼女はドレスのまま私たちの席に姿を現した。

私の姿を見つけ、お互い目が合った瞬間、名前を呼び合い、思わず抱き合った。

私が時々思い出していたことを話すと、「私も」と彼女。  

もう長き間の空白は関係ない。

感無量とはこのことだ。


2018年、同窓会会場にて



興奮冷めやらぬ中、閉会後、

34年の空白を埋めるかの如く、時の経つのも忘れ、お互い歩んできた道を語り合った。

彼女がひたむきに歩んできた道のりが言葉の中に滲んでいた。

部室で夢を語っていたあの時の彼女と少しも変わっていないどころか、それ以上に輝いていた。



彼女はフラメンコダンサー、

 

「夢は見るものではなく、叶えるもの。」


それは、彼女の生き方が教えてくれた大切なこと。



#フラメンコダンサー

#高野美智子