アバラ日記。 -51ページ目

忘却の果て。

アバラの中を深く抉られて
空っぽのままで生きていた
大きく開いた傷を手で隠し
足下の白い線を睨んでいた

そこらにあるものすべてを
抉られたそこに詰め込んで
コンクリートで埋め立てた
二度と元に戻らないように

忘却の果てに何があるのか
そんなことは知らないけど
このままここにいるよりは
マシだってことは知ってる

傷痕はいつか古傷になって
忘れられそうな頃にきっと
顔を見せては気が狂うほど
悲しませてくれるのだろう

それでもここに居たくない
すべて粉々に砕け散っても
またひとつずつ重ねるんだ
ただそれだけのことなんだ

今日も今日でまた日が暮れ
今日は明日で夏日になって
何回だって繰り返せばいい
何回だってやり直せばいい

化膿し傷から全てが腐って
しまわぬようにアルコール





 

オッケー。

生きた心地のしない数日を
何とかくぐり抜けられたか
真っ暗闇の長いトンネルは
イバラの道だから傷だらけ

あちこちヒリヒリするけど
魔法の薬などありゃしない
このままでいられないから
何とかして回復しなきゃね

何から始めればいいのかな
まずは停滞させてた仕事か
いきなり気が重くなるなぁ
まぁひとつずつ片付けるか

こんなことの繰り返しでも
生きてるだけでオッケーだ

一本。

遙か遠い日に教えられたことを
ちょっとしたことで思い出した

まだ剣道をやっていたころ
あたしはその何たるかなど知らぬまま
ただそこにある相手に勝つことだけを考えて
夏も冬も朝も夜も竹刀を打ち込んでいた

ちょうど大会を控えていた時期に
選手選考を兼ねた試合形式の稽古があった
やるからには選手になりたい素直さで
ひたすらに攻めて攻めて攻めまくった

実はそのころのあたしは子どもながらに
様々なストレスに巻き込まれていた
だから無意識に鬱憤を晴らすかの如く
剣道を続けていたといっても嘘ではない

稽古の結果は散々たるものだった
何度も一本を取ったはずが旗は挙がらず
すべてが時間切れで引き分けになって
その不可解さに少年バナヲはふてくされた

つまらないからもう剣道なんか辞めちゃおう
そんな思いで道具を乱暴に片付けていたら
道場の先生に呼ばれて話をされたんだ
その時はよく理解できなかったんだけど




武道はケンカではない
勝つことだけが武道ではない

お前の太刀には憎しみが込められている
憎しみや怒りからは一本は生まれない
どれだけの面を百本打ち込んでも
それは決して一本にはなりえない

だからおれは旗を挙げなかった

そしてそこにいる相手は『敵』ではない
敵は自分自身の中にいる

武道は己との戦いだ
己が揺らいだ瞬間にスキが生まれて
相手の竹刀が打ち据えてくるだろう

己と相手を受け入れたものが勝者になる
怒りを感じた時点でもう負けているんだよ

そこにいる相手を受け入れて愛せよ
その時に初めて一本が生まれる
冷静さと強さが合わさって『心技体』なんだ
何かが欠けても一本にはならないんだよ

武道は心を鍛えることが一番大切なんだ




それでも少年バナヲはふてくされていた
頭が悪くて理解できなかったのか
素直に受け入れられなかったのか
わからないけどしばらくして剣道を辞めた

どこかへ置き去りにした竹刀と一緒に
あの時の先生の言葉をずっと忘れていた
剣道を辞めるにしてもそれを忘れなかったら
もう少し上手に生きてこれたのかもしれない

受け入れること
それを理解すること
感情で揺らがないこと
自分から逃げないこと

とてもとても長い距離を歩いた雨の真夜中
いつの間にか懐かしい場所にたどり着いて
同じことを何度も何度も考えたり
あるはずのないタイムマシンを探したり

大人になっても上手くできないけれど
今からでも遅くはないかなと思った
少年バナヲが届けてくれたから
今度はふてくされないで行こう


フラワーカンパニーズ
「この胸の中だけ」



またフラカンですか
とか言わんといて