2024年4月29日 

 

 二日前にこの本を読み終えました。

 

 

 ガーズィー・ビン・ムハンマド王子「現代人のためのイスラーム入門」

 中央公論社。

 

 ガーズィー・ビン・ムハンマド王子はヨルダン・ハシム王国の王子。

 現国王アブドゥラー2世のいとこ。

 序文はアブドゥラー2世陛下が書かれています。

 

 殿下はプリンストン大学・ケンブリッジ大学で文学を修められ、イスラーム社会の最高学府アズハル大学でイスラーム学を学ばれました。

 大変な教養と学識のある方です。
 ヨルダンの政治にも国王顧問としてかかわっています。

 日本では知られていないようですがヨルダンの王家ハシム家は預言者ムハンマドの直系の子孫です。

 ガーズィー殿下はムハンマドの41代目の子孫にあたります。
 1920年代までハシム家はイスラームの聖地マッカ(メッカ)の守護者でした。

 しかしワッハーブ派と組んだサウード家にマッカから追い出されてしまった。
 そのサウード家が建国したのがサウジアラビアです。

 
 そんな殿下が書かれたイスラムの解説書。
 文中にはブレイク、ロセッティ、イエイツと言う欧米の詩人の作品が引用され、殿下の教養の深さと学識が察せらます。

 

 イスラーム、イスラームの聖典クルアーン、預言者ムハンマドの言行録ハディーズ、シャリーアはどのようなものなのかが良く分かるようになっています。
 イスラムは間違いなく私たちクリスチャンが信じる神様と同じ神様を信じる仲間である事が理解できました。
そしていわゆる「イスラム原理主義」がどういうものであり、どうして批判されるのかもよく分かりました。

 前述のサウジアラビアが奉じるワッハーブ派もこの「イスラム原理主義」にあたります。

 サウジアラビアはワッハーブの教義に基づいて統治されていますが、女性の権利を認めないなど、問題が多い国です。

 そして付録として悪名を轟かせたイスラーム国を分析し、批判した論文が付いています

 

 振り返ると、今まで私はイスラームの信徒、ムスリム自身によって書かれたイスラーム入門書を読んだ事がありませんでした。

 ムスリムでない研究者による入門書のみしか読んでいませんでした。

 それで多少イスラームの事が分かっているつもりになっていました。

 でもそれではやはり分からない事が多い。

 当たり前の事でした。

 わが身の無知と不明を恥じるばかりです。

 

 殿下の「私たちが信じている本当のイスラームを知り、理解して欲しい」との思いが良く伝わる本です。

 殿下のその真摯な姿勢は私たちクリスチャンの優れた聖職者、神学者、そして信徒の姿勢と一致するものです。

 多くの人に読んで欲しい本です。