2024年7月1日 月曜日。

 今日から7月です。

 梅雨に入り、しばらくは雨がちな天気が続きそうです。

 6月に読んだ本です。

 

6月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:4541
ナイス数:213

新訂 福翁自伝 (岩波文庫 青 102-2)新訂 福翁自伝 (岩波文庫 青 102-2)感想
11年間積読。福沢諭吉先生の痛快な自伝。有名な「門閥制度は親の敵でござる。」が冒頭から10数頁で出てくるのは流石。家老の悪だくみに乗せられたふりして長崎を出て大阪に行ったり、その大阪で酒を食らいながら適塾で蘭学に励み、幕府も尊皇派も攘夷論だから両方ともいやだと言い、学のある人たちが地位を狙って官位に付く有様を見て在野を貫いた福沢先生の生き様は真に面白い人生だったと思う。残念ながら福沢先生の重んじた独立自尊の精神はいまだ日本には根づいていないようである。
読了日:06月01日 著者:福沢 諭吉


女の一生〈1部〉キクの場合 (新潮文庫)女の一生〈1部〉キクの場合 (新潮文庫)感想
幕末の「信徒再発見」そして日本最後のキリスト教迫害「浦上四番くずれ」の時代を舞台にした小説。潜伏キリシタンの清吉を愛した女性キク。彼女は切支丹、清吉にもらったメダイのマリア様に反発しつつ清吉への愛を貫き、津和野に流された清吉のために身まで売る。そのために病を得て最後は大浦天主堂で死んでゆく。死に際で彼女に語り掛けたマリア様は「沈黙」でロドリゴに踏み絵を踏んで良いと語り掛けたイエス様のよう。彼女を騙しながらも良心の呵責に責められてクリスチャンになった伊藤はまさにキチジローである。まさしく「沈黙」の続編。
読了日:06月03日 著者:遠藤 周作


社会保障論I[基礎編]社会保障論I[基礎編]感想
「教養としての社会保障」の著者が書かれた社会保障論の初心者向けの包括的なテキスト。香取さんのご専門の年金・医療保険に偏っているきらいはあるが、それは日本の国家公務員制度上仕方ない。ジニ係数とはどういうものか、統計はどのように読むべきかにも触れている。日本の医療・年金制度は諸外国にも高く評価されているとのこと。それは間違いないが、危機的な財政赤字、そして軋みが見え始めている医療保険の改革は待ったなし。とは言え、この本は社会保障を考える上では間違いなく必読のテキストである。
読了日:06月06日 著者:香取 照幸


ドキュメント 異次元緩和──10年間の全記録 (岩波新書 新赤版 1997)ドキュメント 異次元緩和──10年間の全記録 (岩波新書 新赤版 1997)感想
第二次安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の下で行われた黒田東彦日本銀行総裁の「異次元緩和」がどのように行われたかを記す。安倍元総理、黒田前総裁、様々な人が異次元緩和に絡んでいたことが良く分かる。10年間の異次元緩和は財政ファイナンスによる大量の国債発行、財政赤字の拡大、低金利による円安の進行をもたらしたにもかかわらず、日本経済の体質は良くならなかった。大きな負の遺産を残し、植田和男総裁に引き継がれることになった。これからの日本経済はどうなるのか。それを考えるためにもこの本は読んでおくべき。
読了日:06月10日 著者:西野 智彦


女の一生〈2部〉サチ子の場合 (新潮文庫)女の一生〈2部〉サチ子の場合 (新潮文庫)感想
主人公サチ子は1部の主人公キクの従妹の孫娘。第二次世界大戦の長崎が舞台。アウシュヴィッツ収容所で身代わりとなって死んた聖マキシミリアノ・コルベ神父様も登場。コルベ神父様の名前は知っていたが、どういう人だったかはこの小説で初めて知った。神父様に命を助けられた人は戦後神父様の事を語り続け、列聖の時は教皇庁に招かれたとの事。サチ子は恋する修平の無事を祈りつつも修平は戦死。そして長崎は…。最後の場面に登場するのは当時遠藤さんが住んでいた町田市だろう。と言う事はサチ子が通っている教会は私が今通っている教会なのかも。
読了日:06月12日 著者:遠藤 周作


中央公論 2024年 07 月号中央公論 2024年 07 月号感想
特集「女性総理」と言う選択。面白いけど、この雑誌いつまで自由民主党「だけ」に期待し続けてるの?と言いたくなるのは私だけでしょうか(^^;「消滅可能性自治体リストZ世代からの反論」は数号前の「人口ビジョン2100」への私自身のモヤモヤ感を吹き飛ばしてくれた。「人口ビジョン2100」への違和感を抱いている人はZ世代だけでなく全世代で沢山いると思う。「~Z世代からの反論」には能條桃子さんも登場。井手英策さんの教え子です。能條さんには大いに期待したいです。
読了日:06月13日 著者:


神曲 天国篇 (講談社学術文庫 2244)神曲 天国篇 (講談社学術文庫 2244)感想
ついに原基晶訳「神曲」読了!この原訳は私が今まで読んできた訳のいずれよりも原典に忠実であり、ダンテの言いたかった事が良く伝わる日本語訳であると思う。巻末の原先生の各歌解説、あとがきも「神曲」、ダンテ理解を大いに助けてくれる。この原訳こそが「神曲」日本語訳のスタンダードになるべきだと思う。原先生があとがきで書かれているがダンテの生きた時代はペストが蔓延し、戦争が相次ぐなど今の時代とそれほど変わりのない不安な時代だった。そのような時代に書かれた神曲を読むことはとても現代的な意義のある事なのだと思う。
読了日:06月18日 著者:ダンテ・アリギエリ


新訳 ナルニア国物語7 最後の戦い (角川文庫)新訳 ナルニア国物語7 最後の戦い (角川文庫)感想
ダンテ「神曲」を読了した次の日にC・S・ルイス「ナルニア国物語」も読了してしまうとは。このナルニア国物語はファンタジー形式だけど、読んでいるうちにこれはキリスト教の寓話じゃないの?と思って解説を読んだら、やはりそうなのでした。訳者の河合祥一郎さんの解説に詳しく書いてありました。ただ、途中から話がこんぐらがってしまい、理解できない部分があったので、もう一度読み直した方が良さそう。ルイスも何度も読んでもらうためにそのように書いたらしい。このナルニア国物語も面白いので多くの人に読んで欲しいですね。
読了日:06月19日 著者:C・S・ルイス


ゼロ金利との闘い: 日銀の金融政策を総括するゼロ金利との闘い: 日銀の金融政策を総括する感想
2003年に出版され、著者が日本銀行総裁に就任したのを機に増刷された著書。すでにこの頃日本経済はデフレ状態となっており、それゆえ量的緩和政策のような例のなかった政策が行われ、それらの政策について検証している。安倍晋三内閣の経済政策アベノミクスの金融政策「異次元の量的緩和」につながるものがあると感じられた。また、1990年代の日本の経済状況の検証結果はアベノミクスがどうして上手く行かなかったかを考える上でも参考になると思われる。
読了日:06月23日 著者:植田 和男


経済セミナー24年6・7月号 通巻 738号 【特集】これからの労働市場改革を考える経済セミナー24年6・7月号 通巻 738号 【特集】これからの労働市場改革を考える感想
特集「これからの労働市場改革を考える」労働法の大内伸哉先生が登場。労働市場改革はまだ道半ばと言うところか。盛本圭一「はじめてのマクロ経済学」は「経済成長論の問題意識」人類社会の18世紀以降の急激な経済成長はどのように捉えられるのか、これからの連載が楽しみ。安藤道人「社会保障のこれまでとこれから 福祉国家と実証経済学の視点」も面白かった。
読了日:06月26日 著者:


ルポ年金官僚: 政治、メディア、積立金に翻弄されたエリートたちの全記録ルポ年金官僚: 政治、メディア、積立金に翻弄されたエリートたちの全記録感想
私自身もかつてこの本の言う「現場」で年金の仕事をしており、年金不信に振り回され、最終的に職場を去った身分であるので我が事として読んだ。年金官僚の皆さんにはお会いした事はないのだが、山口剛彦さんが殺害された時、山口さんの部下だった方が同じ部署にいて「信じられない」と語っていたのを思い出した。マスコミ人としては公平な書き方なのだろうけれども、民主党が政権に就いて日本年金機構を発足させたときに首を切られた人が沢山出て、大問題になった事は書かれてないなど、「現場」に冷たい書き方なのは仕方ないと言うべきなのか。

 

旧社会保険庁がどうしてあのようなひどい事になったのか。それは第二次世界大戦後、GHQが年金を扱う機関の制度設計について日本政府に「地方分権でやるように」と間違った指示をしたからです。日本政府は反対しましたが押し切られてしまった。やむを得ず地方事務官と機関委任で何とか中央集権的な組織にしようとしたけど、上手く行かなかった。年金官僚たちは何度も地方事務官廃止などの改革を試みるも職員組合と組合が支持する政党(野党)の政治的な動きで阻止されていた、と言う事についても検証して欲しかったです。

 

でもこの本を読んで年金の仕事をして本当によかった、と言う私の思いは変わりません。権丈善一先生の本を読むなどして年金あるいは社会保障について勉強をしてきました。終わりの方に出てくる香取照幸元年金局長のご著書には大いに学びがありました。残業が多い職場なので年金局のある、あるいは旧社会保険庁本庁のあった霞が関の合同庁舎への異動は避けていたのですが、一度ぐらいは香取さんのような人たちの部下として仕事したかったですね。

 

読了日:06月28日 著者:和田 泰明


日本鉄道物語 (講談社文庫 は 38-2)日本鉄道物語 (講談社文庫 は 38-2)感想
30年ぶりぐらいの再読。島安次郎・秀雄の鉄道技術者父子二代を追った日本の鉄道史。「日本の近代史には、奇妙な不合理性が宿命のようにまといついている。ヨーロッパ系の科学技術を日本に取り入れようとして、そのほとんどを学びえた事は事実だが、その科学技術の根底には、文化と深く関わる近代合理主義の広大な思想の領域があることを、ときに学び損ね科学的な認識を勝手に解釈しては判断を誤り、禍根を残すといった歴史も、日本の近代化の過程では数多く演じられた」(あとがき)という一貫した著者の観点からこの本は書かれている。
読了日:06月29日 著者:橋本 克彦

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