2024年5月3日 金曜日 憲法記念日

 黄金週間後半第一日目。

 東京都美術館で開催中の「デ・キリコ展」に行ってきました。

 

 

 デ・キリコ展 公式

 

 イタリアの形而上絵画の画家、ジョルジョ・デ・キリコが好きな人は多いと思います。

 夢のような不思議な世界を描いた作品の数々。

 そして「形而上絵画」と言う分かったようで分かんないような絵画。

 今回の展覧会でデ・キリコがニーチェが好きだった、と言う事を知りましたが、ではどうして「形而上」になるのか分かりません。

 大体ニーチェは「実存哲学」じゃありませんでしたか?

 何で「実存的絵画」にならないのでしょうか。

 …すみません、つい理屈こねました。

 「形而上」と言うのはデ・キリコの自己演出なんでしょうね。

 もしかしてこれは最近はやりの言葉で言えば「マウント」?

 いえ、何でもないです(^^;

 

 デ・キリコをマヌカン、英語のマネキンが置かれた風景画を描いた画家、と言うイメージで語る人が多いですが、彼はマネキンが出てこない作品も沢山描いてます。

 そして意外とピカソのように画風が大きく変わってはいない。

 もちろん途中で古典的な作風に回帰している時期もあります。

 

 会場に着いたのは午前10時10分ぐらいでした。

 土日祝日は予約制になっています。

 おかげで混雑しておらず、ゆっくり鑑賞できました。

 

 展覧会の構成です。

 SECTION1 自画像・肖像画

 SECTION2 形而上絵画

    形而上絵画以前

 2-1 イタリア広場

 2-2 形而上的室内

 2-3 マヌカン

 SECTION3 1920年代の展開

 SECTION4 伝統的な絵画への回帰 「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ

 SECTION5 新形而上絵画 

 TOPIC1 挿絵 神秘的な水浴

 TOPIC2 彫刻

 TOPIC3 舞台芸術

 

 となっています。

 

 デ・キリコの長い画家人生を最初から終わりまで見る事が出来る良い展覧会になっています。

 展覧会は撮影禁止。

 撮影スポットのみ撮影可能です。

 ただ、公式サイトの画像がコピー出来たので、それを転載して書くことにします。

 

 以下、印象に残った作品です。
 

 

 17世紀の衣装をまとった公園での自画像》

 1959年、油彩・カンヴァス
 ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団

   

  デ・キリコですが、彼の顔はとても印象に残ります。

  古代ローマの政治家、哲学者の胸像に似てないか?と思いました。

  この作品は17世紀のバロック時代の衣装をまとった、かなり強い印象を残す絵です。

  この絵を見た時、思わずこの人たちを思い出してしまいました。

 

 

 2009年 ローマのサン・ピエトロ大聖堂で撮影したスイス衛兵。

 この服装を思い出しました。

 なお、デ・キリコは後半生をローマで過ごしています。

 彼のアトリエ兼邸宅はそのまま美術館になっています。

 

 

 バラ色の塔のあるイタリア広場

 1934年頃、油彩・カンヴァス
 トレント・エ・ロヴェレート近現代美術館

 

 デ・キリコお得意の人のいない静かな、何とも言えない味わいのある広場を描いた作品。

 

 タイトルにある「イタリア広場」について公式サイトの解説を引用すると、

 「 1910年にフィレンツェに移ったデ・キリコは、ある日、見慣れたはずの街の広場が、初めて見る景色であるかのような感覚に襲われます。これが形而上絵画誕生の「啓示」となりました。」

 との事です。

 

 書き忘れるところでしたが、デ・キリコはギリシャ生まれなのですね。

 ギリシャ生まれと聞いてバロック絵画の巨匠エル・グレコを思い出しました。

 エル・グレコもギリシャ生まれ。

 デ・キリコの作風はギリシャ生まれであることと関係があるのでしょうか。

 

 

 

 不安を与えるミューズたち 1950年頃、油彩・カンヴァス
 マチェラータ県銀行財団 パラッツォ・リッチ美術館

 

 この作品は本に良く掲載されている作品です。

 顔のないマネキンに「ミューズ」すなわち芸術の女神、と名付けるあたりがデ・キリコらしい。

 

 

 ヘクトルとアンドロマケ》

 1970年、油彩・カンヴァス
 ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団

 

 ヘクトルとアンドロマケはギリシャ神話でホメロス「イーリアス」で有名です。

 トロイアの王子ヘクトルと妻アンドロマケのエピソード。

 デ・キリコがこのテーマで何枚も描いています。

 「ヘクトルとアンドロマケ」で検索してみると何枚もヒットします。

 しかし、たかがマネキンを描いた絵にイーリアスの名場面のヒーロー、ヒロインの名前を付けるとは、うーん、大げさな。

 デ・キリコ流のユーモアなのでしょうけれども。

 

 

 風景の中で水浴する女たちと赤い布

 1945年、油彩・カンヴァス
 ジョルジョ・エ・イーザ ・デ・キリコ財団 

 

 デ・キリコがドラクロワ、クールベに影響されて描いたもの。

 デ・キリコらしくないですが、西洋画家であれば誰もが一度は伝統的作風に回帰するもののようですね。

 この画像を見直してみて、左の女性が一瞬シュルレアリストの画家ポール・デルヴォーに似てないか、と思ってしまったのですが果たして。

 

 

 オデュッセウスの帰還

 1968年、油彩・カンヴァス
 ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団

 

 この作品とタイトルを見て、「え?」と思った後思わず笑いそうになりました。

 だって、これ、オデュッセウスが懐かしい故郷イターキ島に帰った場面ですよね(^^;

 「オデュッセイア」は読んでるので、艱難を経て10数年かけてようやく故郷に還ってきたオデュッセウスの苦難はこの程度ではないはずだが…(^^; と思ったのでした。

 デ・キリコのユーモアセンス爆発ですね。

 

 作品の紹介はここまでとします。

 今回の展覧会は何と110点もあります。

 しかしデ・キリコの多彩な表現ゆえに飽きる事がなく見る事が出来ました。

 …と言いましてもさすがに最後の方は疲れてましたけどね。

 鑑賞時間は1時間でした。

 

 

 こちらが展覧会の出口にあった撮影スポットです。

 

 

 

 

 ミュージアムショップで図録を買いました。