だが、何より驚くべきことは、
そこに僕という一人の人間が
立っていたことだ。
つまり、
この惑星の丸い背の上、
隕石を引き寄せる力を持つ
純白のシーツと星空とのあいだに、
さながら鏡のように
火の驟雨を映し出す人間の意識が
存在していたことだ。
鉱物質の土台の上に存在する夢、
それは一つの奇跡だ。
今、僕は思い出す、
そんな夢の一つを・・・・・・。
サン=テグジュペリ著 渋谷豊訳
『人間の大地』
(光文社新訳古典文庫)(p 72)
サン=テグジュペリの
『人間の大地』は、
パイロットとしての
体験をもとにした自伝的エッセイ。
とにかく名言が多い。
リビア砂漠で、
テグジュペリとプレヴォが遭難。
極限状態のなかでの、
テグジュペリの言葉
↓
「待っていろ!………今、駆けつける!
………今、僕らが駆けつける!
………僕らこそ救援隊だ!」(p.154)
も、よく取り上げられる名言だ。
救援隊を待っているのは
自分たちではなく、
自分たちを心配し探して
いるであろう仲間や家族だと
いうのである。
目からウロコ。
つらいとき
この言葉を思い出そうと思う
私は「救援隊」
「… この惑星の丸い背の上、
隕石を引き寄せる力を持つ純白のシーツと星空とのあいだに、さながら
鏡のように火の驟雨を映し出す
人間の意識が存在していたことだ。」
飛行機で空を飛ぶ。
人々が生活を営む場所を
空から見ているテグジュペリが、
無限に広がる空と星空の間にいる
自分を意識する瞬間。
「鉱物質の土台の上に存在する夢」
地球の固い基盤である
鉱物や岩石の上に、
私たちの生活がある。
鉱物や岩石は数十億年の歴史を持ち、
地球の変化や生命の進化を象徴する。
それにくらべたら、
私たちの夢は短く儚いが、
「鉱物質の土台」の上で
ふわふわとどこまでも
広がっていくのだ。
ちなみに、
宮崎駿監督はテグジュペリの作品に
強い影響を受けているそうです。
新潮文庫の『人間の土地』では、
宮崎監督が新版文庫のカバーイラストを
担当し、あとがきも寄稿しています。
航空写真
地球儀の写真

