BANANAFISH二次小説 59丁目アパートシリーズ ある目つきの悪い猫の幸せ | BANANAFISH DREAM

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らぶばなですほっこり。59丁目のアパートでの思い出をシリーズにして数話お届けしたいと思います。アパートではこんな思い出があったのではないかなという妄想シリーズです。。。また素敵な絵本に出会ってしまったので、その内容を元に今回はあのイラストからの妄想も入っています口笛。お楽しみ頂ければ幸いです。ウインク

 

(アメブロ使用の方へ)ただいまアメンバーは募集しておりません。今後アメンバー限定記事のUPも予定しておりません。。。汗(申請されても受付しておりませんので、よろしくお願いします)


 

59丁目アパートメントの思い出シリーズ

「ある目つきの悪い猫の幸せ」

 

「えーと、頼まれた本は。。。あった」

 

英二はアッシュから渡された本のリストが書かれたメモを確認した。今日は二人でNY公立図書館に来ていた。

 

腕に抱えた本は合計で5冊。まだ探せていないものがリストに3冊あった。

ハードカバーの本の重みで腕がだるくなってきた。

 

(一度、アッシュのところに置いてこようか。。。)

 

リーデシングルームで黙々と文献を読むアッシュをちらりと見た。高い天井に青い空と雲が描かれているここは彼のお気に入りの場所だ。

 

メガネをかけ、時折何かをメモしたりタブレットで調べ物をしている彼は、どこからみても優等生の学生にしか見えない。彼がストリートキッズの恐ろしいボスだと一体誰が気づくのだろうか。

 

 

アッシュはよく図書館を利用する。誰でも利用できる公共の場で、敵から襲撃される可能性も低く、集中して調べ物ができるからだ。

 

美術館のような美しく広いこの場所で、静かに佇む彼はどこか儚くどこかその背中が寂しく見えるのはどうしてだろうか。

 

何か胸を締め付ける思いが英二にはあった。

 

 

「アッシュ、とりあえず見つけた本をここに置いておくよ」

 

英二が重ねた本を机の上に置くと、顔を上げたアッシュと目が合った。

 

「Thanks」

 

「僕、残りの本を探してくるから」

 

「あぁ、頼む。助かるよ、オニイチャン」

 

アッシュは穏やかな微笑みを浮かべた。むず痒い気持ちを感じながら、英二は席を離れた。

 

 

 

***

 

 

残りの本もすぐに見つけることが出来た。あの量だとまだしばらく図書館にいるだろう思い、時間つぶしの為にブラブラと歩き回る。

 

折角だから自分も本を読んでみようと思ったのだが、難しいものだと気がめいってしまう。アッシュに揶揄われるかもしれないが、子供向けのものならストレスなく読めるだろうとチャイルドルームに向かった。

 

英語だけでなく、日本語・中国語・韓国語の絵本や児童書も置いてありみていて面白い。

子供たちに混ざりながら本を手に取り、その場にしゃがみこみながら「へぇーこの本は昔読んだなぁ」とパラパラとめくっていく。

 

ふと、本棚から中途半端に出された本が目についた。その表紙に描かれた何とも目つきの悪い猫のイラストが気になり、手に取ってみた。

 

「The Cat That Lived a Million Times… どこかで見たことのあるタイトルだなぁ。。。あ、’’100万回生きた猫’’か。この本も懐かしい。。。 」

 

睨みつけるような視線の猫と、自分の親友をつい重ねてしまい、フッと微笑んだ。

その時、よく知る声が頭上から聞こえてきた。

 

「まさか」と思いながら振り返るといつの間にかアッシュが背後に立っていた。近づく足音が聞こえなかったのはさすがとしか言いようがない。

 

アッシュはニヤニヤ笑いながら奥の小部屋を指差した。

 

「オニイチャン、絵本の読み聞かせ会に参加するの?あそこでもうすぐ始まるよ」

 

「そ、そんなわけないじゃないか!もう!バカにして」

 

口を尖らせて文句を言う英二を無視して、アッシュは彼が読んでいた絵本に視線を向けた。

 

「何だそれ?」

 

「あぁ、この絵本?日本では結構有名だよ。’’100万回生きた猫’’というんだ。さっき偶然見つけたんだけど懐かしくてつい読んでいたんだ」

 

「へぇー、なんか目つきの悪くて可愛げのない猫だな」

 

「あはは、まったく!」

 

なぜか笑いだした英二の反応が理解できなかったアッシュは、この本に興味を持ったようだ。

 

「それ、どんな本?」

 

かすかな記憶を頼りに英二は説明しようとした。

 

「えーと、たしか。。。色々な飼い主の元で100万回死んでは生き返ってを繰り返した猫がようやく自由の身になるんだ。。。」

 

 

自由を求める猫に自分を重ねたのか、アッシュは「へぇ」と頷いた。

 

 

「飼い主は猫の死を悲しむのだけど、猫は飼い主が嫌いで全く悲しまないんだよ。。。ようやく野良猫になれた彼は100万回生きたことを自慢して他の猫にチヤホヤされるのさ。自分が大好きみたいだね」

 

 

「そいつ、相当ひねくれてるな。。。せっかく誰のものでもなく自由になれたことに同情してやろうと思ったのに」

 

 

「あはは。。。」

 

”目つきと口の悪さは君に似ているけどね”と言いかけた言葉を英二は笑って飲み込んだ。きっとアッシュなら自慢などしないだろうなと思いながら。自分の身を守る為に頭脳や美貌を利用することはあっても、彼が自分自身を”大好き”だと思っているかどうかと聞かれれば英二は即答できない。何度も自己否定する言葉を本人から聞いてきたからだ。

 

 

「それで、そいつどうなった? 嫉妬したオス猫に殺されたか、それともメス猫に騙されたか?」

 

結末が気になっているようなので、英二はつづけた。

 

「たしか。。。ある雌猫と家族になって。。。年老いて彼女が死んでしまって。。。嘆き悲しんだ猫も最後は死ぬんだけど、二度と生き返らなかった。。。はず。 うーん、随分昔に読んだから細かいところは覚えていないや」

 

 

「へぇ、とんだ悲惨な結末になったかと思ったけど、案外まともな終わり方だな。そんな面倒な猫と一緒になったメス猫の方に同情してやるよ」

 

 

「僕の説明あってるかちょっと不安だなぁ。。。それにどんな話だったか今更気になってきた」

 

「それなら借りていくか?ちょうど他にも借りる予定のものがある」

 

 

アッシュは脇に抱えた数冊の本を指差した。

 

「え、わざわざいいよ。荷物になるし。。。」

 

「一冊ぐらい増えたところでかわらねぇよ。そろそろここを出る時間だ」

 

「そっか、じゃぁ家で読んでみようかな」

 

 

二人はカウンターへと向かった。

 

 

 

***

 

 

 

その夜、珍しくアッシュは外出しなかった。久しぶりにアパートでゆっくり過ごす時間が嬉しくて、英二はDVDとスナック、ビールやジュースを用意してリビングのソファーに腰掛けた。

 

「おーいアッシュ。映画鑑賞しようぜ!」

 

ポリポリとバケツに入った大量のポップコーンを胸に抱えてアッシュに向かって手招きする。

 

「オニイチャン。。。そんなに食ったら太るぜ?」

 

「全部食べるつもりはないよ。日本でこのサイズは珍しいから、前から一度こうして食べてみたかったんだ。残ったら明日コングに食べてもらおうかな。」

 

口にポップコーンを放り込みながら英二はチップスの袋も開けた。

 

「おいおい。。。さっき晩飯食っただろう。。。」

 

呆れながらもアッシュもソファに座った。どうやら英二に付き合ってくれるらしい。

 

「ヘルシーなものが好きで太りたくない君はこういうの食べないだろう?」

 

「まぁ、滅多に食うことはないな」

 

「たまには食べてろって、ほら」

 

突然英二がポップコーンを口の中に押し込んできた。口の中に塩とバター味が広がった。

 

「。。。む!ンゴンゴ。。。!」

 

驚きながらもアッシュは吐き出さずに飲み込んだ。甘い味でなくて良かったと思いながら。

 

「何その顔!あははは!」

 

悪気など全く感じておらず、悪ガキのように揶揄う英二の口に逆襲とばかりにチップスを押し込んだ。

 

「むご!もごもご。。。ん、グッ!」

 

「お前こそ何だよそのマヌケ面は!」

 

「なにすんだよ!」

 

「おい、ポップコーンを投げるな!」

 

「鬼は外!おにはーそと!」

 

日本語で呪文のような言葉を繰り返しながらポップコーンを投げるという謎の行動をする英二にアッシュは首を傾げた。

 

「What?」

 

「あーもう!投げたって片付けるのは僕じゃないか!やめやめ!。。。。ほら、アッシュ。仲直りしようぜ。はいアーン!」

 

「。。。。。」

 

(喧嘩なんてしてたっけ?)

 

よくわからないが、面倒なのでアッシュは素直に口を開けた。ポップコーンを食べながら「ほら、お前も」とチップスを口元に近づけた。

 

 

「わーい」

 

嬉しそうに英二は口を大きく開いた。その間抜けな顔にアッシュは思わずプッと笑ってしまった。

 

お互いにものを食べさせ合うという一見恋人同士のような行為でも、相手が英二だとまるで雛鳥に餌を与える親鳥にでもなった気分だった。

 

 

「モシャモシャ。。。ティップスも。。おいひいね」

 

大きなチップスを口に入れた英二は咀嚼したまま喋るもアッシュには聞き取れなかった。

 

「口にものを入れたまま喋るなよ。何言ってるかわからねぇ」

 

「あいあい。僕の弟は礼儀作法に厳しいなぁ」

 

 

二人は缶ビールを開けて乾杯した。

 

 

 

 

***

 

 

 

DVD鑑賞の後半、アッシュは自分の肩に英二の頭がコツンコツンと当たるのに気がついた。視線を下ろすと、いつの間にか彼はうたた寝をしていた。

 

そっと肩を持ち、英二をソファに寝かせアッシュは寝室から毛布を運んできた。

 

DVDを片付けた後、サイドテーブルに英二が借りた絵本が置いてあることに気がついた。何となく手に取り、ぱらぱらとページをめくって読み始めた。

 

 

100万回も輪廻転成を繰り返した猫についてもう少し知りたくなったのだ。伴侶となる雌猫に100万回生きたことを自慢するも全く相手にされない様子に思わず笑ってしまった。

 

「唯一自慢できる体験を否定されちまったか、こいつ。。。」

 

 

だが、その猫が自慢をやめて「そばにいてほしい」と雌猫に伝え、彼女もそれを自然と受け止めたことを知った時、アッシュは思わず心が揺さぶられそうになった。

 

そして穏やかに寝息をたてる英二を見つめた。

 

 

自分がこの猫と同じだとは思わないが、猫が求める自由や幸せは同じではないだろうか。本当の自分をさらけ出せる相手と出会い、死んだ伴侶を思って100万回も泣いた猫は哀しいが、幸せだっただろうと。ずっと抑圧されてきた彼は本当の愛を知ることができた。もう二度と生き返らなかったのは、彼の魂が満足したからではないだろうか。

 

 

(俺はこの猫みたいな人生を歩めるのだろうか)

 

英二と自分は伴侶ではないが、二人の繋がりは何にも代えがたいほど深く、これ以上の存在はないと思っている。自分たちの今後はわからないが、もし自分が英二を失えばこの猫のように100万回泣いたことだろう。その後のことは考えたくもなかった。

 

 

「アッシュ。。。」

 

突然背後から苦しそうな英二の声が聞こえてビクリと振り返った。

 

「英二?」

 

心配そうに覗き込むと、彼はまだ目を閉じたまま口をもごもご動かしている。

 

「むにゃむにゃ。。。もう食べられない。。。」

 

よだれを垂らす英二に思わず苦笑した。

 

「オニイチャン、勘弁してよ。。。でもそのままでいいから。。。」

 

 

床に落ちた毛布をかけて、アッシュは英二の寝顔をしばらく眺めていた。

 

 

*終*

 

 

 

(あとがき)

お読みいただきありがとうございます爆笑 100万回生きた猫 という絵本ですが、特徴のあるあの猫のイラストやタイトルは知っていましたが先日はじめて内容を読み、色々と考えさせられました。

よければ小説へのご感想、リクエスト等お聞かせくださいね。

 

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