2024年3月2日 土曜日

 早いもので2024年も3月。

 今年はうるう年なので2月は29日まででした。

 余談ながら人気グループ いきものがかりのボーカルの吉岡聖恵さんは2月29日生まれです。

 2月29日生まれの人はうるう年以外は何日に誕生日祝ってもらえるのでしょうか。

 

 本題です。

 3月最初の日記は2月に読んだ本。

 ジョン・メイナード・ケインズの「平和の経済的帰結」はさすが大経済学者!と思いました。

 第一次世界大戦で敗北した事を理由に、莫大な賠償金だけでなく、着実に賠償金を支払うための産業、資源を広範にはく奪されてしまったら、そりゃあ、ナチスドイツのような極右の擡頭を招きますね。

 第二次世界大戦後、枢軸国だったドイツ、そして日本が大規模な経済的な賠償を課されずに済み、奇跡的と言われた復興を遂げたのは結果としてケインズの提言が生かされた、と言って良いと思います。

 

 他に橋場弦さんの「古代ギリシャの民主政」。

 これは目からうろこで、古代ギリシャの民主主義は多くの論者の言うように「衆愚政治」が蔓延していた、と言うのは誤りだったことが良く分かりました。

 古代ギリシャの民主政はくじ引きによって誰もが直接政治に携わる事が出来る、逆に言えば誰もが政治に責任を負わないといけない体制だったのですね。

 だからこそ、仮に独裁制に陥っても、すぐに民主政に復帰でき、しかも400年間も長続きした。

 現代の民主政治は間接民主制なので、古代ギリシャの直接民主政とは異なりますが、それでも古代ギリシャの直接民主制に近い制度はあります。

 欧米の司法制度の陪審制、参審制がそうです。

 これはくじ引きで選ばれた市民が有罪か無罪かを決める制度で、古代ギリシャでも民衆裁判所がこれに近い制度でした。

 日本の裁判員制度、検察審査会はこの陪審制を参考にして設置され、運営されています。。

 また、現代の多くの国で行われている、徴兵制も古代ギリシャの直接民主制の元で市民が自ら武器、あるいはガレー船の漕ぎ手となって戦いに参加した故事に近い面があると思います。

 徴兵制は元々フランスでフランス革命の時に祖国防衛のために創設されたもの。

 フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」は何だか血なまぐさい感じがしますがそれは「市民たちよ、俺たち自身の手で民主主義国家フランスを反動的な王政の国から守ろうぜ!」と呼びかける歌なのでそう言う歌詞になってしまったんですよね。

 

 そうそう、「独裁の政治思想」の猪木正道先生の事も忘れてはいけないですね。

 猪木先生の本に触発されて今猪木先生の師匠、河合栄治郎の「ファシズム批判」を読み始めています。

 猪木先生の本は「共産主義の系譜」に続いて2冊目ですが、大変論理的なマルクス主義、ナチズム批判が展開されています。

 猪木先生は政治的には右派とされていますが、本当はお師匠さんの河合栄治郎と同様、政治的左派の非マルクス的社会主義者に入れるのが正しいのではないだろうか。

 

2月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2517
ナイス数:151

独裁の政治思想 (角川ソフィア文庫)独裁の政治思想 (角川ソフィア文庫)感想
「共産主義の系譜」でマルクス主義を徹底批判した猪木正道先生が20世紀の二大全体主義・独裁体制であるスターリン独裁、ヒトラー独裁、そして毛沢東独裁を分析した本。これらの独裁がどうして生まれたか、そしてどのように維持されたかを分かりやすく理論的に分析している。解説の木村汎先生の解説にある通りロシアのプーチン独裁の分析にも応用可能であると同時に今懸念されているトランプの再登板後の政権像、そして習近平政権の分析にも応用できる内容であり、今読むべき本であると言える。
読了日:02月04日 著者:猪木 正道


いのちの中にある地球いのちの中にある地球感想
14年間も積読していた本。内容としては環境保護運動に携わる人が書いた本らしい本。刊行から14年経過しているが、地球環境危機はますます進行している。私の大学在学時代から似た内容の本が多数出版され、世のなかに警告を与え続けていたけれど、環境危機にブレーキを掛ける事は出来ないままますます事態は悪化していく一方のように思える。やはり人間と言うのは都合の悪い事実から目をそむけたがる生き物なのだろうか。もっとも再生エネルギーの発展は予想以上に速いなど明るい兆しもあるので絶望してはいけないと思う。
読了日:02月05日 著者:デヴィッド・スズキ,辻 信一


古代ギリシアの民主政 (岩波新書 新赤版 1943)古代ギリシアの民主政 (岩波新書 新赤版 1943)感想
目からうろこの本。アテナイを中心とする古代ギリシャ民主政の通史。プラトン、アリストテレスが古代ギリシャ民主政を衆愚政治と見なし、私もそれを肯定していた。しかし彼らの見方は彼らが貴族出身で民主政に元々批判的であり、彼らの師ソクラテスが寡頭政治を主導した政治家を育成するなど民主政の敵とみなされたために刑死した事を受入れる事が出来なかったためだった。誰もが平等に発言できる民会、くじ引きにより、誰もが一度は公務につくなどして民主政に「あずかる」そして「分かち合う」政治体制、それが古代ギリシャの民主政治だった。
読了日:02月10日 著者:橋場 弦


ユグルタ戦争 カティリーナの陰謀 (岩波文庫)ユグルタ戦争 カティリーナの陰謀 (岩波文庫)感想
「ユグルタ戦争」「カティリーナの陰謀」の事件名に惹かれて即買いした。この二つの事件は有名で、カティリーナ陰謀はキケローの名前を高めた事件だから。「ユグルタ戦争」の主役ヌミディア国王ユグルタはずる賢い敵手として描かれているが、訳者の解説によればそれは征服者としての見方であり、アルジェリア独立戦争など後世の植民地側の立場からはユグルタは英雄と見られている。「カティリーナの陰謀」は訳者によるとカエサル側の立場から書かれているとの事。立場の違いによる歴史観の相違について考えさせられた。
読了日:02月12日 著者:サルスティウス


神曲 天国篇 (河出文庫 タ 2-3)神曲 天国篇 (河出文庫 タ 2-3)感想
再読。改めて言わせてもらえば「神曲」は平川訳が一番。躍動感があり、地獄、煉獄、天国でのさまざまな場面の描写が良く伝わってくる。天国についてのダンテの考え方は通常の人が抱きがちなイメージとはかなり違っており、神学的に考えるとこのようになるのかな、と思えた。「神曲」は難しいと思われているけれど、ハマってしまうと面白い。一度は読んで欲しい作品です。
読了日:02月14日 著者:ダンテ


ゴプセック/毬打つ猫の店 (岩波文庫 赤 530-10)ゴプセック/毬打つ猫の店 (岩波文庫 赤 530-10)感想
以前読んだのを忘れていて再読。前回の感想とそれほど変わらない。でもバルザックはえげつないからこそ面白いのですよ。多分当時もこういう話は結構現実にあった事だったのではないか。バルザックに比べたら日本の近代小説は甘い甘い。ピケティ先生の本にバルザックの小説が例として登場するのも良く分かる。
読了日:02月19日 著者:バルザック


中央公論 2024年 3月号中央公論 2024年 3月号感想
新書大賞2024.107人の選者の評を読むのはさすがに疲れた…。新書多すぎ(^^;新書と言うのは薄利多売、雑誌の売り上げを当て込んで本の値段を低く設定している日本の本の販売方法に一番マッチした本のかたちなのかもしれない。日本の本の販売方法が岐路に差し掛かっている今、新書は生き残れるのか、ちょっと不安に思っているのですが(^^;
読了日:02月21日 著者:


新訳 平和の経済的帰結新訳 平和の経済的帰結感想
経済学書をやたら改訳している山形浩生先生によるケインズの名著の翻訳。有名な本なのでおおよその内容は知っていたが、読むのは初めて。経済学者らしく第一次世界大戦で戦勝国がドイツにどれだけ過酷な賠償を課したか、そしてそれがドイツの復興にどれだけ負の影響を与えると予測されるか、詳しく分析されている。さすがケインズ先生。トマ・ピケティも「資本とイデオロギー」で戦勝国がドイツに貸した賠償は欧米諸国が植民地を収奪したのと同じ構図であると書いている。だからこちらも訳したのかな?(山形先生はピケティの本の訳者です。)
読了日:02月24日 著者:ジョン・メイナード・ケインズ


経済セミナー2024年2・3月号 通巻 736号【特集】中央銀行デジタル通貨は金融をどう変える?経済セミナー2024年2・3月号 通巻 736号【特集】中央銀行デジタル通貨は金融をどう変える?感想
特集は中央銀行デジタル通貨。香港やカンボジアなどのアジアですでに中央デジタル通貨が発行されており、改良も重ねられていることが理解できた。連載「どうする独裁者」は権威主義的政権と軍の関係について数理データで分析している。う~ん、ウクライナ侵略しているプーチン政権やウイグル弾圧を続ける習近平政権あるいはヴェネズエラのチャベスの後を継いだマドゥロ政権が簡単には倒れないわけね…。連載「新しい環境経済学」は「気候変動の社会的費用を考える。」経済学も結局は用いる人の価値観次第なんだという事を改めて感じる。
読了日:02月25日 著者:

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