2024年5月13日 月曜日

 

 昨夜NHK大河ドラマ「光る君へ」を見ました。

 いやあ、このドラマは本当に面白いですね。

 主人公のまひろさん(紫式部)が藤原道長と恋仲になったり、

 まひろさんが清少納言ことききょうさんと仲良かったり、

 道長のすぐ上の兄貴で「汚れ役」だった道兼が改心して関白になったものの、すぐ死んでしまったり、

 花山天皇の色狂いぶり。

 円融天皇の女は子を産む道具、的発言、

 道長の甥の伊周が定子に子を産め!と言ったり、

 どこが「平安時代」なんじゃ、と言うくらいドロドロしとります(^^;

 

 まあ、人間なんざ所詮は弱い生き物なのですね。

 

 その「光る君へ」のまひろさんが昨日「宋(中国)では科挙(試験)に通れば身分が低くても官位を得て政に参加できると聞いております。」と帝、一条天皇に言っていました。

 これについてちょっとばかり考察。

 

 

 科挙と言うのは中国で高級官僚を再夜するための試験。

 今でいう国家公務員総合職試験に当たります。

 

 中国は10世紀の宋になって科挙制度が整備されました。

 科挙に通れば普通の人でも官僚になる事が出来るようになりました。

 そして出世すれば貧乏人であっても末は大臣、宰相に任用されることも可能になりました。

 

 もっとも科挙は儒教の古典「四書五経」あるいは漢詩について回答させるなど、とても難しい試験でした。

 何年もかけて受験勉強に励み、何段階もの試験を潜り抜けてようやく採用に至ります。

 だから実際に受験できるのは大地主の子弟がほとんどでした。

 それでも科挙の整備により、宋以降貴族制度はなくなりました。

 専制君主制の下ではありましたが、科挙制度のおかげで国民が平等な社会が曲がりなりにも実現したと言っていい。

 

 宋時代、中国は一般庶民も含めて経済的に繁栄します。

 アヘン戦争まで中国は欧米諸国に勝るとも劣らない世界的な強国であったのです。

 

 そして近代になってヨーロッパでも公務員試験制度が始まります。

 これは中国の科挙に学んだものです。
 中国と同様に欧米諸国では階級を越えた官僚と言う新たなエリート層が産まれ、そのおかげで近代ヨーロッパは中国を追い越して世界をリードするに至ります。

 

 さて、まひろさんが「科挙」について語った後、日本はどうなったか。

 日本では「科挙」が実施されることはありませんでした。

 貴族、そして下級貴族が土着化した武士が政権を握り続ける貴族政治が江戸時代まで続いたのです。

 勘違いしている人が多いのですが、武士階級はあくまで下級貴族が地方に移住して農民をこき使って蓄財に励んだ事により生まれたものです。

 一般庶民が労働に励み、蓄財して武士にのし上がったわけではない。

 あくまで武士は貴族階級の変質したものに過ぎない。

 

 お隣の韓国も科挙はありましたが、受験できるのは両班と言う事実上の貴族階級のみでした。 

 

 すなわち日本は160年ぐらい前の江戸時代終焉までず〜っと身分制が続いたあまり褒められたものではない社会だったのです。

 明治維新後、日本もヨーロッパに倣って公務員試験、あるいは大学試験などの平等で公平な試験制度が実施され、定着しています。

 にもかかわらず、江戸時代まで強固な身分制が残っていたものだから、現代日本では世襲議員、あるいは大企業と中小企業の格差が激しい、あるいは会社の飲み会での席次、等々ツマラナイ身分制の名残が社会のあちこちに残っております。

 最近になってGDPで中国にぬかれ、ドイツにも抜かれ、円安は進行し、挙句の果てに「国力低下」と言う情けない事態になっているのは日本が制度的にはともかく、国民意識の面で身分制の名残が残っているからではないか。

 

 現代中国も香港民主化運動の弾圧、ウイグル民族、チベット民族迫害、共産党一党独裁など非民主的で問題の多い国ではありますが、平等な社会を求め、それゆえに欧米と並ぶ強国であった事は間違いない。

 そのために中国が今なお世界から注目される国であり続けるのも確かなこと。

 

 まひろさんが今生きていたら何と言いますやら。

 

 「ききょうさん、今から1000年後の令和の時代も私たちの時代とあまり変わりないようですね。」
 「そのようですね。まひろさん。私たちの書いた「枕草子」そして「源氏物語」はまだ読まれているようですけれども」
 「何だかあまり嬉しくないですね。」

 「そうですね。」

 

 と言う会話を交わすのでしょうか。

 

 ま、冗談はさておき、大河ドラマ「光る君へ」がこれからも期待できそうなのは確かなことです(^-^)

 

 (5月12日 「光る君へ」放映後Facebook、mixiに書いた文章を編集して掲載しました。)