グッバイ、“カリスマ”デーブ! | Peanuts & Crackerjack

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Dedicated to the Saitama Seibu Lions organization and its players, baseball itself, and those who want to know what counts most in a given situation you are in and to make right decisions in a confident manner everytime. May the 'dose of luck' be with you!



誤解を恐れずにあえてものすごく単純化するならば

“自由”“平等”という、ひとの求めるべき
しかしなかなかうまく両立できない2つの理念があり

かつての資本主義が“自由”に深く重心を置き
どうしても労働者がその置かれた境遇を克服できずに苦しみ

そんな中で誕生し熱狂をもって迎えられたのが
“平等”により深く重心を置いた社会主義。

ただ、その“平等”を具体的に実行するにあたり
結局はひとにぎりの“カリスマ”たちが権力を独占し

自分たちであれば未来をも間違いなく予測し計画できると
いうならば“神”になろうとしたことが躓きの始まり。

現在では社会主義国家でも資本主義経済を採用したり
資本主義国家でも社会保障、福祉政策を積極的に採用したりと

様々な課題は残り、まだまだ試行錯誤を繰り返しながらも
ひとはうまく“自由”“平等”と、どちらをも
実現しようとその歩みを進めていけているのであり

そこでは偉大な“カリスマ”が道を切り開き
その後を信奉者が疑うことなくつき従うモデルは消え去り

私が、私たちがその置かれた境遇に応じて
大きな時代や体制の波のうねりに容赦なくさらされ
喜怒哀楽、悲喜こもごもながら

その幸福を求めるべく自分たちで、自分たちなりに
その1日1日をよりよく、より楽しく過ごしていく、

そんなモデルが残っていくのだろうし

結局は“自由”だって“平等”だって言ってみれば

私が、そして私たちがどうやって
その置かれた境遇に応じて自分たちなりの
よりよくより楽しい毎日を作っていけるかの目的のために

作られてきた理念、つまり手段の1つでしかないもの。

映画 " Good bye, Lenin ! "
ベルリンの壁崩壊前後の東ドイツを舞台に

カリスマ、レーニンの残した“遺産”という境遇の中
それに複雑な思い、矛盾する評価を併せ持ちながらも

そこで毎日を過ごすひとたち一人ひとりなりに
迷い、衝突し、泣き笑いを繰り返し試行錯誤しながらも

1つ1つ幸せを感じることのできる瞬間を、一日を
なんとか作り上げていこうとする物語。

さて、ライオンズでは1人のカリスマ、
デーブコーチが表舞台から退場となりました。

このカリスマの素晴らしい功績とは一言で言うと
“スモール・ボール”の伝統の恐ろしく強いNPBの中で
“ビッグ・ボール”を驚くほど短期間に実現させたこと。

ただし、短期間に有無を言わさぬほどの結果を残して
“伝統”側からくる凄まじい批判を封じなくてはと焦り

ちょうど社会主義のカリスマたちのように
理解できない選手たちにも強引に自分の手法を強制し

かつて自分がスモール・ボールを強制されて
独裁者のようにふるまう指導者たちに苦しみ
そこからビッグ・ボールを自らの理念としたにも拘らず

結局かつて自分がもっとも嫌った“独裁者”になったことは
まさに本末転倒であり、冷静に時間をかけて反省し

自分の理念を達成するためのより良いリーダーシップ、つまり
より適した表現方法、伝達方法を工夫すべきでしょう。

そもそもライオンズのビッグ・ボールとは
渡辺監督の「HR、盗塁、奪三振」のコトバ通り

野球のルールにそれほど詳しくないひとでも楽しめる
わかりやすい“魅せる”勝負の数々を積み重ねていくこと、

そして、その延長線上にこそ
ゲームの勝利を順調に積み重ねていくことや
ペナントレースの優勝を争う貴重なゲーム、勝負があるという

そういった固い信念があるはず。

これまでスモール・ボールを叩きこまれて育った
若い選手たちには、なかなかうまくそんな信念が伝わらず

思ったように動いてくれないこと、活躍してくれないこと、
そんなことは当然多くあるでしょう。

それでも指導者が結果を残し続けることに固執するあまり
選手たちひとりひとりの置かれた今の境遇や成長状況を軽視し

自分の思い描く理想を“今すぐ”選手たちに強制する、
そんなカリスマからはそろそろ思い切って訣別し

ここからは自分たちの能力と集中力でもって試行錯誤しつつ
自分なりの“魅せる”野球を貫いていくべき時期でしょう。

デーブコーチの残した業績はほんとうに素晴らしいものですが
だからといって主役はもちろん彼でも首脳陣でもなく

勝負の一瞬一瞬の場に臨む一人ひとりの選手たちです。

そしてライオンズの選手たち一人ひとりが目指すべきは

いかに自分の“魅せどころ”を観客にわかりやすく表現し
観客を、そして自分を勝負の場で安定して楽しませながら

その中でゲームの勝利を1つ1つ積み重ねていくかということ。

頼りになる強烈なカリスマはチームから去りますが
ライオンズというチームは、魅力的な選手たちは、
そして彼らの織りなす魅せどころたっぷりの勝負の数々は

これからも絶えることなくどんどんと続いていくでしょう。

さようなら、デーブコーチ。

これからはその素晴らしい業績に感謝しながらも
決して彼がいれば、なんて懐古趣味にとらわれることなく

これまで数多の勝負の場を経験してきた
自分とチームのメンバーとの能力と集中力とで

変わらずに自分たちの“魅せどころ”をじゅうぶんに発揮しつつ
1つ1つ勝利をもぎ取っていってほしいと思います。