4月29日 土曜日の日記です。

今年も黄金週間がやってきました。

毎年この時期は多くの美術ファンの皆様と同じように美術館に行く時期としています。

 

ということで、さっそく行ってきたのが、東京都美術館で開催中の「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル バベルの塔」展、そして国立科学博物館「大英自然史博物館」展でした。

 

「大英自然史博物館」展はおなじみのアートテラー、とに~さんのアートツアーへの参加です。

 

両方ともとても良い展覧会でした。

 

まずは「バベルの塔」展のことを書きます。

 

今回の展覧会の目玉作品「バベルの塔」の作者ピーテル・ブリューゲル1世はかなり思い入れのある作家です。

というのは私の美術館巡りの原点がこのブリューゲルだからです。

 

今をさかのぼること27年前の1990年のゴールデンウィーク中にたまたま大学の講義が休講になり、その時間を利用して上野の東博で開催していた日本国宝展も休館となっていた時にたまたま開館していた国立西洋美術館の特別展に入り、それがとても良かったのが私が美術館巡りをするきっかけとなったのでした。

 

その時買った図録がこれです。

 

 

「プラハ国立美術館所蔵 ブリューゲルとネーデルランド風景画展」でした。

これはなかなか興味深い展示です。

ベルリンの壁崩壊の翌年にプラハ国立美術館から貸し出されたということは、展覧会の企画段階ではまだチェコはビロード革命前の共産党一党独裁体制だったはず。

果たしてどのようないきさつで開催に至ったのか興味は尽きないです。

ちなみにこの時はまだ「チェコ」は存在せず、「チェコスロバキア」でした。

 

見開きには興味深い文字があります。

 

 

後援が「チェコ文化省」になっています。

このころはまだ所謂「ビロード離婚」すなわちチェコとスロバキアの分離の協議に入るかどうか、という時期だったと思います。

チェコ共和国は連邦内の共和国として存在はしていましたけどね。

この話はチェコスロバキアの国号のチェコとスロバキアの間にハイフンを入れるか否かなど話がややこしい話になっていたので、ここまでにしておきます。

 

そのほかブリューゲルで思い入れ深いのはこちら。

 

 

 

両方ともオーストリアのウィーン美術史美術館にて2010年に撮影しました。

ここはかつてフランドル地方の支配者だったハプスブルク家によるブリューゲルのコレクションがあります。

この時今回の展覧会出展作とは異なる「バベルの塔」を見ていますが、残念なことに写真を撮影していませんでした。

 

前置きが長くなりましたが、以上のいきさつもあり、今回の「バベルの塔」展は初めから見るつもりでした。

そしてこの日、とに~さんのアートツアーで大英自然史博物館に行くことが決まっており、アートツアーの開始時間が午後4時半だったためその前に行っておくことにしました。

 

さらにまだ時間があったので以前このブログでも書いたことがあるこの場所に立ち寄ることにしました。

 

 

日本にある最大のイスラム礼拝所といわれる東京ジャーミィです。

ん?

「お前クリスチャンだろ?なんでイスラムの礼拝所に行くんだ?」ですか?

いえ、キリスト教もイスラム教もさらにユダヤ教も同じ神様を信じている兄弟の宗教なのですが。

今まで誤解で兄弟げんかしていただけ、です。

 

 

ここが入口。

中に入ってみるとすでに何人か訪れています。

ここはイスラム文化の理解の入口ともなっている場所です。

今の期間は原爆についてのパネル展を行っていて、音楽イベントも行われていました。

今回は時間がなくてガイドの下山さんのお話を聞けなかったのが残念ですが、二階の礼拝所に入ると信徒の方の祈りを見ることができました。

ここでの信徒の祈る姿がとても素敵なのです。

メッカの方向に向かって静かに祈りをささげる姿は私たちクリスチャン、あるいは仏教徒をはじめとする他の宗教にも通ずるものがあると感じます。

 

そして礼拝所の内部の装飾もこれまた素晴らしい芸術品です。

今回は礼拝時間に当たるため、撮影は不可でした。

ここは一般の信徒も集まる聖なる場所ですから、訪れる際はそのことを頭に入れておいてくださいね。

 

東京ジャーミィの公式サイトはこちら。

http://www.tokyocamii.org/ja/

 

 ここを離れて上野駅へ。

 

午後2時ごろ東京都美術館着。

 

 

 

 

会場に入ると、混雑気味で、じっくり並んでみることは出来ませんでした。

ゴールデンウィークは美術ファンにとっては願ったり叶ったり、ですね。

 

展覧会の構成です。

Ⅰ 16世紀ネーデルランドの彫刻

Ⅱ 信仰に仕えて

Ⅲ ホラント地方の美術

Ⅳ 新たな画題へ

Ⅴ 奇想の画家 ヒエロムニス・ボス

Ⅵ ボスのように描く

Ⅶ ブリューゲルの版画

Ⅷ 「バベルの塔」へ

 

となっています。

 

書き忘れるところでしたが、今回の展覧会はオランダのロッテルダムにあるボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館の所蔵品を中心に構成されています。

油絵だけでなく、版画、そしてあまり日本では展示されることのない16世紀の彫刻を見ることができる見どころ満載の展覧会です。

 

以下気になった作品を挙げていきます。

なお、公式サイトから画像転載不可のため文章のみとなります。

 

「アリマタヤのヨセフもしくはニコデモ」

16世紀ネーデルランドの彫刻です。

表情がとても良いです。

 

ディーリク・バウツ「キリストの頭部」のG

キリストの薄ら髭を生やした頭部を描いた作品。

バウツ(派)となっていますが、西洋美術館に彼の作品の一つ「荊冠のキリスト」が収蔵されています。

 

マナの拾集の画家「ユダヤ人の供儀」 

なんとも言えない不思議な味わいのある絵。

 

枝葉の刺繍の画家

「聖カタリナ」「聖バルバラ」

二人の聖女の肖像画。

聖カタリナは「アレキサンドリアの聖カタリナ」のことでかつては大変人気があり、画題によく取り上げられていました。

ただし現在はその実在が否定され、教会暦では用いられていません。

 

ハンス・メムリンク「風景の中の二頭の馬」

メムリンクは日本でも知られていますが、この作品も不思議な感じがしました。

ぼのぼのしているというのか、何と言えば良いのでしょうか。

 

ヒエロムニス・ボス「放浪者(行商人)」

今回の展覧会のもう一つの注目は奇想の画家と呼ばれるヒエロムニス・ボスの作品が出展されていること。

これがその一つです。

この作品はあちこちの画集に載っているのでご存知の方も多いはずです。

ところでこの絵の題は以前「放蕩息子」という日本語で紹介されていたように思うのですが、何か変更に至る発見でもあったのでしょうか。

 

ヒエロムニス・ボス「聖クリストフォロス」

ボスのもう一つの出展作品。

こちらは服に用いられている赤と背景の川の絵が印象的ですが、実は細かいところまで工夫がなされていることがパネルで紹介されています。

「放浪者」でもそのような配慮がされています。

紹介を読んだ後でもう一度見るとさらに楽しめます。

 

ピーテル・ブリューゲル1世「聖アントニウスの誘惑」

今回の展覧会ではブリューゲルの版画が相当数展示されています。

この作品はとても面白いと思いました。

ボスに通じる世界が展開されています。

ただブリューゲルの版画は混雑のため列が版画の前にできていたために残念ながらゆっくり見ることができませんでした。

 

ピーテル・ブリューゲル1世「バベルの塔」

今回の目玉作品です。

ところでこのバベルの塔はどこかで見たような建物だなあ、と思っていたら、このバベルの塔はローマにあるコロッセオをイメージして描かれたとのこと。

なるほど、そうだったのですね。

 

参考までに私が2009年ローマ旅行にて撮影した本物のコロッセオの写真を載せておきます。

 

 

確かによく似ていますね。

ブリューゲルがローマに行ったことがあることはうかつにも気づきませんでした。

 

このほか、このバベルの塔にはブリューゲルは様々な細かい表現を行っていることがこれまたパネルで紹介されています。

 

そして肝心のバベルの塔ですが、よくあるパターンでこの一枚だけを大きなスペースを取って展示しています。

おまけに混雑していますから観客は絵の前を急いで通り過ぎることになり、ゆっくり見ることは出来ません。

もう一度後ろの方に回って見ることをお勧めします。

とは言うもののこの作品はとても素晴らしい作品です。

ウィーンの「バベルの塔」よりも明らかにこちらのほうが優れています。

 

この展覧会は89点も出展されており、おまけに力作ぞろいのため、さすがに疲れました。

鑑賞時間は一時間ぐらいでした。

 

過剰出口の近くにはこのような展示物があります。

 

 

 

ミュージアムショップで絵葉書6枚を買いました。

 

ブリューゲル展公式サイト http://babel2017.jp/