こちらの作家さん、ひと月前まではお名前も存じませんでした。

店頭で見かけたタイトルが気になり、既刊を調べたらインスピレーションが働いて読むべき、

『読みたい』てはなく『読むべき』作品な感覚があり、積ん読に入りました。

私の場合、どきどきこのような直感を得て作品を購入することがあり、

『読むべき』作品は多少なりともエネルギーを消耗します。ですから、学生さんたちが好きでもない、将来的に必要とも思えない教科を、試験のために勉強しなければならないしんどさはわかるつもり。

私は誰に指図されるのではないからスルーしても構いませんが、このインスピレーションを無視したらいつまでも気になって、どちらにせよ疲れるので読むことにしています。

我ながら、非常に面倒な感覚です。

 

 

こちらは居場所を失ってさ迷う少年少女たちの物語。

これまで平凡に暮らしてきた彼らは、些細なきっかけから日常が激変します。

震災の影響であったり、イジメであったり、不慮の事故であったり、

そうして自責の念に苛まれながら周囲の非難に怯えながら、夜の町を徘徊するようになった彼ら。同じような境遇の若者が群れる駅前でひとときの空騒ぎをする中に、現代を象徴するアイテムや現象がふんだんに盛り込まれています。

パパ活に勤しむ子、推しに貢ぐ子、芸人を目指す子、進学校に通った子、暴力を使ってこの場を守る子、出身や学歴とは無縁につながる関係。知ってるようで知らない人間関係はひとときの安らぎを得ると同時に失う怖さと表裏一体になり、ここでも協調性の煩わしさを感じながらも離れられなくなっていく彼らに、新たな居場所への勧誘が来ました。

そこはバーチャルリアリティーの世界、そうして現実世界を仕切るグループからスカウトへ批判が起こり『裏切り者を探せ』が始まります。

 

大人社会でも『囲い込み』の現象はひどく、今や一般社会全体が派閥化しそうな時代。それを縮小した若者たちの動向は、企業活動同様にも見えます。決して『若者特有』の概念ではないと思います。

それほどカリスマの林立がはげしい現代社会は、どこへ行き着くのかしらん。

 

作中のカリスマはリンクさん、

リンクさんの経歴を知らない彼らは「身内には優しい人」と評価して慕います。ファンには、支援者には甘いリンクさんって、政治家も同じじゃないかい。

こちらの記事に『グルーミング』についてご紹介があります。