海外旅行経験は数えるほどしかないのですが、もう一度死ぬまでにみたいところ、行きたいところがあります。
優先度が高い順に列挙してみます。
1. ザイフェン(Kurort Seiffen)
ドイツとチェコの国境近くの小さな村です。鉱山から、おもちゃ作りに転換した歴史をもちます。くるみ割り人形や、木のクリスマスキャンドルスタンド(上に風車がついているやつ)等、木のおもちゃの工房が立ち並んでいます。
私はバレエ『くるみ割り人形』が大好きで、くるみ割り人形にずっと憧れをもっていました。しかし、田舎のおもちゃ屋ではそんなものは置いていない。こけしだってないんだから。
高校生のとき、軽井沢のエルツおもちゃ博物館で、初めてのくるみ割り人形に対面しました。しかし、思い描いていたものと少し違い、しかも高額でした。これは一度自分の目で買い付けないと思い、大学卒業を記念して行ったのがザイフェンでした。
ザイフェンへのアクセスは決してよくないです。
たしか、ドレスデンから電車とバスでいきました。遠かったです。
伺ったのが3月下旬だったので、観光客が極端に少なく、静かな、本当に霧の向こうの不思議なまち、の世界でした。
おもちゃ工房をみてまわり、一軒の工房で、一目惚れしました。
それは、高さ75cmほどの、青いジャケット、オレンジのズボンをはき、頭に王冠を戴いたくるみ割り人形でした。目鼻立ちがきれいで、ほんのりと赤い頬からは木目が透けて見え、優しげなホワホワの白い髪と髭、眉が特徴的でした。
これまで、みたことのない感じ。なんか、心がある感じ。
惚れ惚れみていると、お店の方(ご年配のマダムでした)が、
「素敵でしょう。彼はキングよ。」
と教えてくれました。
私は、もう心を決めていました。
「彼をください。」
彼女の親に結婚の挨拶するとしてもそりゃないよ、という感じのくさい台詞を吐いていました。
マダムはにっこり笑って「彼はあなたにぴったりよ。彼は特別な人形なの。」と言いました。結納金の5万円(当時)程を納め、彼を箱に入れて連れ帰ったのでした。
(近くには夫もいましたが、ほぼ空気的な扱いをされていました)
一応、ノイシュバンシュタイン城とか、ロマンチック街道とか、なんなのこれレベルにうまいソーセージとビールとか、いろんな面白いことはあったけれど、ザイフェンを超える町に出会ってない。もちろんそれは、想い出をふくんでいるからなのでしょう。
その後、フランス、イタリアとめぐったのですが、キングが重すぎてつらかった。絶対落っことせないし。
【注意】このシリーズは、あくまで私の過去の記憶(20年前)をもとに記載しております。行ってみたのにつまらなかった、というお客様都合の苦情は承りかねます。