・普及活動を本格的に再開
感染症騒動の落ち着きを受け、外部への普及活動が再び活発化、10月からは帯広市内の幼稚園や保育園を対象としたPR馬フクスケの馬車運行が再開された。また、10月の東京競馬場でばんえい十勝フェアを開催、1月にはPR馬ハクウンリューが四年ぶりに川崎競馬場へ出張、2月に馬事公苑で行われたホースメッセでもトークショーが開かれるなど、道外での活動も目立った。

昨季から徐々に制限は緩和されていましたが、ようやく元に戻った、と言っても良いでしょうかね。PR馬の道外競馬場への出張は過去にも幾度も行っていますが、当時とは比較にならないほど売上が上がり、新しいファンも増えたでしょうし、いま改めて行うことの意義は大きいと考えます。
SNS等で見ましたが、川崎のイベントはなかなか盛況だったようで、ホースメッセも多くの方にご参加いただいたとのことです。ちなみに私はハクウンリューには乗ったことがないので、ちょっと羨ましいぞ笑

・記録的猛暑の夏
観測史上最長の44日間連続真夏日を記録するなど、とにかく暑かった北海道の夏。帯広も7月下旬から猛暑日となるほどの暑さに見舞われ、9月にも真夏日を記録、馬の体調管理に苦心する長い夏となった。

道民はその後の冬と雪に記憶が上書きされているかもしれませんが、異常に暑い夏でしたね。お盆を過ぎれば夜は半袖では肌寒いくらいになるのが普通なのに、ずっと暑さが続いて、お馬さんも大変だったと思います。本場でパドックを見ていても、夏負けしてるっぽいと思えることが明らかに多かった。
帯広競馬場にはドリンクの自動販売機が数台あるのですが、どこに行っても清涼飲料水系と炭酸飲料はすべて売り切れ、ということもありました(;・∀・)

・今季も強い7歳世代
重賞を3勝したメムロボブサップ(牡7/8、坂本)を筆頭に、今季も古馬戦線を牽引した7歳(明け8歳)世代。アオノブラック(牡7/8、金田)も重賞3勝、インビクタ(牡7/8、松井)も重賞勝ちを収めるなど、改めてその強さを示した。

まあ二強に関しては、今季もこれくらい活躍するというのはある程度予想されましたが、一段と凄味を増したように感じます。インビクタも昨季よりまた強くなったと思いますし、コマサンエースも健闘しました。もとから強いうえに成長力もあるというのが素晴らしいですね。
二歳年上のメジロゴーリキに帯広記念とばんえい記念を持って行かれたのは意外と言えば意外でしたが、そのゴーリキが引退しては、来季は止める馬がいない……かな。とはいえ、下の世代の奮起にも期待したいところです。

・苦心重ねる馬場管理
第1回能力検査の前に、本走路の砂の入れ替え作業とともに、ロードヒーティングのパイピング更新作業も行われた今季。昨季とは砂の質が違うのか、例年より掘り下げた影響なのか、開幕直後から雨が降っても極端な高速馬場となることはなかったが、第10回開催終了後にスタートから第一障害後までの地点において砂の入れ替えを実施。さらに、第11回開催終了後に第一障害後から第二障害手前までの地点を、第14回開催終了後にはゲート内および発走地点の砂も入れ替えるなどの工夫が凝らされた。

私の知る限りでは、シーズン中に砂の入れ替えを行うのは初めてだったはずですが、その効果もあってか、全般に良い馬場状態を保っていたと思います。具体的に数えてはいませんが、2分を超えるレースも過去二季よりだいぶ多かった印象です。
天候や時期によって馬場が変わるのは面白さにつながりますが、昨季や一昨季は、ずっと軽いうえに少しの雨だけで極端に速くなり、かえって興を削がれるほどでした。主催者側も、それを良しとはしていない、という姿勢を示し、対策を打ってきましたが、今季はうまくいったと言って良いと思います。
シーズン終了後に、来季へ向けて砂の入れ替えが行われますが、例年のように全体ではなく、今回は第二障害からゴールまで、すなわちシーズン中に手を加えなかった部分に限ったものとなります。裏を返せば、来季も途中で第二障害手前までを入れ替える予定があるということでしょう。試行錯誤を重ねながらも、最良の形を見つけていただきたいものです。

・今井千尋騎手が史上最速で通算100勝
今井千尋騎手(23歳、今井茂雅厩舎所属)が11月6日に通算100勝に到達。2022年12月10日の初騎乗から332日目、773戦目での100勝達成は、金田利貴騎手の395日目、島津新騎手の855戦目をともに更新する、ばんえい競馬史上最速記録。また、兵庫の佐々木世麗騎手(396日、870戦)が持つ記録を更新する、日本競馬における女性騎手歴代最速の通算100勝ともなり、NARグランプリの優秀女性騎手賞も受賞した。

当時、だいぶ力を込めて書いた記事↓をご覧いただきたいのですが(^^;

 

女性騎手の10キロ減とか、馬質に恵まれているとか言われることもありますが、デビュー当時とは御し姿からして違いますし、技術的なことはわからない私でも、シンプルにうまいな、と思います。ヤマの上げ方とか追いっぷりとか、バタバタしたところがなくなって、じつに流麗に映ります。
本場のエキサイティングゾーンで観戦するなら、馬券はさておき、騎手の動きをよく見ると面白い、それを見られるのもばんえいの魅力、と私は思っているのですが、誰を見るかとなると、今は断然で千尋さんをお薦めします。

・おびひろ動物園に「馬ふれあい舎」新設
帯広市が所有するおびひろ動物園内にて新設された「馬ふれあい舎」が12月2日よりオープン。トラシゲ(牡9、大河原)とムホウマツゴロウ(セン6、谷)の二頭が飼育展示馬として導入された。獣舎前の放牧場で展示され、来場者と触れ合う時間帯も設けられている。

以前から報道もされていましたし、どの馬かはわからないけど、競馬場から行くことになる、とは伝わっておりました。
私もオープン初日に帯広にいたので様子を見に行きましたが、「ふれあいタイム」が設けられていて、多くのお客様が来ていたものの、帯広競馬場内の「ふれあい動物園」へもよく行く身からすると、ちょっと期待外れというか、物足りない印象があったのもたしか。率直に言うと、競馬場のほうが、自由にニンジンをあげられて触りまくれて、何倍も楽しめるでしょう。
でもまあ、市営の動物園にばん馬が導入されたことを、まずは喜ぶべきなのかな。ここはあくまで叩き台であって、いずれは全道あるいは全国の動物園に重種馬がいる未来を望みたいと思います。

・激戦の3歳戦線
マルホンリョウユウ(牡3/4、金田)が7月のばんえい大賞典、11月のばんえい菊花賞と3歳の二冠を制するも、12月のばんえいダービーではタカラキングダム(牡3/4、村上)が復活の凱歌。来季の4歳三冠争い、さらにその先への激戦が期待される。

本格化を示し、安定感を増したマルホンリョウユウの三冠が見られるかとも思えましたが、昨季に世代最初の重賞ナナカマド賞を制していたタカラキングダムがダービーで鮮やかな復活を見せました。
4歳でも三冠戦があるばんえい競馬、今季の三冠すべてで2着だったホクセイタイヨウ、巻き返しを期すキョウエイプラスやアシュラダイマオーに、牝馬のスーパーチヨコも加わっての世代王者争いは、なかなかに面白くなりそうです。

・キングフェスタが4歳三冠達成
キングフェスタ(牡4/5、小北)が、7月の柏林賞、9月の銀河賞、年明け1月の天馬賞を制し、史上5頭目となる4歳シーズン三冠を達成。2歳シーズンに重賞3勝、3歳時にも重賞2勝を挙げており、世代王者としての地位を確固たるものとした。

何度も書いているように、全体レベルが非常に高い4歳(明け5歳)世代なのですが、その中で抜けた成績を収めているのだから文句なし。昨季までと比べると、たしかに障害で乱れる場面が増えてはいますが、かえって課題がはっきりしてきただけに、その課題と向き合いつつも上に挑む来季は、結果よりも内容が大事になるでしょうか。これも何度か書いているように、荷を積んで良い馬とは決して思えないのですが、それも成長次第でしょう。

・持ったままサクラヒメ
サクラヒメ(牝5/6、今井)が5歳シーズンの今季も充実、11月のドリームエイジカップで牡馬を完封しての重賞勝ちを挙げたほか、レディースカップ、スピードスター賞と、準重賞も2勝。代名詞とも言える「持ったまま」が今季も見られた。

世代限定重賞を除くと、牝馬が牡馬相手に重賞を勝ったのはキサラキク(2016年11月ドリームエイジC)以来7年ぶりとなります。1月の柏林馬事公苑特別でアオノブラック以下を抑えた星もありますが、すっかりお馴染みとなった「持ったまま」、追って伸びる馬ではないとはいえ、邪魔をしないのが一番の扶助、と心得ている渡来心路。

・ダイヤカツヒメが春冬統一女王
前年のオークス馬ダイヤカツヒメ(牝4/5、久田)が、4歳になった今季も5月のカーネーションカップでタイトルを加えると、年明け1月のヒロインズカップも勝利。限定重賞二つを制し、牝馬の頂点に立った。

4歳限定のクインカップこそ4着でしたが、古馬相手、それもサクラヒメを抑えての重賞2勝ですから、見事の一言です。来季はハンデがなくなりますが、馬体が小さくても真面目に動きますし、過去の名牝と言われる馬たちと比べても遜色ないほど強いですよ、この馬は。前述のようにレベルの高い世代ですが、牡馬相手でも、の期待感もあります。

・日の出の勢いライジンサン
12月のヤングチャンピオンシップで初重賞制覇を挙げたライジンサン(牡2/3、大河原)が、2月の翔雲賞、3月のイレネー記念と立て続けに制し、重賞3勝。混戦模様の世代から一頭抜け出し2歳シーズン王者となった。

なかなか上位の序列が付けにくい世代という印象もあったのですが、終わってみれば特別と平場も含めての5連勝で、ライジンサンがはっきりと頭ひとつ抜けた存在となりました。ヤングCSが600キロで1分26秒2、イレネーが690で2分00秒4と、違う競馬でも結果を出しているのが能力の証しとも言えます。それでも、この時期なので当然とはいえ、まだ伸びしろが大きいと思える馬も他にいますし、この世代も面白くなりそうです。

・メジロゴーリキが有終の美を飾る
メジロゴーリキ(牡9/10、松井)が農林水産大臣賞典ばんえい記念を二度目の制覇。
ついこの前に語ったばかりなので詳細は省略しますが、競走馬引退と種牡馬入りが正式発表となりました。また改めて単体の記事で書きたいとは思っています。

・圧巻の鈴木恵介
196勝を挙げた鈴木恵介騎手(47歳、服部義幸厩舎所属)が、2年連続13度目となるリーディングジョッキーに。今季は重賞11勝を挙げ、金山明彦・元騎手(現調教師)が1980年度に記録した年間重賞最多勝利記録も更新した。
1位 鈴木恵介 196-135-99-667(1097)
2位 西 将太 135-121-109-741(1106)  
3位 島津 新 134-92-77-738(1041)
4位 渡来心路 120-109-94-576(899)
5位 赤塚健仁 119-100-116-768(1103)

昨季の203勝に及ばずとも、シーズン序盤から独走態勢でぶっちぎり。あまりG1とかG3とか言わない競馬ですけど、七つしかないG1を5勝するなど、特にシーズン後半で第一人者の大きな存在感を示しました。ルイズとかマルホンリョウユウとか、やっぱり恵介の技術も大きかったと思います。
ほかに関しては、新が昨季に続いての3位。8月のグランプリ当日に本場でシンポジウムがあって、パネリストとして新が参加していたのですが、「リーディングを取りたい」とはっきり口にしていました。そのためには周りの馬や展開の研究も必要になる、とも。
あとは健仁くんが自身初となる100勝超え、依頼数の多さも目立ちます。やや地味な?イメージがありながらも、うまい騎手だと私はずっと思っていたので、ちょっと嬉しい笑
ここには出ていませんが、112勝で9位の金田利貴は、少し伸び悩んでいる印象も私は持っていたのですが、今季は一皮むけたと思います。
そういった若手の台頭もあり、藤本匠(87勝、13位)、藤野俊一(70勝、14位)といった還暦オーバーの重鎮二人も世代交代の波に抗えなくなってきていますが、技術的にはまだまだ上のはずです。匠さんは5000勝まであと253勝、しゅんこは4000勝まであと319勝です。

・若き名伯楽が初のリーディング
金田勇調教師(51歳)が128勝で初のリーディングトレーナーを獲得。アオノブラック、マルホンリョウユウを擁し、重賞では5勝を挙げた。
1位 金田 勇 128-117-133-595(973)
2位 西 弘美 108-124-109-606(947)
3位 服部義幸 101-69-56-590(816)
4位 松井浩文 93-104-105-637(939)
5位 坂本東一 90-120-139-633(982)

今季に通算1500勝を達成するなど、すでに実績十分の金田先生ですが、開業21年目にして初のトップとなりました。上級条件馬がズラリと揃う良質馬の宝庫、ただし競馬というのはシステム的に、上が多いとかえって勝ち星が伸びにくいといった面もあるだけに、その中での128勝は驚異的です。上から下まで、満遍なく勝ち星を重ねられているのは、やはり厩舎の技術と思います。現役最年少の51歳、これからどれだけ勝つのでしょうか。
あとはまあ、ある程度お馴染みの顔ぶれですが、松井先生は若馬で存外稼げなくてもこの位置をキープ、そしてメジロゴーリキ。早い時期から活躍しながら古馬になってもう一段階上げられるのが松井厩舎、と私は思っていますが、これから良くなってくる馬がまだまだいますよ。

・今季も年間発売金額更新
本年度の勝馬投票券発売金額は559億5800万1000円と、前年度の554億7988万5100円を上回り、ばんえい競馬史上最高発売金額をまたも更新。12月30日には一日の発売金額としては過去最高となる8億1958万1700円を記録するなど、今季も好調な売上を維持した。

主催者側は予算段階では減益と見込んでいたような記憶もありますが、わずかとはいえ昨季を上回ったのはめでたいこと。帯広単独開催になってから、長らく100億円台が続いていたのが信じられないほどです(よくそれで競馬できていたな……)。
ただ、私は競技としてはもちろん、ギャンブルとしても中央を始めとする平地競馬よりばんえいが面白い、と主張する立場なので、まだまだ伸びしろはあると思いたい。一日で8億売れたと言うけど、その半分の4億でも毎日売れるようになれば(開催約150日)600億、6億売れれば900億ですぞ。
当ブログを日常的にご覧いただいていても、ばんえいの馬券はそれほど買ったことがないとか、「馬券はちょっと……」という方もいらっしゃるかと存じます。
バクチを無理強いするわけにはいかないのだけど、「ばんえいの面白さ(馬券含め)を知ってしまったら中央が物足りなくなった」という方を私は複数人知っていますし、私もちょっと近いところはある。
実際に体験してみないと結局はわからないので、あえてボカした感じで書きますけど、中央とは違う面白さが、たしかにあります。特に女性はそう思う方が多いみたいなんだよなー。
むかーし付き合っていた元カノも、中央には全く興味を示さなかったのに、ばんえいは専門紙を読み込んで予想してましたよ笑
まあ、男女の区別はさておき、騙されたと思って複勝100円でも買ってみると良い。一番競馬にのめり込んでいたあの頃、を思い出させてくれることでしょう。



2024年度は、4月19日(金)からの五日間連続開催で開幕します。
次年度も引き続き温かいご声援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


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少し話題が変わりますが。
4月3日(水)と4日(木)園田競馬場へばんえい十勝がお邪魔します!
ハクウンリューが出張しての馬車運行&ふれあい、来場者プレゼントや物販もあるようです。
トークショーには島津新と金田利貴、さらに蛯名彩ちゃんも!
詳細につきましては、ばんえい十勝の公式サイトをご覧いただきたいと思いますが、充実した内容で私も行きたいくらい笑
平日ではありますが、お近くの方、ご都合が合う方、ぜひともご参加くださいませ♪