ひと粒の、小石の泣く、
あまりに泣くので、私の目が潰れる。
カニエ・ナハ「小石」より部分抜粋
(『カニエ・ナハ詩集』青土社、p.172)
カニエ・ナハさんの
「小石」というタイトルの詩。
「小石の泣く」。
「小石が」ではない。
――それがこの詩では、
大切なことのように思える。
「小石が泣く」なら、
擬人化された小石が強く
前に出る。
「小石の泣く」だと、
小石自体の存在感がうすれて
石にまとわりついた気配が
立ち上がってくる。
詩人は、
その気配から目をそらさない。
触れてしまえば痛むと知っていても、
見届けなければならない何かが
そこにあるのだろう。
茨城県磯崎海岸の黒碧玉
私が
「この石は良いなぁ…」と思うのは、
その石がまとう気配に
心地良さを感じているから
なのかもしれない。
思い返せば今年の私は
毎日、石がまとう空気のなかにいた。
石の泣く。
石の笑う。
石の歌う。
石の語る。
石の愛する。
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