もしもアッシュが日本に来たなら(第二十一話:一方通行) | BANANAFISH DREAM

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もしバナナフィッシュがハッピーエンドで終わるなら~365日あなたを幸せにする小説■BANANAFISH DREAM


 英二の部屋で二人は何気ない話をしていた。その時、アッシュが英二に聞いてきた。


「なぁ、英二……英莉は本当にボーイフレンドはいないのか?」


「え? なんだよ突然? たぶん、いないはずだよ」


 直接聞いたわけではないが、英莉のふだんの行動を見ている限り ボーイフレンドがいるとは思えなかった。


「可愛いからモテるんじゃねぇの?」


「どうなんだろう? よく分からないよ」


「そう言えばお前、英莉のことをブスだって言っていたよな」


 英二はかつて二人で故郷の話をした時にそんな事を離した事を思い出した。


「そういえば……」


「英莉が知ったら怒るぞ」


「ははは……頼むから、英莉には黙っていてくれよ」


 苦笑しながら英二はラジオをつけた。



「次のリクエストは出雲市の高校生からいただきました。元気いっぱいなユンナの『ほうき星』です。可愛らしいですよ。弾けるように明るい彼女の曲をどうぞ楽しんでください…」


もしあたしがほうき星になれたならば
空かけぬけ跳んでいく
どんな明日がきてもこの想いは強い
だからほうき星ずっと壊れないよ


music >> ほうき星『ユンナ』

 



 明るいテンポの曲を聞き、カラオケが好きな英莉が歌うと似合うだろうなと英二は思った。


「あいつ、どうしてボーイフレンドを作らないんだろう? ひょっとして片想いしているやつがいるのかな……そもそも恋愛に興味あるのかなぁ??」


 英二は首を傾げた。



 英莉は小柄で目がぱっちりしていてとても可愛い。もちろん男子生徒からの人気は高く非常にモテていた。シャイな英莉は男友達を作ろうとはしなかった。



 クラスメイトや部活の男子部員たちは何とか彼女の携帯番号やアドレスを手に入れようと必死だったが、英莉のガードは固かった。諦めきれない男の子たちは自宅に電話をかけてきたが、彼女は誰も相手にしなかった……というよりも、男子達の気持ちに気づかず、男の子たちは振られたと思いこみ、諦めていくのだった。


 

 恋愛に関して英莉は非常に鈍感だった。



   ***





 その日も自宅に男子生徒から英莉宛に電話がかかってきた。



「はい、奥村です。えぇ、いますよ。……英莉、電話だぞ――」



 英二が英莉を呼んだ。



「はい……タクミ先輩、どうしたのですか?」



 タクミは英莉のクラブの先輩で、資産家の息子だ。英莉に好意を抱いていて何かと世話を焼いているが、鈍い英莉には全くその気持ちは伝わっていない。




『英莉ちゃん、授業のことで困っていないかなと思って…』



「困る? あぁ、そうだった。タクミ先輩から参考書を借りていたんだ……」



『もうすぐテストだろ? 分からないところがあったら教えてあげるよ。 明日一緒に帰ろうよ』



「え……一緒に?」



『帰りに一緒に勉強しようぜ。英莉ちゃん、数学苦手だろう? 俺、こう見えても数学が得意だからさ。出雲で一番オシャレなカフェを見つけたから、連れて行ってあげるよ!』


 ペラペラと調子よくタクミは話し続けた。

「先輩……」



『遠慮するなって! 俺、英莉ちゃんの役に立ちたいからさ!』



(よし、英莉ちゃんはきっと感動しているはずだ!)


「ありがたいんですけど……身近にすっごく頭のいい人がいるんです。何でも知っていて……本当に尊敬しちゃうぐらい天才的な人なんですよ」



『え……!』


 衝撃的な英莉の言葉にタクミは言葉を失った。


『だ、誰? 英莉ちゃんのお兄さんのことだよね?』



 自分に言い聞かせるようにタクミは言った。



「まさかぁ!うちの兄は体育会系ですから……あ!」



 英莉の驚いた声にタクミは反応した。



「どうしたの?」



 英莉の目の前をアッシュが通り過ぎたのだが、風呂上がりで熱いのか上半身裸のまま英二の部屋に入っていった。



「ちょっとアッシュ! Tシャツぐらい着てよ!やだ――」



『え? 英莉ちゃん…? アッシュって誰? その人、服を着ていないの?』



「そうなんです。裸でウロウロするから驚いちゃった……アッシュとは一緒に暮らしています。お兄ちゃんとすっごく仲良しなの。彼、俳優みたいにすっごくカッコいいんですけど、時々子供っぽいところがあって困るんですよね」



(か、家族公認……しかものろけられた……)


 タクミは目の前が真っ暗になった。純粋そうな英莉が男を自宅に連れ込んでいると勘違いしてしまい、ショックのあまり眩暈を感じた。



「タクミ先輩?」



『英莉ちゃん、お幸せに……さようなら』



「はい? はぁい、さようなら」




 英莉は全く先輩の気持ちに気づかないままタクミは電話を切った。リビングには英二がいたが、英莉は気にもとめず話していたので話が筒抜けだった。




「そのタクミって言う先輩、今ごろ泣いているんだろうな…」



「お兄ちゃん、どうして先輩が泣くの?」



「英莉って鈍いよなぁ」



「なによ、それ!」



 二人のやりとりを聞いていたアッシュがフフッと笑った。



(鈍い英二に『鈍い』って指摘されるだなんて、よっぽどだな…)


 アッシュは一人ほくそ笑んでいた。



<続>


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昨日はアッシュのお誕生日をお祝いしてくださり、ありがとうございました。たくさんの拍手と応援のお言葉、本当に嬉しかったです。長編小説も半分を越え、また新たな展開になっていきそうです。どうぞこちらも引き続き応援していただけたら嬉しいです。