【鉱物言葉集】
本などから見つけた
鉱物(石)にまつわる言葉をご紹介します。
谷知子=編
『ビギナーズ・クラシックス
日本の古典 百人一首(全)』より
【原文】
わが袖は潮〈シオ〉干に見えぬ沖の
石の人こそ知らねかわく間もなし
(二条院讃岐)
【訳文】
私の袖は、引き潮になっても
見えない沖の石のようなもので、
人は知らないけれども、
乾く間もないのです。
【解説】
「石に寄する恋」という題を
与えられて詠んだ題詠歌である。
〜中略〜
…沖の石は、
秘密の恋をしている
「私」の象徴なのである。
海の底に沈む石と自らの恋を、
比喩という技法を超えて、
秘密の恋の象徴として
描いた一首である。
海の底に沈み続ける石は、
不気味なほど静かで、
絶望的な恋の心象風景である。
p224.225
なんだか重い…
涙が乾く間もないほど泣く
ような恋愛なんて、
やめてしまったら良いと
私は思う。
でもこの歌は
「石に寄する恋』というテーマ
に合わせて作られた歌。
この歌題は、当時
流行していたそうです。
石のイメージからすると、
明るく軽やかな恋愛
とは結びつきにくいですよね。。
石は重いから…しかたないよ。
「絶望的な恋の心象風景」
それを表すのが
この歌における
「沖の石」
「沖の石の」は字余り。
これを字数を合わせるために
「沖石の」としたら…?
別の本にこんなことが
書いてありました。
↓
石は意志などなく、
そこにただあるもので、
「沖石」だと石は石のまま。
漬物石みたいなもの。
ところが、「沖の石」とすると、
たとえ意志はなくても、
その石は、恋の思いを託すに足る
存在となる。
(「人に話したくなる百人一首」p215
あんの秀子著より引用)
「の」という助詞ひとつで、
石に役割が与えられている✨️
二条院讃岐は
この歌が代表歌となり
「沖の石の讃岐」と
呼ばれるようになったそうです。
「沖の石の讃岐」は、
秘密の恋をしたのでしょうか。
気になるところです🌝

