【鉱物言葉集】
宮沢賢治『ポラーノの広場』
より石に関する言葉
水晶
つめくさの花はちょうどその反対に明るく、まるで本当の石英ランプでできているようでした。
宮沢賢治『ポラーノの広場』
千歳古典名作文庫p.27
人々が酒を飲み、
歌い、踊る。
そんな楽しげな場所があるという。
行ってみたいけれど、
たどり着けるかどうかはわからない…
それが「ポラーノの広場」だ。
主人公のキューストは、
ひょんなことから知り合った
農夫ファゼーロたちと、
「ポラーノの広場」を目指す。
そこへの
道案内をしてくれるのが、
「つめくさ」のあかりだ。
それを賢治は
「まるで本当の石英ランプでできているようでした。」と表現した。
科学と自然、人工の光と野に咲く花。
『ポラーノの広場』には、
それらがふしぎに溶けあった美しい世界が広がっている。
水晶
石英ランプには、
「石英」という鉱物を溶かして作られた
特別なガラス(石英ガラス)が
使われている。
石英ガラスは、
高温や紫外線に強く、
透明度が高いのが特徴。
石英ガラスが使われたランプには、
高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどがある。
水銀灯の街灯
画像:Wikimedia Commons, Mercury Lamp
– Japan, photo by Momotarou2012,
licensed under CC BY-SA 3.0
宮沢賢治は『春と修羅』の序で、
自分という存在を
「仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明」と書いた。
つまり、
私たちの存在は、
電燈の灯りのような
「現象」であると。
私は、
自分も灯りのようなものなんだと
考えたら、
肩の荷がすっと下りた気がした。
灯りは、
ただともっているだけで
十分役割を果たしているのだから。
宮沢賢治の言葉



