#ピエールの宴 参加作品です。
独立した商品ですが、第1話、第2話との連作としてもお読みいただけます。
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「待った?」
彼女はある眼科の視能訓練士。
確か…同窓生です。
休日を利用して、あるイベントの打ち合わせに来たのでした。
「ううん、ちっとも」
「ね、手をかして」
席に座って、すぐ彼女は私にそう言いました。
なんの疑問もなく腕を差し出します。
私の腕をひいて、彼女は袖をまくり上げます。
「すべすべね。これどうしたの?」
わかっているくせに、意地悪く彼女は聞きました。
「そ、その…女装が必要だっていうから」
彼女は満更でもない表情になりました。
私の手首をつかみ、腕を摺り上げます。
ざわわっとする感覚。彼女は私の顔色の変わるのを見ているようです。
「剃ってくれたんだ…ふふ」
そういわれると、うれしさがこみ上げてきます。
「これからどこへ行くんだい?」
「私のうちへいらっしゃい」
「え、だって」
私の抗議をさえぎるように、顔の前に手のひらをすっと広げる彼女。
視界が彼女の手のひらでいっぱいになり、息が一瞬止まりました。
声も思考も止まります。
「ちょっと、目をつぶって」
素直に目を閉じる私。
「瞬きして…」
ぱち、ぱち。
「はい開いて…」
「私の目をじーっと見て」
じーっ。
「一緒に、目を、閉じて…」
力が抜けたような気がします。
「何も心配しないで…ついてきてほしいの」
目を開けました。
私は何を心配していたのだろう。
何も考えず、彼女についていけばいいのです。
イベントって何だっけ。
たしか学生時代は演劇部だったな。
腕が脚が、服に滑らかにこすれて、シルクのような滑らかな感触が気持ちいいです。
胸さえ毛が無くて、直接擦れて刺激されています。
気持ちがフワフワしています。
これから起こることはわからないけれど。
まあ、なんでもいいや。
素敵な予感に、ぞくぞくしています―。
(第3話完)
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さて、①と②を無事(?)つなげたところで、この連作はおいときまして。
(後先考えず書き始めたので、考えてる展開が多すぎてどうしようかって…すみません)
「#ピエールの宴」、次回からは違った切り口で参加します。