2023年12月1日

 早いもので2023年も残り一か月となりました。

 12月最初の記事は11月に読んだ本です。

 

 

 11月の読書メーター
 読んだ本の数:9
 読んだページ数:3434
 ナイス数:117


神曲 天国篇 (集英社文庫)神曲 天国篇 (集英社文庫)感想
再読。今回は以前よりも理解が進んだと思う。ダンテの時代には天国はこんな風に考えられていたんだ。第三十二歌の聖ベルナルドのとりなしの祈りはカトリック信徒の私には心に響くものがあった。巻末の訳者、小川国夫、池内紀、そして訳者の娘さんの寿岳章子さんの文章も寿岳訳「神曲」の理解に大いに役立つはずです。
読了日:11月02日 著者:ダンテ・アリギエーリ


バロック美術-西洋文化の爛熟 (中公新書 2776)バロック美術-西洋文化の爛熟 (中公新書 2776)感想
カラヴァッジョ研究で著名な美術史家宮下規久朗先生の新著。16世紀のトリエント公会議により始まったカトリック改革の一環として展開されたバロック美術の概説書。宮下先生によると日本ではこれまでバロック美術の概説書はなかったとの事。それは日本では感情への働きかけよりも論理を重視するプロテスタントが日本ではこれまで主流だったからだろう。と言いつつカトリックの端くれである私もバロック美術の事は良く分かっていませんでした。この本はバロック美術への素敵な案内役となり得ますね、と宮下先生にお伝えしたいです。
読了日:11月05日 著者:宮下 規久朗


鉄道の世界史鉄道の世界史感想
13年積読した挙句にようやく読了。752頁は大変だったけど、読み通せたのは私が鉄道ファンの端くれだからでしょう。タイトルに偽り無しで英国発祥の鉄道がその後世界各国でどのように発展を遂げたか、概ね理解できるようになっている。他の方も書いてますが、日本のように人口稠密ゆえに鉄道が発展できた国は世界でも珍しいらしい。だから最近の鉄道廃線の議論も迷走気味なのかな、と思った。出版されて13年経っているが、激変する世界情勢を受けて各国の鉄道事情も大きく変動しているだろう。改訂版がなさそうなのは残念。
読了日:11月10日 著者:小池 滋,和久田 康雄,青木 栄一


なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学感想
今年ノーベル経済学賞を授与されるクラウディア・ゴールディン教授の著書。他の方も指摘している通りで題名がとても残念。本当は「キャリアと家族 女性たちの男女平等へ向けての1世紀に及ぶ長い道のり」が正しい。邦題の示す内容は8~10章の内容にはあてはまるのではあるが、それでは全体をとらえていない。100年を5つの世代に分け、それぞれの世代に属するアメリカの女性たちが先の世代のキャリア形成を参考にしつつ、どのように自分たちのキャリアを形成したかが、語られる。物語形式なので読みやすい。多くの人に読んで欲しい本。
読了日:11月11日 著者:クラウディア・ゴールディン


中央公論 2023年 12月号中央公論 2023年 12月号感想
特集「陰謀論が破壊する日常」まあ、想像通りだったけど、参政党が陰謀論をまき散らして1議席を参院で獲得するのだから、笑えないですよね。もう一つの特集は「政治改革から30年」小沢一郎さんですが、本当にこの人は変わらないのね。自分のわがままが野田政権を崩壊に追い込んだことを全く反省してない。こんな人が今も立憲民主党で野田佳彦元総理と一緒にいるのでは非自民勢力の政権奪取は無理かしら(^^;
読了日:11月12日 著者:

 

amazonのすごい人事戦略amazonのすごい人事戦略感想
ある勉強会の課題本。Amazonをはじめアメリカのテック企業は好きではないけど、このAmazonの人事戦略は本当にすごいと思うし、これなら常にトップ企業であり続けられる、と納得。14項目からなるアマゾンの理念OLPは読んでいて分かりやすくてとても納得のいくもの。そのOLPを達成できる人材を採用し、その人を評価し、さらに鍛え上げていくAmazon。読んでいくうちにAmazonだけでなく、多くの企業、あるいは組織でこの人事戦略は使えそうだし、個人レベルでも応用出来そう。
読了日:11月18日 著者:佐藤 将之


もっと気になる社会保障: 歴史を踏まえ未来を創る政策論もっと気になる社会保障: 歴史を踏まえ未来を創る政策論感想
日本で社会保障論を語らせたらこの人の右に出る人はないであろう経済学者の権丈善一先生と奥様の共著。資本主義経済体制における社会保障は再分配であり、経済成長戦略である、との観点から社会保障改革国民会議により長期的な改革の方向性が打ち出された医療保険・医療供給体制や公的年金、最低賃金制度などの働き方、子育て支援の財源を社会保険の拡充に求める構想、などについて納得のいく議論がなされている。井手英策さんも残念ながら権丈先生の議論にはまだまだ及ばないなあと感じた。最近井手さんが静かなのはそう言う事なんでしょうね。
読了日:11月18日 著者:権丈 善一,権丈 英子


ジャンプ 他十一篇 (岩波文庫)ジャンプ 他十一篇 (岩波文庫)感想
9年間積読。1991年ノーベル文学賞を受賞した南アフリカの小説家の短編集。残念ながら作者はこの本が出版される数か月前に亡くなっている。南アフリカの人種差別政策アパルトヘイトが廃止に向かう時期に書かれた小説がほとんど。アパルトヘイト体制下の息詰まる社会の中で生きる人々の有様が描かれている。小林多喜二の「党生活者」のように治安当局に追われたり、当局の眼をくらますために身分を伏せて他人の家にかくまってもらったり…、と現代日本では想像のつかない世界が展開されている。
読了日:11月24日 著者:ナディン・ゴーディマ


神曲 地獄篇 (角川ソフィア文庫)神曲 地獄篇 (角川ソフィア文庫)感想
7年半ぶりの再読。寿岳訳の次の再読を三浦訳にしたのは有名な平川訳を最後にしたかったから。しかしこちらの三浦訳は寿岳訳よりはるかに分かりやすく、訳注、解説も分かりやすく、「新曲」入門として一番良さそう。と思って調べてみると三浦逸雄さんは実はカトリック小説家の三浦朱門さんの御父上だったのですね。朱門さんの名前はシモン・ペドロから取ったとの事なので逸雄さんもカトリックの可能性は高い。そうだとすればこの分かりやすさが理解できる。もしかしたらこの三浦逸雄訳が一番まともな「神曲」の日本語訳なのかもしれない。
読了日:11月26日 著者:ダンテ

読書メーター

 

 最後はまたもダンテ「神曲」です。

 

 

 「地獄篇」書評に書いてますが、本当にこの三浦逸雄訳は良いです。

 分かりやすくて面白く、すらすら読めます。

 「神曲」入門としてはこれが一番かもしれないです。

 

 と言う事で

 再び行かん、ダンテとウェリギリウスと共に煉獄巡りの旅へ!