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車いじり、音楽、ぶらり旅の記録

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いつも笑顔の貴女へ。

初版2020年12月23日

Prologue

彼女たちはきっととても賢いので、あなたの「こんなところが好きです」「こんなところがぐっときます」という言葉、或いは、「好きです」というあなたの表情や仕草、あなたの服、あなたの色、そんな小さなヒントから自分の色を見つけてくれるでしょう。それには長い時間がかかるかもしれませんが。

僕らが好き勝手に評論家を気取って貴女の音楽を語ることを貴女はどうお思いでしょうか。違うんだよな~分かってないね~って鼻で笑っていただけていれば幸いです。

今日ここに3rdアルバム「Rhythmic Flavor」が発売されたことを祝し、私は今日も自分の「好き」を分解して、並べて、大きさを比べて、選別する作業をここで行います。あなたの笑顔とあなたの音楽から一つでも多く何かを得ようと今日も藻掻いています。色か、かたちか、においか、手触りかはわかりませんが、それは私の「好き」がいつか、あなたの中のどこかで結ぶであろう果実の色素の一つになることに思いを馳せて駄文をしたためることとします。

儀式

するする。ぎゅっ。かぱっ。

ぼくの一番大好きな瞬間が、買ってきたCDのシュリンクをあけて中身を空気に晒す瞬間です。工場で機械的に生産された製品がもつ無機質さが、その中に収録された作品を際立たせるようです。

CDのレーベルプリントは点々、点々…これはぶどうのモチーフ?
ケースを裏返してBD面に目を向けると、そこには色とりどりのぶどう(実写)が。

みっくすみっくPRカード「みっく×読書」帽子みっくは憲法違反なくらい可愛い。伊藤美来憲法第39条の可愛すぎ禁止に抵触します。

さて、ブックレット写真はジャケ写と比べて修正が少なめに見えますが、今のみっく、「色づきはじめた」みずみずしい「果実のよう」なみっく。誤解を恐れず言えば、生々しさもある。ざらざら、さらさら、衣装の肌触りを想像できる。Rhytmic Flavor、ブックレットが分厚い!

分身しているジャケットのみっく。このつづきはBEAM YOUの感想で。

もうなんなんだ。このアルバムは。

伊藤美来の世界に一生浸かっていたい。この柔らかくて暖かくて心地の良い世界から一歩も動きたくない。この焦点の定まらない七色Flavorの世界でもっと伊藤美来の歌声と幸せになりたい・・・。

アルバム1枚でこんな気持ちになるの・・・?

BEAM YOU

時空が嫉妬する。

ジャケットが提示するワンシーンが今ここで交差していきます。レコードのスクラッチノイズ、エフェクトの効いたボーカルやリズム、引き伸ばされた声が元の姿を取り戻す様子が未来を。伊藤美来の声という最大の武器を惜しげもなく改変し、刻み、引き伸ばして、描くのは過去現在未来のすべての伊藤美来が時間軸”今”に集い、それぞれに預言をしていくような目眩を感じるような楽曲です。

さらにアルバムのジャケットが示唆する可能性は、リード曲BEAM YOUのボコーダー…ワウやコーラスの効いた電子音が描く、10フレーム/秒で揺れながら動く人の波、柔らかな日差しと摩天楼のようにそびえ立つ人工のビル群の中、1stアルバム、2ndアルバム、こんにちまでの何人何十人という、幾千もの伊藤美来の”像”が今ここに結ぼうとしている…それはもう宇宙創生の瞬間と言っても過言ではないのです。

そしてその音の姿に惑わされていると、言葉の衝撃にやられてしまいます。

あなたがその目で触れるべきはBEAM YOUの歌詞。そしてその耳でなぞるべきはその音。多くを語ることはやめましょう。

催眠術

なんだろう。今の気持ち、なんというか、こんなたとえは正しくないかもしれないけど、SSSSグリッドマンの最終話をみたあとのような、FF8のDISK4(時間圧縮によりアルティミシア城へ落ちていくスコールたち)のムービーを見たときの気持ちです。

BEAM YOUの魔法、もっと私を好きになっていいんだよっていう暗示。過去現在未来のすべての伊藤美来が時間軸”今”で重なる類まれなる現象が、なぜ起こったのか。それはBEAM YOUによって世の理が伊藤美来中心にすげ替えられたことに僕が気づいていないからでした。

なぜならhello new pinkでは所謂”24才等身大の伊藤美来”という像がまた一つ結ばれるからなのです。これは限りなくリアルな虚像、まさかと思いましたが、hello new pinkのアウトロがスローダウン、Woo…という声を合図に我々リスナーは45分間の間、伊藤美来の描く幸せという世界に閉じ込められることになりました。

英雄譚

ガーベラから孤高の光までのセクションは4部構成の英雄譚です。彼女は大好きなヒーロー(ヒロイン)となり挫折、苦悩、旅立ち、闘いを経験し、大団円のエンディングを迎えます。

構成としては「起」。ガーベラはこのあとに控えるPlundererに向けて苦悩というテーマを提示します。前へ この手 伸ばすことが もがきながらも生きてく証になるのかな。問題提起、精神的な弱さ、恐怖、主人公にありがちな葛藤をストリングス、ピアノそしてラテンなギターが語りだします。

「承」の役割を担い朝日を連れてくるのはPlunderer、同じくピアノとストリングスです。これまでの伊藤美来像から大きく一歩を踏み出したPlunderer。ガーベラの停滞感にを持ち前の疾走感で振り払い、旅立ちを演出します。

Born Fighterはビーイング調のジャパニーズポップ・ロックテイストでこれまでの伊藤美来楽曲にない「Rough」さと「Tough」さ、迸る純粋な「ENERGY」。まさしく「転」。これから歌い込む中で生まれる変化を感じていきたい。

孤高の光 Lonely darkがちょっと浮いてしまうかな?と、私も実は不安になっていました。杞憂でした。ここは「結」。大活躍、世界を宇宙を救ったヒーローは長い長い眠りにつきます。また再び僕らが危機に、困難に直面するその時まで。

わたしなりのしあわせ

超大作が幕を閉じ、満足気に彼女は自信の作詞曲を口ずさみ始めます。それが「いつかきっと」。エレピ!!あぁ、僕の大好きなエレピ。彼女が本作のキーワードとして掲げた”多幸感”を音にするとこんな音がするんだろう。白昼夢のような優しいラッパ。そよ風のようなベース。鳥のさえずりのようなハイハット。新しい本を買ったんだ。素敵な歌い出しは僕の好みを的確に貫いて、”かえし”のついた鉤針が抜けることはありませんでした。

そしてSweet Bitter Sweet Days、one's heartと伊藤美来の幸せセクションが続きます。ミュージカル調のSBSDはこんな毎日を過ごしたい。楽しいことでいっぱいにしたい。そんな何気ない毎日の幸せを増幅していく万華鏡、カルーセルのような一曲です。

Good Song、このアルバムの伊藤美来作詞の2曲め。彼女の心に一番近いところからこの音は聞こえてくるようです。私は私の呼吸を信じてる。そんな頼もしいことを言うようになったんだね。エンディングへ向けて駆け上がっていくブラス、変調・半音上げの落ちサビは、僕の心を歯磨きチューブのように端っこから押して押して最後まで中身を堪能しようとするかのように、幸せでいっぱいにした僕の胸をさらに幸せで締め上げていきます。

ここまでの流れをもってして「Rhythmic Flavor」は完結をいたします。アルバムを通して紡いできた物語をこれが私の思い描く幸せだよ!と宣言しているのです。

私だけのSongと…

Epilogue 封じ手

vivaceはRhythmicの魔法をより深く醒めない、忘れられないように刻み込む危険な1曲です。vivaceには活発に、という意味がありますが、催眠によって抑えつけた我々の正気を活性化させる、というニュアンスにも取れます。Charaの作詞作曲ということで、もう1ランクオトナに変わりゆく伊藤美来が見え隠れします。「この次の世界はきっと次の、もしかしたらそのつぎのアルバムで。それまではお預けよ。」そんな「封じ手」のような1曲でした。(封じ手ネタに関してはりゅうおうのおしごと!の既刊を読んでいただけると・・・)

おわりに

PopSkipあたりから、曲順に対する熱意のようなものをありありと感じるようになり、今回Rhythmic Flavorは多幸感というテーマに沿ってアルバム制作が為されていたそうです。そのテーマに沿って私なりに読み解いてきました。

かつて私は「PopSkipLifeは一つの区切りとしてアーティスト伊藤美来の第一幕を完璧に描きあげた。」と評しました。音楽の完成度の高さはもちろん、彼女の唯一無二の武器であるその歌声、そして笑顔をシンプルに引き立てた素晴らしいステージでした。

 

完成度の高さを維持したまま、既存の枠…つまり水彩とPopSkipという2作が作り上げたポップス(とまとめて括ってよいかの議論は置いておいて)の世界から飛び出すには、勇気のいる1歩が必要でした。無論そのままの路線を貫く道も残されていましたが、本作で彼女たちは果敢にも伊藤美来の歌声を届けるというシンプルな目標を、色とりどりのアソートのような楽曲群で成し遂げました。

CDを再生し、ディスクの回転が止まる小さな機械音。11曲、45分間の旅を終えて、私は椅子にぐったりと靠れます。なんだかとてつもない大冒険、― Miku's Adventure ― をしてきたかのようでした。

ひとつひとつの楽曲がもちろん素晴らしいのですが、明確なコンセプトのもと集められ、統制され、構成されたこのトラックリストにはもうぐうの音も出ません。きっとこれがPopSkipLifeの時に掲げた、次のステージ、目指すべき新たなアーティスト伊藤美来だというAnswerなんです。

3rdアルバムまであっという間に駆け抜けて、停滞の影すら見せずに第2幕を邁進する伊藤美来。次元すら縦横無尽に駆け巡るこの熱量、この質量がぎゅっと凝縮された稀代の大名盤、それが伊藤美来 - Rhythmic Flavor。

伊藤美来、ずるくない!?