どうして日本では、起業家が育たないのか、テレビで討論やっていました。
資金提供者がいない、制度や規則が悪い、チャレンジ精神がない、現状に満足してる・・・等々、いろいろ原因を上げていました。

私は最大の原因は、日本の社会が「異才をつぶそうとする、個人の能力を認めようとしない、出る杭を打つ」ことだと思います。
一言でいえば、「長い物には巻かれよ」の社会だからです。

もうずいぶん前ですが、スカイマークという新興航空会社が福岡~東京間を激安価格で飛ばしたことがあります。
すると、日本航空と全日空が同一価格で、サービスを始めました。
航空業界の秩序を乱す起業家を大手が寄ってたかってつぶそうとしたのです。

また以前、日記に書きましたが、スイカという便利なカードを発明したのは、一人の個人発明家です。
それを大手電機メーカーが特許庁に圧力をかけて、特許として認めさせなかったのです。
外国人もそれに憤慨して抗議した結果、やっと認められましたが、出願後19年が経過していました。
特許の有効期間は20年なのに。

日本にはこんなことがすごく多いです。
そして、政府も新しい新興企業を守ろうとせずに、大手を優遇します。
東京電力なんか既にゾンビ状態なのに、税金を投入して救おうとしています。
官僚の天下り先として、必要な存在だからです。
ほとんど死に体の大手企業が退場しないから、新しい企業が育たないのです。

これじゃあ、起業家としての才能を持つ個人がいくらがんばっても報われることはありません。
周囲からつぶされて膨大な借金を抱えて、夜逃げするか、保険金で清算するために自殺するしかありません。

わが国は基本的に集団主義なので、突出した個人は認めない社会です。
個人としての成功を狙う野心家には居心地の悪い社会です。
日本の特許法は「産業を発達させるため」に存在します。
一方、米国の特許法は「個人の権利を守るため」に存在します。
どちらが、発明家や起業家に優しいか、誰でも理解できます。

自慢じゃないですが、私は他社の出願を拒絶した特許の数は社内で一番多いです。
でも、社内での位置づけ(給料も)は、入社5年目の社員と同じです。
普通の神経を持つサラリーマンなら耐えられないんじゃないでしょうか。
(私は普通の神経じゃないんで、耐えられるのです。)

今度、特許法の講義をやることになったのですが、どういう立場でやらせるのかな~と疑問です。
出世から取り残された男の講義を聞くのは、楽しくないでしょうしね。