新指標 RCBsP (Runs Created based on BasePaths) について | Peanuts & Crackerjack

Peanuts & Crackerjack

Dedicated to the Saitama Seibu Lions organization and its players, baseball itself, and those who want to know what counts most in a given situation you are in and to make right decisions in a confident manner everytime. May the 'dose of luck' be with you!




【はじめに】


以前、コラム【 定量分析、その試みの第一歩 】において
それぞれの塁間に価値を見出し、便宜的にその価値を1~4の整数と定め

それを基に各選手の残した“結果としての”業績、チームへの貢献を
数値化して測定し、評価していこうという試みを始めました。

ただし、その段階においてはそれぞれの塁間に定めた価値は便宜的なものであり
正確にそれぞれのプレイの、そしてそれぞれの選手の業績、貢献を測るものではなく

それを踏まえて今回、新指標RCBsP - Runs Created based on BasePaths -を創り出し
塁間における価値をデータの蓄積を基に、ある程度統計的に正確性を持った数値で求め

その新指標RCBsPをもとに正確にそれぞれのプレイの、そして
それぞれの選手の業績、貢献を測る試みを始めていきたいと思います。

なお、もちろん上述のコラム【 定量分析、その試みの第一歩 】においても
この指標の背景にある、私の野球=baseballに対するphilosophy、視点を述べておりますが

改めて新エントリーを設ける以上、まずはじめに改めて再度ここでも
その私の野球=baseballに対するphilosophy、視点を整理し、まとめて述べたいと思います。


【野球=baseballに対する私のphilosophy、視点】


まずは野球(特にNPBのペナント・レース)における
最大の目的は何か?を明確に定義することから始め

ではその目的を達成するためには何が必要か?そして
更にそれを達成するためには何が必要か?といった手順で
1つ1つ徐々にその目的をブレイクダウンしていきます。

  ① 144試合を他のどの5チームより高い、最高勝率で終えること。
      ↓↓↓↓↓
  ② 144試合のうち、他のどの5チームよりも多く勝利をあげること。
      ↓↓↓↓↓
  ③ 144試合のうち、1つでも多くのゲームで勝利をあげること。
      ↓↓↓↓↓
  ④ 目の前の“この”1試合を勝利という結果で終えること。
      ↓↓↓↓↓
  ⑤ オフェンス:相手チームより1点でも多く得点をあげること。
    ディフェンス:相手チームより1点でも失点を少なくなるように防ぐこと。
      ↓↓↓↓↓
  ⑥ オフェンス:1人でも多くのランナーをホームに還すこと。
    ディフェンス:1人でも相手ランナーをホームに還さないよう防ぐこと。

つまりはまず第一に、得失点差がどうであろうが、
アウトカウントイニングがどうであろうがまったく変わりなく

勝負の一瞬一瞬に臨む選手たちが最優先事項として達成すべきミッション

“得点(=本塁)に最も近い走者(打者も含む)を更に得点(=本塁)へと近づける”

ここにある、というのが私の野球=baseballにおけるphilosophyです。

つまり、これをこれから説明していく新指標RCBsPに即して別角度から述べますと

シーズン最終盤の優勝争いやプレイオフ争いのゲームだろうが逆に順位が確定しそれとまったく関係ないゲームだろうが
シーズンが始まったばかりのまだまだこれから長いシーズンが延々と続いていく時期のゲームであろうが、

はたまたイニングが序盤であろうが中盤であろうが終盤であろうが、
はたまた得点差が大量差であろうが僅差であろうがリードだろうがタイだろうがビハインドだろうが、
はたまたアウトカウントがいくつであろうがまったく同じように、

1点の価値はどんな状況・環境であろうとも等しく“1点”の価値を持つものであり

そして、その同じ“1点”を奪うためにはどんな場合も例外なく
等しく打席に立ち、その後本一塁間一二塁間二三塁間三本塁間4個の塁間を進塁する必要があるのですから

つまりはそれぞれの4個の塁間の価値も同じように、どんな状況・環境であろうとも
等しくそれぞれ1つずつ“一定の”価値を持つものである、というphilosophyへとつながります。

ですから私は、基本的に勝負の一瞬一瞬において
選手たちがアタマに入れるべきはその時の走者の状況だけであり

もちろんそのゲームのルール、特性上
3アウトをとられると塁上に残るランナーは“残塁”として強制的に排除されるため

0、1アウトと2アウトでは例え同じ走者状況であっても
もちろんアウトになった場合の貢献には大きな差が出て来

“2アウト”という状況だけは例外的に多少アタマに置く必要がありますが

それ以外の状況、イニングが序盤だろうが中盤だろうが終盤だろうが
また得点差がリードかタイかビハインドか、そしてそれが大量差か僅差かといった状況は
基本的に“余計な、過剰な情報”としてアタマからばっさりと捨て去るべきだと考えます。

例えば打率、出塁率、長打率などの指標は基本的に勝負の瞬間における、
その場に臨む選手たちを取り巻く状況をすべて取り去る指標です。

どんなイニング、アウトカウント、得点差、走者状況、その他諸々の
その1勝負1勝負ごとに異なる環境といったものを考慮せず
純粋にその勝負の結果打者が残した結果を蓄積し、評価する指標です。

ただし、この指標ですと犠牲バントや犠牲フライといった結果は
測定・評価できずにすべて勝負から除外されていくことになるという弱点があります。

つまり、この指標はチームのために“自分の能力でもって”何を残したかを測るもので
進塁打を含む)自分を犠牲にしてランナーを進める、productive outs に関しては

それが特にNPBでは当然のように数多く戦術として採用されているにもかかわらず
まったく正確に測定・評価できないということになります。

逆に例えばWPA(Winning Percentage Added)などの指標は
イニングやアウトカウント、得点差、走者状況に至るまで
その1勝負1勝負ごとに異なる環境といったものを細かく考慮に入れ

それぞれの状況前・状況後ごとにおけるWP(Winning Percentage)の差でもって
その勝負の結果打者や投手がどれだけそのゲームの勝利に貢献したかを
数値としてあらわしそれを蓄積し、評価していく指標です。

ただし、この指標を例え細かく選手たちが状況状況ごとに把握してアタマに入れていたとしても
(※基本的に非常に複雑なのでそれは不可能であることもこの指標の難点ですが)

例えば9回裏2アウト・ランナーなし、大量得点差で打席に立った打者は
その打席がチームの勝利に対して非常に微々たる影響しか及ぼさないからと言って
いつもより集中力を欠いた状態でその勝負の一瞬を過ごしていいのか、という疑問があり

よく“野球は9回2アウトから”という格言を耳にしますが
私にしてみればそれは格言にするまでもなく至極当たり前の認識として広く共有されるべき

つまりどんなイニング、アウトカウント、そして得点差であろうとまったく変わることなく
“得点(=本塁)に最も近い走者(打者も含む)を更に得点(=本塁)へと近づける”ことを
最優先ミッションとして常に勝負の一瞬一瞬に挑む選手たちがアタマに置きながら

1つ1つ出塁を積み重ね塁上を賑わし続け、
1点1点を積み重ね続けていくことだけに最大限徹していくべきだと考えます。


そしてもうひとつ、ある1チームを追い続ける者として
失策や野選などといった記録上相手チームの責任として振り分けられるプレイについても

その勝負の結果として残ったものなのですから
その場に臨んだ味方チームの選手の担うべき“業績”“結果”として含めます。

例えば、失策についても攻撃側の選手がまずは三振を奪われることなく
投球を打ち返しフィールド内に運んだからこそ起こるプレイであって

公式記録員の方々も日々詳細に1つ1つのプレイを観察し続け
当該プレイが安打か、失策かについて素晴らしい判断をし続けていることは確かで
私ももちろんそんな公式記録員の方々の厳しい判断の数々には心よりの敬意を示す者ですが

それでも凄まじい速度で向かってくる打球でない限り
基本的にはグラヴに当てれば失策であり、

どんなに捕球まで時間が長くあるポップアップの打球であろうとも
グラヴに当てさえしなければ2選手間でお見合いをしたり、打球を見失ったりしても
基本的にはそれは安打であるという線引き

まず打者たち(そして投手たち)にとって預かり知ることのない
ある意味“ひとにぎりの運”に左右されるものであり

それは同じくどんなに鋭い打球を打ち返したとしても
運が悪ければ野手の正面を突いたり、その素晴らしいプレイでアウトになったりするのですから

基本的にその勝負が終了したときに、その勝負前の状態に比べ
塁上が、そして得点がどのように変化したかという結果だけに着目して
その該当選手の業績を、貢献を評価していこう、ということです。

これは相手ディフェンスの暴投捕逸などについても同様に扱います
(※つまりはその時の走者の判断を評価しよう、ということです)。

ですから、前回の上述コラムにおいても述べましたように
この指標は結果としてフィールド上に残ったものを
その勝負の前後でもって比較することで冷静に数値化し、評価するもの

“一般的な”期待というものを極力排除しているため
個々の選手の働きをその選手の“能力”という側面から評価する指標としては

まったく向いていないものであるということは
予めお断りさせていただきます。

さて、それでは以下2011年シーズンにおけるライオンズ攻撃陣を例にとりつつ
わかりやすく、具体的事例に即しつつこのRCBsPという新指標がどう働くかを観ていきましょう。


【2011年シーズンのライオンズ攻撃陣におけるRCBsP】


まずは下の図を観てください。

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP01


2011年シーズンのライオンズのオフェンス(=攻撃)においては
打席に立ったのは実にのべ5,427人にのぼります。

そしてそのうち3,615人が一塁へと出塁できずにこのダイアモンドから排除され
残りの1,812人が一塁へ到達します。

以下同じように一塁に到達したのべ1,812人のうち
ウォークオフで一塁上に残った走者のべ4人を除く計1,808人について観ると
618人が二塁へと進塁できずダイアモンドから排除され
残りの1,190人が二塁へ到達することに成功し

二塁に到達したのべ1,190人のうち
ウォークオフで二塁上に残った走者のべ4人を除く計1,186人について観ると
391人が三塁へと進塁できずダイアモンドから排除され
残りの795人が三塁へ到達することに成功し

そして三塁に到達したのべ795人のうち
ウォークオフで三塁上に残った走者1人を除く計794人について観ると
223人が本塁へと進塁できずダイアモンドから排除され

そして残りの571人が本塁へ到達することに成功し
計571得点を挙げることに成功した、という結果が残っております。

つまりは5,427の打席に立つ機会がある中で
様々な経緯を経て571回、本塁(=得点)に到達したということですから

本塁(=打席)に立った時点でその得点期待値は0.10521(571÷5427)となり

以下同じように一塁に到達した時点でその得点期待値は0.31512、
二塁に到達した時点でその得点期待値は0.47983、
三塁に到達した時点でその得点期待値は0.71824で
当然本塁(=得点)に到達した時点では1.00000となります。

そして、それを基にそれぞれの塁間の価値を示したのが以下の表になります。

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP02


これを観ると、例えば二塁へ盗塁した時の該当走者が稼ぎだした得点(=貢献度)は0.16471、
また同じく三塁へ盗塁した時の該当走者が稼ぎだした得点(=貢献度)
0.23841であることがわかります。

また、一塁から二塁へ進塁したことに対する得点貢献値
他の塁間の得点貢献値に比べ大幅に小さい値であるのは

ライオンズ攻撃陣が数多く犠牲バント戦術を選択し
確率よく一塁から二塁へ進塁させ続けていることにその理由を求めることができると言えますね。

それでは続いて、犠牲バントなどのプレイにおいて打者が稼ぎだした得点を
正確に測定するために1アウトの価値をどう定義するか、また残塁はどう扱うのか、

そしてまた本塁(=打席)に立つだけで与えられる得点(=貢献度)である
0.10521点を野球=baseballというゲームにおいてどう扱うか、つまり

それはゲームのルール上“所与のもの”として扱い選手たちの貢献とは見做さないのが妥当なのか、
そうではなく逆にそれが誰か特定の選手の貢献値として加算されるべきものか、
そしてそうならばそれは果たしてどの選手に加算されるべきものかについて

新しい章を設けて述べていきたいと思います。


【1アウトの価値、また残塁の扱いについて】


基本的に1アウトを奪われ、ダイアモンドから排除されるということは
そのダイアモンドに駒を進める(=打席に立つ)ことによって与えられた
0.10521点を失うということになります。

その上で、例えば自分が打席で出塁できずにダイアモンドから排除されるだけでなく
2塁上にいる走者をも自分の打席の結果3アウトになって残塁させ
彼をもダイアモンドから排除させられた場合はどう扱うかと言いますと

まずは自分(打席にいる)がダイアモンドから排除されたことによる-0.10521点に加え

走者(二塁上にいる)がダイアモンドから排除されるということですから
つまり走者がそこに至るまで積み重ねて来た得点貢献値、つまり
0.47983点(0.10521点+0.20991点+0.16471点)を失うということになり

つまりその打席における打者の得点貢献度(RCBsP)
計-0.58504点ということになります。

さて、このように1アウトの価値、そして残塁の扱いについて
定義づけをしてきましたが

このままですとまず思いつく最大の問題は

例えば1アウト走者一塁で併殺打を打って2個のアウトを奪われた時の打者の得点貢献度(RCBsP)
2アウト走者一塁で凡打を打って1個のアウトを奪われ、一塁走者を残塁させた時の打者の得点貢献度(RCBsP)とが

まったく同じ値になってしまう、ということです。

この問題を解決し、明確にそこに差を設けていくためにも
続いて本塁(=打席)に立つだけで与えられる得点(=貢献度)である

0.10521点を野球=baseballというゲームにおいてどう扱うかについて
新章を設けて述べていきたいと思います。


【打席に立つだけで与えられるRCBsPは誰の貢献値か】


まずは下の図をご覧ください。

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP03


まず最初に明確にしておくべきことは

チームのどの特定の選手の貢献でもなく
純粋にルール上所与のもの(given)として与えられた打席数は
1イニングあたり3個、つまり3アウト分であり

つまりは1シーズンで特定のチームの攻撃陣(そして守備陣も同じですが)に与えられた機会(=打席)数は
そのシーズンのうちに攻撃陣が奪われたアウトの総数と同値であり

標準のモデルケースとして3アウト×9イニング×144ゲーム=3,888個となり
(※ちなみにライオンズ攻撃陣は2011年では3,843回、2010年では3,812回
  ライオンズ守備陣では2011年で3,844回、2010年では3,832回でした)

つまりは2011年シーズンにおけるライオンズのオフェンスにおいて
全571得点のうち0.10521点×3,843打席機会数(アウト数)=404.32203点までは
ルール上所与のものとして与えられたものとして分類できることがわかります。

そしてその上で、それ以上に積み重ねることのできた打席数については
そのチームの攻撃陣がその打席の結果創り出すことに成功した“余分な”打席として分類することができ

ではその1つ1つの創りだされた打席(そしてそのRCBsP:0.10521点)は
果たしてどの選手の貢献値として判断すべきかを観ていくため

以下、図を用いながら1つ1つ説明していきたいと思います。

<① アウトカウントを増やさず出塁した場合>

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP04


上図に沿って説明させていただきますと

打者Bはアウトカウントを増やさずに出塁することに成功したことで
次打者Cの打席を“自らの打席の結果で”創り出し、増やすことに成功し

 (※Cの打席ではなくDの打席を創りだした、と解釈してもまったく問題ないのですが
   今後、以下で他の例を検討していく際にCの打席を増やしたとしたほうがわかりやすいため
   Cの打席を創りだしたとさせていただきました。ご了承ください)

所与では3打席しかないイニングにおいてもう1つの打席を創り出し
4つの打席でもって攻撃を継続していき得点を狙っていくことができるようにしたため

例えば打者Bが1アウト走者なしから打席の結果、単打で出塁し一塁に到達したとすれば
自分が本塁(=打席)から一塁へ進塁したことにより創りだしたRCBsP 0.20991点に加え

次打者Cの打席を創り出し、彼を打席に立たせることに成功したことにより創りだしたRCBsP 0.10521点も
打者Bの“自らの打席の結果で”創りだしたRCBsP、得点貢献値であると言えますから

この打席の結果、打者Bが稼ぎだした得点はRCBsPで計0.31512点であると測定できます。

ただし、これは当然“アウトカウントを増やさずに”
出塁することに成功した場合に限られるということ、

つまり野手選択によって先行する走者がアウトになりながらも
打者走者自身は出塁することに成功した、というような場面では

当然その打者は新たに次打者の打席を創りだしてはいませんので
彼が出塁することに成功したからと言ってRCBsP 0.10521点は
その打席における得点貢献度、RCBsPには含まれないということは注意すべき点です。

<② 併殺打の場合>

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP05


上図に沿って説明させていただきますと

打者Cが併殺打を打ち、自分自身に加え走者Bをもダイアモンドから排除させてしまったことで
打席の結果、打者Cの勝負が始まる前に既に与えられていた
打者Dの打席をも消してしまうことになった、ということができます。

つまり、例えば打者Cが1アウトで走者Bを一塁に置いて打席に立ち
その結果併殺打となり、3アウトでそのイニングが終了となった場合は

自分自身が本塁(=打席)から排除されたことによるRCBsP -0.10521点に加え
走者Bが一塁から排除されたことによるRCBsP -0.31512点、そして更には
存在すべきだった打者Dの打席を消滅させたことによるRCBsP -0.10521点、

つまり計-0.52554点が当該打席の結果
打者Cが稼ぎだした(消滅させた)得点貢献値、RCBsPであるといえます。

これで、上記で述べました残塁でダイアモンドから排除されたことに対するRCBsPの値と
併殺打によって(つまり走者もアウトを取られて)
ダイアモンドから排除されたことに対するRCBsPの値の間に明確な差を観ることができるようになりました。

なお、これは併殺打だけに限らず三重殺打においても同じように考え
その場合は続く2打者の打席を消滅させた、ということに対する得点貢献値
該当打者がその打席において稼ぎだした(消滅させた)RCBsPに含めます。

<③ 走塁死の場合>

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP06


この場合は、基本的に②の併殺打の場合と考え方は同じです。

打者Bは出塁することで打者Cの打席を創り出し、そのRCBsPを自分のものとしますが

例えば打者Cの打席において一塁にいた走者Bが二塁への盗塁を試み
その走塁の結果、盗塁に失敗しダイアモンドから排除されることになった場合には
当然走者Bの走塁の結果存在すべきだった打者Dの打席を消滅させるのですから

一塁にいる自分(走者B)が一塁から排除されたことによるRCBsP -0.31512点に
存在すべきだった打者Dの打席を消滅させたことによるRCBsP -0.10521点を加えた

つまり計-0.31512点が当該走塁の結果、
走者Bが稼ぎだした(消滅させた)RCBsP、つまり得点貢献値であるといえます。


【まとめ】


以上1つ1つ例をひきながら、いかにして得点貢献値RCBsPを利用していくかについて観てまいりました。

この新指標を導入することで、productive outs、つまり
犠牲バントや犠牲フライを始めとした進塁打についても選手の貢献に含めることができ、
その得点貢献値RCBsPとして数値化することが可能になると共に

盗塁成功や盗塁失敗などの走塁面についても
打席における打撃の結果による得点貢献値と同じ土俵で
その該当走者の得点貢献値を数値化して評価していくことができます。

例えばランナーを一塁に置いて犠牲バントを遂行し、その走者を二塁に進塁させた場合
その打者の得点貢献値は0.16471-0.10521=0.05950点であるとわかりますし

またランナーを一・三塁において犠牲フライを打ち返し、一塁走者はそのままで
三塁走者を本塁に生還させ、得点を奪うことに成功した場合のその打者の得点貢献値
0.28176-0.10521=0.17655点であることがわかり

またランナー満塁で本塁打を打ち、4点を奪うことに成功した場合のその打者の得点貢献値
0.28176点(三塁走者分)、0.52017点(二塁走者分)、0.68488点(一塁走者分)に加え
0.89479点(打者自身分)、そして0.10521点(次打者の打席を創りだした分)で
計2.48681点であるとわかります。

また盗塁について、成功した時の該当走者の得点貢献値
二塁への盗塁で0.16471点、三塁で0.23841点、本塁で0.28176点であるのに対し

失敗した時のその走者の得点貢献値
二盗失敗で-0.42033点、三盗失敗で-0.58504点、そして本盗失敗で-0.82345点となります。


【今後の展望について】


まずは2011年、2010年のライオンズのオフェンス、そしてディフェンスにおける
それぞれの全体の打者の進塁状況およびそれぞれにおける塁間のRCBsP値を観ていただこうと思います。

<Ⅰ.2011年、ライオンズのオフェンス>

総打席数5,427、総アウト数3,843、走塁アウト数52、得点571

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP07_2011offense


<Ⅱ.2010年、ライオンズのオフェンス>

総打席数5,576、総アウト数3,812、走塁アウト数52、得点680

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP09_2010offense


<Ⅲ.2011年、ライオンズのディフェンス>

総打席数5,352、総アウト数3,844、走塁アウト数66、失点522

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP08_2011defense


<Ⅳ.2010年、ライオンズのディフェンス>

総打席数5,523、総アウト数3,832、走塁アウト数57、失点642

$ピーナッツとクラッカージャック-RCBsP10_2010defense


もちろん統計的に少しでも正確性を求めていくならば
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ におけるすべての打者の進塁状況を合計して
そこから塁間の価値得点貢献値としてRCBsPで数値として示すべきであり

つまりは塁間の価値を年度やオフェンス、ディフェンスで異なるものではなく
ある程度不変の、一定の値として定めるべきなのですが

上4つの表を見ていただいてもわかるように
2011年と2010年とではオフェンスでもディフェンスでも同じように

総打席数、そして総得点(失点)数においてそれぞれ100以上も異なるという
まさに統一球などの大きな環境の変化が色濃く影響した2シーズンであり、

まだデータの蓄積が2年しかないということもあり
とりあえず今シーズンオフの2010年、2011年における
各打者・また各投手の業績の評価、そして比較については
それぞれの環境で求めたそれぞれの塁間の価値をベースにしていきたいと思います。

塁間の価値一定の数値として求める試みは
とりあえず少なくとも3シーズン分のデータが蓄積する
来年のシーズンオフ以降に再度改めて挑戦してみたいと思います。

そして、今後今シーズンオフにやっていくことは
オフェンスについては各打者について、そしてディフェンスについてはまずは各投手について

その1つ1つの勝負を積み重ねていった結果、シーズンを通して
どれだけの得点(または失点)に貢献したかの総量をRCBsP値として計測するとともに

その総量の値をを与えられた機会、つまり
打者であればもちろん打席数であり投手であれば登板機会数で割って

1回の打席や登板で平均どれだけ得点(または失点)に貢献したか
これもRCBsP値でもって測定していきたいと思います。

また、それぞれの与えられた機会ごとに
得点(または失点)貢献値正の値を示すか、はたまた負の値を示すかによって
その“機会”“成功”であったか“失敗”であったかに区別していき

それぞれの回数を数えていくことによって
当該シーズンにおける打席(もしくは登板)成功率を算出できればと思っております。

なお、まだまだ新しい試みでありますので
やっていく中で多少修正していく部分はどうしても出てくると思いますし

こういった新指標はそうやってより正確なものへ改善されていくものですから
その部分は予めご了承いただければ幸いです。

さて、それではライオンズの今シーズンにおけるプレイオフの勝負が終わりましたら
いよいよ本格的に各選手別に、この新指標RCBsPをもとにして
様々に分析し、そして評価し解釈を試みていきたいと思います。