【鉱物言葉集】

ミヒャエル・エンデ「大魔術師ミラカンドラの子どものおもちゃ箱」より石に関する言葉







大魔術師ミラカンドラの子どもの


おもちゃ箱には何が入っている?


たつまきが巻いた古いコマ


羅針盤にさした生け花


色とりどりの生き生き夢見絵本


長居することちらっと思う


ほうき星の金髪の毛ブラシ


怪鳥グライフの

キラキラかがやくうぶ毛


胸(心)から落ちたおもい石





ミヒャエル・エンデ

「大魔術師ミラカンドラの子どもの

おもちゃ箱」より一部抜粋



(ミヒャエル・エンデ/ロマン・ホッケ[編]

田村都志夫[訳]『かっこだれでもない庭―エンデが遺した物語集』岩波書店)p.189より)








この詩は、

ミヒャエル・エンデの

未発表の詩のひとつ。




「たつまきが巻いた古いコマ」

「ほうき星の金髪の毛ブラシ」など、

現実にあるものと空想の断片が

散りばめられている。




その中にある

「胸(心)から落ちたおもい石」

という一行に心をつかまれた。




注釈によると、これは

「ほっと安堵する」ことをあらわす

ドイツ語の表現だという。




胸の中に長く留まっていたものが、

石になって、すとんと落ちる。



苦しみが終わることを

意味しながらも、

その石を見つめる目は

自分の中に残った大切な何かを

とらえているような……

そんな深みのある1行だ。

 



詩の後半では、

「おもちゃ箱」の中身がさらにふくらみ、

最後はそれらすべてを

「君だって持ってるかもしれないよ」

と、結ばれる。









エンデの

『はてしない物語』に、

好きな言葉がある。



「けれどもこれは別の物語、いつかまた、

別のときにはなすことにしよう」




物語は終わらない。 

そんな約束が交わされたようで、

嬉しかった。 




でも、エンデは

私たちに「別の物語」を

書いてほしかったのかもしれない

とも思う。




彼は

「人類とその世界の運命に心を痛める作家として自己認識していた」そうだ。

(編者まえがきより)




彼は憂えていた。

現代人が想像力を失い、

物語や夢から

離れていくのではないかと。



それは

『はてしない物語』の、

広がる「虚無」に現れている。




エンデはもういない。

物語の続きは私たちが

書いていけば良い。

ペンはすでに

持っているはずなのだから。







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