2019年11月23日 土曜日
森美術館に行ったあとで猫町倶楽部東京アウトプット勉強会 稲葉振一郎著『AI時代の労働の哲学』読書会に参加。
猫町倶楽部に参加するのは7月のピーター・ドラッカー「プロフェッショナルの条件」以来です。最近は無理してでも参加しようとは思わなくなっています。猫町倶楽部に参加している人でも年季を重ねれば自然にそうなります。
今回の参加動機はたまには顔だしてみようか、と思ったことと、私がブックマークしているブログ「hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)で課題本を取り上げていたからです。
ジョブとメンバーシップと奴隷制再掲(稲葉振一郎『AI時代の労働の哲学』に触発されて)
ついでに書いておくとこの「hamachanブログ」は労働問題・社会保障に興味のある人にはとても参考になるブログです。労働省に入省し、厚生労働省でもキャリアを積んだれっきとした元官僚ですが、日本では数少ない本物の左翼です。
・・・え?「元官僚が左翼なわけねーだろ!バカかお前は!」ですか?
いやいやいや、濱口さんはこのブログで欧米の社会民主主義の現状についてとても詳しく論じておられます。それを読めばどう見ても左翼としか思えません。欧米のみならず国際的に左翼は社会民主主義が正統な左翼である、ということをお忘れないでいただきたいのです。残念ながら日本ではこの記事で批判されてる「ヨニウム」氏が左翼ということになってますが。
このときは濱口さんがこの記事を書いた真意を読み取ることが出来ませんでした。
課題本は読書会の前の月曜日ぐらいから読み始め、木曜日に読了しました。
読書メーターに書いた感想を引用します。
「 猫町倶楽部東京アウトプット勉強会2019年11月例会課題本。稲葉さんは社会哲学専攻とのことでそのためか雇用形態について古代ローマ時代のローマ法までさかのぼって論じるなど、範囲が広い。資料もかなり読み込んでいる。ただ稲葉さんもテーマについて十分消化できなかったようでAIによって仕事を奪われる懸念はこれまでの技術と同様にさほど心配しなくてもいいのではないか、と言う以上の結論が出ていないのは何とも。テーマが広いので猫町倶楽部の例会の話のネタがたくさん転がっており、山本達也さんが課題本に選んだのは頷ける。 」
ただ、こう書いてみたものの、この本の読後感は消化不良感、もやもや感がありました。
森美術館に行ったあと、会場の東京ミッドタウンへ。
この建物の21階が会場です。
今回の参加者は100人募集していたのに46人と少なかったです。もっともこの課題本の内容では仕方ないと思います。
例によって知り合いも数人いました。中には翌日の月曜会に参加する猫町では結構有名な人もいました。ついでに書いておけば彼は月曜会の課題本 ジェーン・オースティン「高慢と偏見」を読んでいませんでした。しかし彼は以前カズオ・イシグロ「忘れられた巨人」を一夜で読んで参加したツワモノですから翌日「高慢と偏見」を読み終えて参加したことは間違いないです。
午後3時半から受付。そして午後4時から読書会。私のチームは7人で私が最多出場。他に10回以上参加した人が二人、残りは2回以上の参加でした。
そして課題本のテーマから今回はSEの人の参加が多かったようで、私のチームにも数人いたと記憶しています。
読書会は自己紹介から始まり、おおよその感想を述べてから本番へ。おおよその感想では「内容があまりまとまっていない」という意見がありましたが、確かにその通りでこの本は取り扱うテーマが請負、委任、などの雇用形態についてローマ法時代以来からの流れ、そしてこれまで生産の機械化はどのように生産や雇用を変えていったか、など幅広く論じすぎているため結論が曖昧になってしまっています。AIが懸念されているほど雇用を奪うとは思えない、と言う稲葉さんの意見には希望を感じる人も多かったのですが。
本の内容が内容だけに、読書会も流れがだんだん怪しくなってしまいました。
最初は「AIを使いこなせるか否かで社会的な地位に差がついてくるのか」「火星へ人間を送り込む計画にAIが必要と考えられているのか」あるいは「人口が減少してもAIで生産性が上がれば良いのではないか」「AIで生産性が向上した世界でベーシックインカムが必要とされるのはなぜか(ちょっと極論めいたので詳細は割愛)」とまあまあいい線いってはいたのですが、中盤ぐらいからだんだん感想がでなくなってしまいました。
そしてしまいには脱線してあろうことかある業界の内幕話を聞く会になってしまいました。
・・・いや、仕方なかったのです。
猫町倶楽部の読書会は途中で無理に流れを変えないスタイルを取っていますので。
これが例えば井手英策さんの講演会後のグループワークや金融経済読書会の読書会だったらファシリが少々強引にでも話の流れを戻す、ことはありえます。
でも猫町倶楽部このように話しの流れに任せて大脱線するのも一つの楽しみということです。
・・・と私は理解してますが、違ってたら申し訳ありません。
という事で今回の猫町は私が経験した中で一番大脱線した読書会になったのでした。
濱口桂一郎さんがブログであんなちょっとおかしな書き方をしたのもわかる気がします。自分の著作が参考文献として挙げられている本についてけなすわけにもいかず、あのような書き方をしたのでしょうね。さすがは濱口先生です。(苦笑)
読書会のあとは近くの居酒屋で懇親会。私のチームは分かれて他のチームの近くに座りました。私は隣がサポーターの一人でたまたまその翌日の課題本「高慢と偏見」からディケンズの「クリスマス・カロル」に話が発展し、大いに盛り上がりました。
途中で席替えしましたが、向かいの方がまたサポーターの方で彼も経済学に興味があり、これまた大いに話が盛り上がりました。
午後9時でお開きとなりました。
参加者の皆様、そして猫町サポーターの皆様今回もありがとうございました。