岩波文庫で昨年10月に出版されたウクライナの国民的詩人と呼ばれるタラス・シェフチェンコ(1814~61年)の詩集です。
おそらくはロシア・ウクライナ戦争勃発に合わせて出版されたのだと思われます。
岩波書店の紹介はこちらのリンクを読んでください。
私もロシア・ウクライナ戦争の勃発でウクライナの事をもう少し知りたいと思い、出版直後に近くの書店に平積みされていたこの本を購入しました。
読んでみると、詩人の祖国ウクライナへの熱い思いがつづられています。
かつてウクライナはキーウを首都とするキエフ大公国として繁栄し、そしてロシアの支配下でもヘトマン国家として自治を謳歌していた歴史がありました。
しかしシェフチェンコの時代にはもはや自治も奪われ、サンクトペテルブルクのロシア帝国政府に従属する植民地に等しい存在になり果てていた。
そんな祖国の有様を歌っています。
特に印象に残った詩は「ナイミチカ」。
ネタバレになりますが、この詩は旧約聖書「出エジプト記」のモーゼの幼年期のエピソードを参考にしたようです。
もしかしたら現代のエジプト、すなわちロシアから現代のユダヤ教徒、すなわちウクライナ人を解放する伝説的英雄モーセに匹敵する民族英雄の出現を待ち望む詩なのかもしれません。
その英雄とはもしかしたらこの人なのかもしれません。
昨年2月のロシア侵攻直後、首都キーウにとどまり、祖国ウクライナを守る事を動画で伝えたゼレンスキー大統領。
ゼレンスキー大統領が最後に「ウクライナに栄光あれ」と呼び掛けています。
「ウクライナに栄光あれ」はシェフチェンコの詩から取られているそうです。
その詩は残念ながらこの詩集には乗っていないようですが、「死者と生者とまだ生まれざる同郷人たちへ」に「ウクライナの栄光」と言う言葉が出てきます。
「栄光」と言う言葉も数回出てきます。
この詩を読むとシェフチェンコの祖国への熱い思いがひしひしと伝わってきます。
そしてそれは多くのウクライナ人の祖国への熱い思い、でもあるのでしょう。
ウクライナ人がどうしてここまでロシアに頑強に抵抗するのか、まだ理解できていない人も多いようです。
そのような人にこそ、この「シェフチェンコ詩集」を読んでほしいのです。
そして出来る事ならかつてのウクライナのように独立への道を閉ざされてしまったチェチェンの人々にも思いを馳せてほしい。
プーチン大統領の軍事制圧により独立・自治を奪われたチェチェンはかつてのウクライナと同じような有様であると思われるからです。
最後にウクライナの完全独立を願ってもう一度この言葉を。
「ウクライナに栄光あれ」