【鉱物言葉集】では

文学作品や、鉱物に関する著書、

音楽の歌詞などから集めた、

鉱物(石)にまつわる言葉をご紹介します。




開高健『珠玉』「掌のなかの海」より

先生は古本の山か、水夫袋のなかからか、一つのスェード革の革袋をとりだした。そして紐をほどくと、ザラザラと中身をチャブ台にあけた。これが小粒、中大のアクアマリンであった。


〜中略〜


だまって先生の言葉にうなずきながらチャブ台の石の集群に見とれる

泡の入ったのもなく、淡いのに強いのである。それでいて暢達である。

のびのびしている。衰弱や未熟の

淡さではない。これは海の色の他の何でもないが、北の海ではなくて、まぎれもなく陽光に輝やく南の海のものであろう。




〜開高健『珠玉』「掌のなかの海」より〜




写真はアクアマリンのさざれ石。

『珠玉』は、宝石をテーマにした
短編三部作で
開高健の絶筆となりました。

お話の中には、
アクアマリン、ガーネット、
ムーンストーンが出てきます。



アクアマリン原石



(画像:写真AC https://www.photo-ac.com/)