絵画展見学だけならば、世界自然遺産センターの入場券は実は不要でした。入口のテーブルにプログラムが数冊、ポスターも少しあり、スタッフさん不在でありがたくいただいてきました。
 


 
シニャンさんの絵は入口のはす向かいの一番奥まったところの角地。
 

 
ついにホンモノの「Bluestone」とご対面!
 
 
ネットで見た画像は、光の加減でしょうか、別々の絵と思えるくらい暗い色調、明るい色調とさまざまでした。ホンモノはどちらかというと青よりも黄土色が目立つ明るい色調、全体の微妙な色の取り合わせがとても素敵です。
 
 
そして何よりも驚いたのは、滝の白い部分が際立っていて、さらに下の部分だけ白い絵の具をペインティングナイフで立体的に盛って、あたかも水しぶきがバンバン立っているように見せている点。これは落差のみならず相当水量があるのかな?
 
実は水量の点でちょっと違うかな?と疑念があったものの、展示会の趣旨が済州島にちなんだものとのことで、中文リゾートにある「天帝淵瀑布」を描いたものだと個人的にはすっかり思い込んでいました。

 ↓天帝淵瀑布
 
センターのスタッフの方に、「これは天帝淵瀑布でしょうか?」と聞いたところ違うとおっしゃいます。やっぱり・・・違う?済州島は滝が有名なので、「滝つながり」ということで、シニャンさんは別の滝の作品を出品されていた?
 
近くで、遠くから、角度も変えてゆっくり滝の絵を堪能します。絵のタイトルは「Bluestone」、なのにやはり黄土色が目立ちます。あれっ?もしかしてそういう事だったりする?いきなり閃きました。
 
シニャンさんは2014年の夏、3週間シアトルをご友人と旅行された折に、イエローストーン国立公園に足を延ばされています。(シアトルから車で13時間かかりますが)
 
↓画像出展:パク・シニャンFUN奨学会スタッフブログ
 
↓シニャンさんの絵をもう一度 
 
ワイオミング州政府観光局の「イエローストーン国立公園」紹介サイトによると、イエローストーン湖から流れ出たLower Falls(ロウワー滝)とその下流のイエローストーン川に沿った「イエローストーン渓谷」。展望台の1つ、サウスリムのアーティストポイントからの景色。これで間違いないとほぼ確信!
 
【参考】ワイオミング州政府観光局サイトはこちらから

「私の部屋の案内書」でも、会ったことのないフランチェスカさんの肖像画を描くシニャンさんは、手に写真?を持ち、それをちらちら見ながら絵を描かれています。私の母も絵を描きますが、実物の写生では時間が限られるため、自分で撮った写真を見ながら描いています。シニャンさんも、ロウワー滝の写真か絵葉書を見ながら描かれた作品が、この「Bluestone」ではないかと思います。絵のタイトルも「Yellowstone」にひっかけ、ご自身のブルーテイストで仕上げられて「Bluestone」とされた?あくまでも個人的な推測ですが、もやもやしたものがパッと晴れた気持ちになりました。
 
帰国した夜、NHKの「ブラタモリ」でちょうど立山を取り上げていました。黒部ダムから室堂へ抜け、弥陀ヶ原から降りてくる途中にある、日本一の落差350mを誇る四段構成の称名滝(しょうみょうだき)。私も富山出張の折に室堂まで足を延ばして見た事があります。美女平~弥陀ヶ原の立山高原バスの車窓からのチラ見でしたがそれはそれは見事な滝でした。落差と水量のある称名滝にシニャンさんの作品が重なりました。自然の位置エネルギーがまさに解放される滝は、やはりパワースポットと言えるのかもしれないですね。やっぱり私は滝が好き^^
 
さて・・・
 

絵画展に行かれた韓国の方のブログの情報で、滝の絵以外にあと2点、シニャンさんのロバさんの絵が企画室の外のホワイエに出品されていました。シニャンさんの滝の絵に執拗に張り付いていた私に、センターの方もあちらにもありますよ、と声をかけて下さいました。

ロバの絵のタイトルは2枚とも「Untitled」。絵の具をミックスして作り出された(と思われる)独特のやさしい色合いで描かれていました。私は学校では油絵は一度もやったことがないのでよくわかりませんが、水彩画のようにちまちま塗る埋めていく、というよりも、キャンバスに大胆に絵の具を置いたり塗り重ねていく面白さがあるようですね。
 
シニャンさんが最初に書いたモチーフがロバだそうです。原点ということでロバの絵を出品されたのかな?では、なぜロバを描いたのか?韓国雑誌「VOGUE KOREA」 10月号に掲載されているシニャンさんのインタビュー記事「Instinct of Painting(絵画の素質)」によると・・・。
 
「最初はロバを描きました。荷を背負おうために生まれた人生を思い、気の毒で私自身が投影されました。私自身の負担となるものが特別に重かったり大変だったというよりは、世の中の全ての負担を考えるようになりました」
 
大韓民国を代表する国民的俳優として、何の苦労のないように見えるシニャンさんですが、生涯の仕事として俳優を選択されてから、国内外で様々な苦労を経験されていらっしゃいます。ふとロバを見てその姿に自分が当てはまってしまったのですね。描く事によって気持ちが解放されているのかな?
 
「VOGUE KOREA」のインタビュー記事には、シニャンさんと絵との接点や経緯などについて語られています。自力で訳したトピックはこちらから
 
パク・シニャンFUN奨学会にスタッフさんも全文日本語に正確に訳されているのでリンクつけておきます。参考になさって下さい。
 
18時の閉館までに少し時間が残ったので、17:30~の4Dシアターを見ました。済州島の神話を今風に映像化したもの。3Dメガネをかけ、座席が前後左右ガタガタ動いたり風が吹いてきたり。先日韓国映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」を4Dでみましたが、同じような感じでした。観客10人ほど、全く期待していませんでしたが、結構面白かったです。これはオススメ!
 
暮れなずむ済州世界自然遺産センターを後にし、荷物を担いで10分ほどの近くの急行バスのバス停へ。
 
 
車で帰宅するセンターの方がバス停まで乗って下さい、と途中で拾って下さって助かりました。果たしてバスをうまく止められるのか不安に思っていたら、もうひとり市内に帰る男性が来られて、ほぼ真っ暗な中、スマホのトーチ(ライト)でバスを止めて下さいました。なるほど、スマホの新たな使い方発見!ひとりではたぶんバスはそのまま通過していたことでしょう。
 
 
バスは飛ばしに飛ばして済州バスターミナルまでは40分弱。T-money(日本のSuicaのような交通カード)で支払ったので確かではないですが3000Wくらい?バスターミナル内のほかほか湯気の立つおでんにひかれつつ、市内バスに乗り換えてホテルへ。このバスは優先席のヘッドレストカバーが吹っ飛ぶほど急発進、急ハンドル、急停止を繰り返し、生きた心地がしなかったです。カバーは女子学生が何事もなかったように拾って戻してましたが、よくあること?
 
この8月から格段に便利になった(と言われる)公共バス、確かに路線はわかりやすくなり、市内バスのバス停には、次にどのバスが来るかの電光掲示板もありました。事前に自分の乗る系統さえ把握しておけばかなり使えると思います。しかし、韓国のバスの運転手の技量は相変わらず荒いです。

公共バス乗り継ぎでチープに移動する当初の予定は見直した方がいいかな?天帝淵瀑布に行く意味がなくなったのでやめる?済州島の秋の風物詩のススキはどこで見る?ホテル近くのお店で、ひとり寂しくホテルのフロントのおじさんオススメの「煮干しククス(Dried Anchovy Noodle)」を食べながら、日本で立てた明日のスケジュールを一旦白紙に戻しました。




Anchovyはカタクチイワシだから、それが乾燥していて・・・そうだ煮干し。済州島は周囲が海なので海産物が名物。日本で言うところの煮干しベースの塩ラーメン風でした。冷麺のようにハサミでチョキチョキ切っていただくのが韓国風です。「サムククス」という地元の名店とのこと、これまた名物の豚肉が乗った豚骨ラーメンな「コギククス」にもひかれましたが、今回はあっさり系をチョイス。

③へつづく(予定)