アメリカの方は、ご気分を害される可能性がありますので、読まないでください。
ヨーロッパ退屈日記
天才というと、ある分野に突出した才能を持つ人々が注目されがちです。
天才のイメージ図として、白衣を着て黒板に数式などを書きなぐっている、外見を気にしていない男性像が採用されているのも、大部分の人々の認識がそうだからでしょう。
しかし、世の中には、多方面に秀でた天才もいます。そういった人は、有り余る才能があるばかりに、どうも飽きてしまうことも多いようです。
そのため、その才能を過小評価されがちになることもありそうです。
ここに、伊丹十三という天才をあげます。
ご存じ、映画監督であり、俳優としても有名な彼は、優れた言語習得能力、音楽的才能、観察眼、文才も同時に与えられていたようです。
伊丹さんを過小評価しているなんて、と思われるかも知れませんが、私は彼の映画監督、俳優以外のことをほぼ存じ上げませんでした。
それは友人から頂いた『ヨーロッパ退屈日記』という彼のエッセイを拝読した時のことです。
彼の感性・曇りなき観察眼、そしてそれを余すことなく伝えられる文章力に、ただただ驚愕致しました。(ちなみに、このエッセイはしばしば爆笑してしまう箇所があるので、電車の中で読まないことをお薦めします。)
その中で、彼はいわゆる『取り出し教育』を受け、そこで英語を習得したとありました。また、音楽の素養はなかったと自分で言いながらも、途中からバイオリンを練習し、上達するという。
何とも超人的なことをやってのけているわけです。しかも、めちゃくちゃおしゃれでかっこいい。
しかし本人はあくまで控えめです。自分を『すごい』とは認識していないのです。
まあ、それはさておき、今のアメリカにひれ伏すだけの日本人に是非読んでいただきたいのが、上記エッセイに出てくる『パリのアメリカ人』です。
以下、一部抜粋
それから、あのアメリカ人の子供という奴。アメリカの大人というのも随分醜いものだが、その大人をそのまま縮尺して、そばかすだらけにし、眼鏡をかけさせた、あのアメリカの子供というのは、かなり醜いよ、悪いけど。(中略)
それにまた連中の食べるステーキの馬鹿でかいこと。まるで仁王様の草鞋のような、皿よりもでかいステーキを、珈琲で流し込んで、もう、エネルギーは牛のようにあり余った。そこでルーヴルへ乗り込んで、モナ・リザが小さく見えたって、わたくしは知らんよそんなこと。
伊丹十三 ヨーロッパ退屈日記 新潮文庫
今言ったら、叩かれること間違いなし!
でも、ごめんなさい、私もおもってました。
ハリウッド女優って、どうしてこんなのばかりなんだろうって。
目がでかくて口がでかくて、食われちゃいそうで、怖いもの。
ちっとも美しくない。
そして、どうして皆、ハーフとかアメリカの子供を可愛いと言うんだろう、と。
可愛いのは、日本人の子供の寝顔です。
美しい仏様の顔をしています。
まあこんな感じで、偏見と言われれば偏見なんだけれども、素直な感想を吐き出したらこうなるよね。という内容で、しかもそれが最高の文章で紡がれています。
お時間のある方は、是非!