【鉱物言葉集】
西尾潤『愚か者の身分』より
石に関する言葉
「その石はアメトリンでした」
「アメトリン・・・?」
聞いたことのない石の名前に
仲道は首を傾げた。
「紫色のアメジストと、
黄色のシトリンが混ざった
珍しい石です。
その石のことを教えてくれたのが
春翔でした」
西尾潤『愚か者の身分』
徳間文庫 p.131
『愚か者の身分』は、
第二回大藪春彦新人賞を受賞した
西尾潤のデビュー作。
戸籍売買に関わる半グレたちの物語で、
北村匠海主演で映画化され、
今年10月に公開を控えている。
この物語には
春翔という石好きな人物が登場する。
彼の石遍歴は幼い頃からはじまる。
兄弟はおらず、家には病気の母。
彼はよくひとりで
河原で石を拾って遊んでいた。
自分が生きてきた時間なんてたかだか十年程度だ。それに比べて、目の前の石たちが持っている時間のなんと長いことか。春翔にはそれがとてつもなくすごいことに思えた。
(p.100)
春翔には真貴という幼馴染がいて、
一緒に石拾いをした。
そんなふたりの思い出の中に
登場する石が
「アメトリン」だ。
ひとつの結晶の中に、
アメジスト(紫水晶)とシトリン
(黄水晶)が共存する。
主な産地は、
南米ボリビアのアナイ鉱山。
天然で、
アメジストとシトリンがはっきりと
色分かれして共存する結晶は、
他の産地からはほとんど採れないという。
その不思議なコラボは、
温度の差や鉄イオンの状態が絶妙に変化することによって生まれる。
まさに、
自然の偶然と奇跡が生んだ石。
それは、この物語のなかで
人と人の絆の象徴にもなっている。
私のボリビア産アメトリン(右の丸いの)
とアメジスト(左)。
おトク。


