マッコリ屋への道(試作第一弾) | 聞きっぱなし言いっぱなし食べっぱなし

マッコリ屋への道(試作第一弾)

ふと思い立って「マッコリ」が飲みたくなった。恐らく梅雨の蒸し暑さからそんな気持ちになったのだろう、そう思えばしばらくソウルに行っていない。


ソウルに行った時の楽しみの一つに通称「マッコリ屋」に勉強しに行くことがある。


そもそもマッコリというのは漢字では「農酒」とも書かれるくらいの農民が自宅で作って飲む大衆酒で、「どぶろく」とか「濁り酒」と言われるものと基本的には似たタイプのお酒で、米を原料にし、麹で発酵させる、いわゆる「日本酒」の製作段階の前半部分で、濾過せず濁ったままいただく低アルコール飲料で、ここ数年は日本でも知名度が上がった人気商品でもある。


ペットボトルや紙パックに入った商品も多く存在し、韓国では非常に安価なお酒で、かつてはどこの韓国家庭でも作っていたほどの手軽なもの。そんなマッコリをハルモニ(おばあさん)が手作りして飲ませる店があり、「これぞ大衆酒場!」といった雰囲気が非常に気に入ってしまい以来通っている通称「マッコリ屋」。

なぜ通称かというと、最近まで店の名前を知らなかったからで、韓国人に聞いても「マッコリ・カゲ」(マッコリ屋)としか言わなかったからで、実際には「コカルビチプ 」という名前があるのをようやく知った。


ソウルの鐘路(チョンノ)と仁寺洞(インサドン)の中間の路地に飲み屋が軒を連ねる「ピマッコル」というエリアがあるがその中の代表的かつ圧倒的な人気を誇る「マッコリ屋」は窓が鉄格子で、天井が異様に低く、バラック小屋を増築につぐ増築で無理やり大きくしたような店というか小屋で、裏というか上にあるバッティングセンターの金属バットの「カンカン!」という音を聴きながら若いサラリーマン、学生などがいつ来ても満員大盛況で飲んでいる。


店内の雰囲気
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壁一面にはハングル文字でお客さんたちが自然発生的に始まった落書きが書かれ、これが店の内装として成立している合理性、以前ワタクシが母由起子を連れて行った時に、テンションが上がりすぎて真っ赤な口紅で「バンバンバザール」と書いたら友達の韓国人が涙目で「日韓友好デスネ!オニイサン!」と言われて、掛け違いの友好に苦笑した覚えがある。


ここは自家製マッコリが、バスタブのような大きな水槽に大量に注がれている


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マッコリは2リットルくらいかと、粗塩で食べるホッケの揚げ焼きをセットにして、客が座ったら自動的に出てくるシステム。これが12000ウォンだから1000円ちょっと。ちなみに普通は3~4人でこのセット1つが標準であるから一人に換算すれば・・・・まぁお通し程度の金額である。

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初めて行った時はびっくりした。マッコリは洗面器に入って出てきて、アルマイトの器ですくって飲むという、大衆的にも程があるスタイルで、しかも韓国人は酒を「チビチビ」飲まない。基本一気だ。2時間飲んでいれば10回は乾杯するし、おっさんが泣き出したり、店の人間に「サービス品を出せ!」と絡んだりと・・・韓国風飲酒マナーを徹底的に仕込んでいただいた道場でもある。


こんな大衆的ではあるのだが、マッコリがとにかく風味豊かな極上品なのだ。甘酸っぱくて微発泡で、アルコール度数はほぼビールくらいであろうか。手作り故に、季節によって味が異なり、夏場になれば酸っぱさが増し、冬場になれば炭酸度が増すところも奥が深く、ここの店主であろうハルモニに顔を覚えてもらうまで通った程のお気に入りの店である。


大体、6月7月あたりに多く訪れていたからか、梅雨時になるとマッコリが恋しくなるのだ。


というわけで以前からの目標のひとつ「マッコリ自作」に挑んでみた。




~マッコリ試作第一弾~


材料:米、米麹、ドライイースト、砂糖、水


米麹は、代用品。韓国では麦麹で作るそうだが日本でまず手に入りやすいのは米麹で、これはスーパーにも売っていて、味噌や漬物に家庭でも使う主婦もいるので入手が容易である。



米麹
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ドライイーストはパンやベーグルを焼くときに入れる顆粒の市販品でますは試してみる。


これらを用意してますは米を炊く。米3合を水少なめで硬く炊く。


適当な容器に炊きあがった米を入れる。今回はパスタ鍋に決定。発酵料理なので雑菌が繁殖してはいけないのでますは煮沸消毒をしておく。

パスタ鍋
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ご飯を入れたら、水1リットルを入れて温度を下げる。これが45度すこしくらいになるようにすると良いらしく、理由は麹菌が繁殖しやすいからだそうだ。あまり高温だと死んでしまうし低温だと発酵しない。

「湯が噛み付くゼ~」

「と江戸っ子が唸る程度の温度になったら米麹300グラムくらいとドライイースト小さじ1杯くらいを放り込んで混ぜる。
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ラップをする
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一応保温効果を狙って、タオルを被せる。タオルの上からでもすでに発酵が始まっているから「プツプツ・・・」と音が聞こえる。これは初体験だが、いきなり「かわいい!」と強い愛情を持ってしまう酒造りの醍醐味である。

これにておやすみなさい。
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8時間ほど経過したところで
一度あけて、混ぜる。そして再び閉じる。


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1日後再びあけると、もう甘酸っぱい匂いと炭酸が鼻を突くほど進んできたが、今回は試作なのでもう一日置いてみる。


気温や湿度と関係が深いので、季節や土地によってこの「発酵時間」は違ってくるはずだとこの時点で予想する。仙台では3~4日かけているとの情報なので、梅雨時の東京では2日で十分であろうということで翌日開封、そしてざるで濾過する。豆絞りとか必要かとも思ったが細目なザルならそれだけで十分だった。

出来上がり
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早速試飲へ突入。


甘さ、酸っぱさ、炭酸、すべて存在する列記とした「マッコリ」になった!。正直こんなに簡単に出来て良いものか?と首を傾げてしまうが、今飲んでいるマッコリは試作とはいえ自作なのだ。これだけで嬉しくなってしまう。

そして、ラジオパーソナリティーのパートナーである西川佳江さんからお中元に恒例の「自作キムチ」を非常にタイムリーなことにマッコリ完成日に宅配便で届くという神の啓示、オイキムチ、カクテキとともにいただく。



自作マッコリと頂き物のキムチ
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やはり韓国の酒には韓国のアテである。器が若干上品であるが、ソウルのマッコリ屋をイメージしながら美味しくいただきました。


今回の試作でわかったことがいくつかあって、若干アルコール度数が高くなってしまったのだが、これは発酵時間を長くとりすぎたようで、この季節の東京ではもう半日から一日短くすればワタクシ好みのビール程度のさっぱりしたマッコリになったことだろうと思った。


しかしこのアルコール度数高めのライン、日本酒の濁り酒までは行かないのでせいぜい低めのワイン程度だと思うので飲みやすいことには変わりなく、酒の強い人ならガブガブいけるタイプとも言えよう。


この夏、試作を繰り返す予定なので、また報告します!