らぶばなです 。BANANAFISH二次小説 スキップとアッシュの出会い「小さな相棒の憧れと願い」のラストです。お付き合いいただければ幸いです。
〜スキップとアッシュの出会い〜「小さな相棒の憧れと願い」3
一ヶ月後、おれはある日本人カメラマンとその助手をリンクスの溜まり場へと案内した。チャーリーに頼まれて受けたストリートキッズの取材で、アッシュははじめ反対したが、時に警察に恩を売って自分たちの有利に事を進めることも大事だと かつておれに話してくれたこともあり、最終的にはしぶしぶ受け入れてくれた。
おれの前に現れた日本人のおっさんと、小学生ぐらいの子供。。。と思ったが、なんとボスよりも年上だという。おれとあまり変わらないと思ったからこれまた驚いた。
助手である”エーチャン”こと奥村英二がおれたちのボスに銃を触らせてくれと頼んだ時、おれは心底驚いたしメンバーたちにも緊張が走った。だが当の本人は気にしていないのか気づいていないのか、怖がることも驚くこともなく 大きくてキラキラ綺麗な瞳をボスに向けている。
(大丈夫か。。。? ボスはどうするんだろう。。。?)
この間の酔っ払いの件もあり、ひょっとして彼がボスに銃で撃たれるかもしれないと焦った。おれはこの兄ちゃんが傷つくのはなんとなく見たくないなとも思った。
「いいよ」
意外とあっさりボスは銃をエーチャンに渡した。この奇跡的な瞬間を目撃した時、おれはエーチャンをリスペクトした。
「すげぇ、エーチャン!クールだぜ!あんなガキみたいな顔しているくせに!」
(この日本人の兄ちゃんもきっとボスと同じだ。。。 ”見た目”とは違って内面は ドきつい タイプだ。。。)
このエーチャンとかいう兄ちゃんは温和で優しそうで、どうみても子供なのに、あのボスにごく自然に話かけたり、子供扱いされてボスに文句言ったり、挙げ句の果てに銃を貸してというだなんて。
(最高にヒヤヒヤしたぜ。。。命知らずというか度胸あるな。。。初対面でボスにそんな態度とる奴なんて見たことなかったよ。。。)
おれにはわかるが、ボスはちょっと驚いていた。ボスにとりいろうとする奴とエーチャンは全然違う。。。でもあれはきっと気に入ったんだろうな。
おれもエーチャンが気に入ったぜ。エーチャンの指に乾杯してやろう。
「一杯おごるぜ」
不思議だが、エーチャンと話しているとスッゲー落ち着く。おれはただボスの自慢話してるだけなんだけど、エーチャンは自分のことのように楽しそうに聞いてくれる。
(なぜかもっと話を聞いてほしいって思っちゃうな。。。。この取材が終わってもまた遊びに来てくれないかな。。。。)
おれはボスの相棒として精一杯頑張って支えるつもりだけど、まだまだガキだし正直言って力もねぇ。もしおれがショーター・ウォンみたいに実力があればって焦っていた。
もちろんおれがこの世界で生き抜くために強くなりたいんだけど、おれはボスが大好きなんだ。もう少しボスが楽できたらなって。。。何もかも嫌なことを忘れて、普通の兄ちゃんみたいにリラックスして笑って過ごせる時間があってもいいんじゃないかってずっと思っていた。。。
(仲間と一緒にいる時、ボスは”ボス”のままだ。もっと普通の奴がボスの友達になれば本当のボスが見れるかもしれない。。。)
おれはエーチャンをちらりと見た。飲んだ酒に酔ったのか、かなり眠そうになっている。その表情が小動物みたいにみえて可愛らしい。おれは思わずプッと笑ってしまった。
(このエーチャンはかなり変わってるな。見た目によらず根性すわっていてボスを怖がらない珍しいカタギだから、ボスとうまくいくんじゃねぇか?しかもボスも気に入ったみたいだし。。。)
「ここはおれの出番だぜ、あの二人をもっと仲良くさせてやりてぇ 」
早口で言ったおれの言葉がエーチャンには聞き取れなかったようだ。人懐っこい笑顔で聞いてきた。
「んー?なんて言ったの?」
「なんでもねぇよ、もう一杯どうだい? おごるぜ」
おれは微笑んだ。
***
その後、おれは取材が終わったらあらためてエーチャンをボスのところへ連れて行くつもりだったのにオーサーのクソ野郎が店を襲撃したせいで、おれはボスと離れ離れになってしまった。
しかもエーチャンが狙われそうになったが、おれはコング直伝の酒瓶攻撃で敵をやっつけた。エーチャンを守らなければと使命感に燃えたおれは、抜け道を通って地上に出た。だがそこにはオーサーの仲間が待ち受けていた。
「チッ」
その時気づいた。こいつらの狙いはおれだったと。
エーチャンと一緒に車に乗せられた。おれがエーチャンを守ったところを見られたらしい。車が出発してすぐに後部座席に座っていたオーサーの仲間が撃たれた。おれにはそれがボスだとすぐに分かったが、事態を把握していないエーチャンはかわいそうなほど真っ青になって震えていた。
おれたちは高い壁で囲まれた場所に拉致された。だが、ボスが俺たちを追って来てくれた。
オーサーがどれほど汚い奴か嫌ほど仲間から聞いていたから、嫌な予感がした。あいつはあろうことかマーヴィンとグルになり、エーチャンに銃を向けた。オーサーがエーチャンを撃とうとした際、ボスが銃を捨てた。
「。。。」
おれはオーサーたちのやり方が汚すぎて、何もできなくて悔しくて唇を噛み締めた。でもボスらしいと思った。
ほんの少し前に知り合ったばかりだが、自分の銃を持たせたほど気に入ったエーチャンを見捨てるはずがないと。
その潔さと懐の深さに改めて尊敬してしまった。
その後、ボロボロに痛めつけられたボスが俺たちの前に現れたとき、エーチャンは真っ先に自分の服を破いてボスの傷を止血した。命を救われたエーチャンが申し訳なさそうに真剣な表情でボスに礼を言う。
「。。。」
ボスは何も言わなかったが、エーチャンの気持ちは伝わっていたと思う。気遣うようにこのままだともっとひどい目にあうだろうと言う。
しばらくして姿を現したマーヴィンとオーサーに対して、ボスはマーヴィンの下心をうまく利用して、ボスは隙を奴を見て攻撃し、俺たちは小屋から逃げ出した。だがすぐにマーヴィンとオーサーの仲間たちが追ってきた。捕まれば今度こそ命はないと思った。
逃げ場を失った俺たちはなすすべもなく立ちすくんでいたが それまで大人しくしていたエーチャンが突然錆びた水道管を引きちぎった。最後まで戦う気なのだと思い、おれもやる気をみせようとしたが、なんとこの棒を使って高くそびえる壁を飛び越えて助けを呼ぶと言いだした。
これにはボスもおれも驚いたし反対した。自分は日本では棒高跳びの選手だったとエーチャンは言うが、俺たちは正直不可能だと思っていた。
だが、エーチャンは「どうせ死ぬならなんでもやる」と力強く前を見つめ、壁に向かって走っていった。
水道管がしなる。折れるんじゃないかって怖かったが、なんとか持ちこたえてエーチャンの体がふわりと浮かび、本当に鳥みたいに壁を越えていった。
「わぁっ!!」
おれは歓声をあげていた。ボスも完全に魅入っていて、しばらくのあいだ俺たちは自分たちが追われていることも忘れてエーチャンを見ていた。
(すげぇジャンプだった!)
そう思った途端、おれたちは追ってに囲まれていた。エーチャンがいなくなったことに気づいた奴らが焦りだし、オーサーとマーヴィンがもめだした。
「壁を飛んで超えたぜ」とボスは正直に言ったが、あいつらは信じていなかった。
その後、リンクスやショーターの仲間が加勢してくれたが、マーヴィンが俺たちの前に立ちはだかった。
自分の失態による失敗、ボスへの怒りとマフィアのボスに言い訳できない状況を作った焦りで目が完全にすわっていた。
あいつはボスに銃口を向けた。絶対絶命だと思った。
「ボスっ!」
体が自然に動いていた。マーヴィンの撃った銃弾がボスをかばったおれの体を通過した。
「スキップ!!!」
「あ。。。」
涙がでたが言葉は全く出なかった。消えゆく意識のなか、おれは心の中でボスに話しかけた。
(。。。ボス、おれはずっとあんたみたいに強くなりたいって思ってた。でもボスもやっぱり普通の人間だって思った。だからこそあんたを守りたいって思ってたんだ。泣かないでくれよ。アッシュ。。。あんたに会えてよかった。できればエーチャンには本当のあんたを。。。)
”エーチャン、おれからの最後のお願いだ。どうかボスを守ってほしい。。。”
***
ー1年後ー
英二はアッシュの調べ物に付き合い、図書館に来ていた。彼から探してきてほしいと渡された本のリストを元に何冊もの厚みのある本を持ち運んでいた。
「重い。。。」
何冊も重ねていたので視界が悪かった。英二はアッシュの元へと向かう。
「ー アッ」
英二は自分よりも背の小さなこどもとぶつかってしまった。持っていた本が床に散らばった。真っ先にぶつかってしまった子供に駆け寄ってしゃがみこんで聞いた。
「君、大丈夫?ごめんね、怪我しなかったかな?」
「あぁ、問題ないよ」
英二がぶつかったのは黒人のこどもだった。大きな瞳に厚みのある唇の少年は、散らばった本の中に英二が売店で買ってきたマンガ本が混じっていることに気がついた。
「それ、少年サンデーの最新版?」
少年のキラキラと瞳が輝いた。
「うん、好きなの?」
「おれの一番好きなマンガだよ。ねぇ、おもしろかった?」
「うん、読むかい?僕はもう読んだから、よければあげるよ」
英二の申し出に少年は嬉しそうにマンガ本を手に取った。
「Thanks! Bye! 」
よほど嬉しかったのか、そのこどもはここが図書館であることも忘れて元気よく手を振りながら走りさっていった。
「。。。。。」
先ほどの黒人の子供を見て、懐かしい笑顔を思い出しながら、英二は散らばった本を集める。いつの間にかアッシュもそばに来ていて、一緒に手伝ってくれた。
「ありがとう、アッシュ」
「あぁ」
アッシュも黒人の子供を目で追っていた。英二はアッシュも同じことを思ったにちがいないと思った。
「ねぇ、アッシュ。。。あの子。。。年齢も背格好も。。。似ていたね」
「そうだな。。。」
”スキップ”と名前は出さなかったが、お互い同じ思いを感じていることはわかっていた。
「。。。僕たち、長生きしよう」
「ー? なんだよ、急に?」
「”彼”の分も。。。いや、”他のみんな”の分も、精一杯生きるんだ。絶対に忘れない。。。」
「。。。。」
かつて自分たちと共に過ごした大事な人たちの姿が頭をよぎる。懐かしい想いと痛みが同時にやってきた。
この想いをどうしてよいかわからず、アッシュは空を見上げた。
気まずい空気を破るように、英二がわざと明るい声でとんでも無いことを言い出した。
「ーだから、長寿のために僕たちは毎日納豆を食べよう!」
「。。。待て、それとこれは話が別だ」
英二のペースに乗せられて一瞬頷きそうになったアッシュだが、ここは冷静に断った。
「別なものか!世界一長寿の国に住んでいる僕が言うんだ。納豆は体に良い! 僕は毎食納豆を食べても良いと思っているくらいなんだからね。君はヘルシーフードが好きだろう?だったら食べるべきだね!」
なぜか自信満々な表情で英二は笑い、アッシュをからかいだした。
「毎食だって?おまえは俺を早死にさせるつもりか?」
心底嫌そうな顔でアッシュは英二を睨みつけた。
「だから逆だって!長寿のため!」
「俺はストレスでどうにかなっちまう」
アッシュはため息をついたが、先ほどまでの胸を締め付けるような思いは自然と消えていた。
「ふふっ、納豆以外にもヘルシーな日本料理はまだまだあるからね!覚悟しておけよ」
まだまだ奥の手があるとでもいいたそうな、含み笑いを英二はする。
「時々お前が鬼に見えるんだが。。。鬼のマスクをかぶっているんじゃねぇの?たしか。。。ハンニャ?」
「また日本の雑学を覚えてきたな。とにかく、君の健康は僕が保証するよ。僕は君のスーパーサポーターだ。ほら、スーパーへ行くよ。納豆が安くなっているかもしれないからね。早く早く!」
「売り切れていることを願うよ」
嫌味をいいながらもアッシュは微笑んでゆっくり歩きだした。
「ほらーアッシュ、走って!」
(スキップ、君はアッシュのことが大好きだったね。。。僕は君の分も彼を守るから。。。天国で見守っていてほしい)
英二はアッシュの手をとり、走り出した。彼の相棒の顔を思い浮かべながら。
*終*
しんみりさせてしまって申し訳ございません
最終回までおつきあいいただければ幸いです。次回はリアルタイムで見てそのままブログ書こうかなと考えています。どんな結果になっても長い語りになると思うので。。。
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