ホスピタル #4・空白 》片手分の空白 | ラテックスは妄想中

ラテックスは妄想中

暴走ギミな妄想をチラカスBananaです。
甘味世界を目指し オリジナル小説書いてます。
腐 要素 多くなってきちゃいました。苦手な方ご注意ください。


…随分放置していたお話

お久し振りに着手します






━─━ 空白 ━─━




マナーモードのバイブ音に

着信を知る


電車を待つ間


何度目かの 知らせ



時間的に人の少ない駅ホーム


設置されたベンチに座り

携帯を取る


画面には


履歴に残されていた

知らない番号



繰り返し 

繋がらない事が当たり前な感覚で


定期的に鳴らしては

切れる…繰り返し


記録されていく番号



周りに人がいない今


雨の水音を聞きながら



何度目かで


着信を知らせるバイブ音を

受信することで 止めた




 『 …あ… 』


耳に 相手の驚く声が聞こえた




━─━─━─━─━─




『 自分の知っている人たちに

  相手を当てはめて


 人をカテゴライズするのは


  危険な行為よ 』



沢山の子供を前に


見分ける手段で僕が提案した考えに


そう反論した ケイコさん



初めての日本で

英語教師の仕事が決まる前


発音チェックの審査をしたのが

派遣関連の手伝いをしていた彼女



『 貴方は教師に向いていない 』



語学テストはクリアするものの

教育論で 待ったをかけられた


『 …でも まぁ

 子供たちには 良い経験かも


 いろんな大人を知る機会だもの


 …ブライアン 貴方には 

 ちょっと ハードかも…ね 』



彼女の言葉通り


特別講師で派遣された中学で



生徒とのトラブルから

早々に 辞める事になった




『 子供だからって

 甘く見てると 相手には伝わるの


 貴方の子供の頃 居なかった?

 信用できない大人 』


そう言った時の

彼女の瞳が 忘れられない




向き不向きがある様に

これは 仕方が無い事


…僕の性格 性分なのだ


相手が子供だと

優位に立とうと 威嚇してしまう


自分が上だと



教師の頃から


未だに

無意識に 出る行動





そんな僕に


ショウは


学生時代 

追いかけていた女の子の様な

反応をみせたり


ちょっかい出すと

じゃれつく子犬の様だったから


悪戯に意地悪なスイッチを刺激され


…引くに引けない行為に及んだ




これは言い訳できない




彼…いや 彼女と言うべきか

ショウの 


体の秘密を知る事により


どのカテゴリーにも属さない

特別な存在であった事で


僕は初めて


ショウを 一人の人として

意識したのは 事実




…ケイコさんが言わんとしたことは

こういう点なのかもしれない…



人と向き合う…と言う事





今朝



弁明も取り繕う機会も

与えてくれないまま


姿を消した ショウ



…逃げられている事には

気付いている


だからこそ




僕は 伝えようとしている



ただ一言






『 …ショウ… 会いたい 』




…やっと繋がった


そう思う安堵感は 微塵も無く


ショウの 反応が


返答が


只々 怖く


次の言葉が出ぬまま

沈黙が 続いた




ショウの後ろでアナウンスが聞こえ

馴染みのない 音楽に

耳を澄ます


『 …駅に居るの? 迎えに行こうか? 』




小さい


ひどく小さい呼吸音が聞こえ





『 …家で 待ってて 今から帰る 』


そう言って 通話は切れた













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