洗い上がった衣類の匂い
話題にした彼…
俺のすぐ近くで
洋服を着てる
その動きによって
香ってくる
彼の香り
今は
備え付けのボディーソープの匂い
で
さっきまで居た
浴室内の記憶
頭の中 過ぎるの
漠然と 記憶の底に
落しこみつつ
ふと
俺と一緒なんだよなぁ…
とか
軽く浮かれる
も
…風呂入った連中
全員そうじゃん
と すぐに 冷静になって
香りについて
あれこれ考えるのを
止めつつ
つい
「…俺は いつもの
あなたの匂い 好きでだなぁ」
そう言うの
誰も聞いてないの
分かっていつつ
つい
今思った事
口に出しちゃって
…何言ってんだ おれ…
と 思った頃には
時すでに遅く
はぁ?って表情が
俺を見て居るんだろうなぁ
と 想定しつつ
ズボン 穿き終え 彼の方を
チラッと見れば
俺より後に
服を着始めたはずの彼
もう
いつでも出られる状態にまで
身形は完成してて
あ?え?
と いつの間に 越されたのか
知る由もないままに
置いてけぼり
くらっては事だと
トレイの上の衣類
身に着けるまでもなく
手に取って
「…ロッカー…貴重品を
俺が預かってるんで…」
衣類のポケットに
入れっぱだった
彼の私物
俺の貴重品と 一緒に保管してる事
だから 俺を置いてかないで
…って訳じゃないけど
俺がいないと 入手できないよって
人質…ならぬ 物質って事で
上着の襟
直してる彼が
動き出す前に…と
ロッカーの方へ
移動開始すれば
「…ちゃんと着ろよ
何 あわててんの?」
俺の方が
急かしてるって ニュアンスで
「…そんなに早く 帰りたいかねぇ」
せかせかした
余韻の無さ
無粋だと
彼がアピールしてくる
けど
そもそも
俺とのやり取り
時々端折る 彼の態度が
俺を不安にするわけで
「…いや 服着るの早いっすねぇ」
そもそも
急かされ気分は
俺の方だと
今更な感想 呟けば
「…そもそも 重大な
目的あっての遠出じゃないけども」
俺の背後で
トーンダウンした声が
…楽しみたいじゃん…折角なんだし
と 呟くと
「…お前 切り替えが早いよなぁ」
まるで
俺がドライだと言わんばかりに
対応の印象を 語った
つづく