ジュリアードで昼食を 9‐5.
「 彼と彼これ40年 ジュリアードで昼食を 9‐4. 」 から続く
【 Ron: Hooray Juilliard !!
( ホゥレ~イ = バンザ~イ (/・ω・)/ ジュリアード !! )
This is great.
It’s an “ Instrument Throwing, “ instead of a “ Cap Throwing, just for Juilliard. “
( こいつはスゴイ。
「 キャップ・スローイング 」 ならぬ、 「 楽器スローイング 」 とは、まさにジュリアード向きだ。 )
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アメリカの大学における卒業キャップ・スローイングについては、 「 ジュリアードで昼食を 9-1. 」 を参照。
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私: まー、色んな楽器が飛んでるネ~。
楽器って形もすごく綺麗で、其の侭 「 絵 」 に。
Ron: The audience enjoys not only to listen to the music, but also to look at the musicians who play their beautiful instruments.
( 観衆は、音楽を聴くだけではなく、音楽家が美しい形をした楽器を演奏する姿を観ることも楽しむ。 )
私: 楽譜も飛んでるけど、・・・ ?
Ron: (。´・ω・)? Well, that’s a voice, isn’t that ?
( う~ん、 あれ、 「 声 」 じゃないのかナ ? )
私: だよネ !!
目には見えないけれど、画面一杯に響き渡っている素晴らしい 「 声 」 。
その力強い 「 声 」 を奏で出す声楽家の楽器は、放り上げることも絵に描くことも出来ない 《 声帯 》 そのものなんだネ ・・・ 。
Ron: But, you are throwing yourself in this picture !
( けど、この絵では、君も自分を放り上げてるジャン ! )
私: まーネ、空想画だから、 「 不可能も可能になる 」 。
ダンサーの楽器は、 《 体 》 そのもの。
だから自分で自分を放り上げなきゃならない。
で、思いっ切り開いたグラン・ジュッテのジャンプを使って、一番高い所まで飛び上がって見たワケ。 ✌(‘ω’✌ )三✌(‘ω’)✌三( ✌’ω’)✌
こんなに沢山の魅力的な楽器に引き立てられて、私もノリノリ (((o(*゚▽゚*)o)))
Ron: Even higher than my piano ! Hooray, Juilliard Dancer !!
( 僕のピアノより高く跳んでるネ ! ホゥレーイ、ジュリアード・ダンサー !! )
私: (o^―^o)
Ron: Much higher than other instruments. Otherwise nobody sees you.
( 他の楽器をズンと引き離した高さまで。 じゃなきゃ、誰にも見て貰えない。 )
私: 宇宙の果てまで、どこまでも !!! 】
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2人の対話はとめどなく続く。
出会いの’72年から44年、2016年の今日までも、川の流れのように、 ・・・。
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私: この絵のみんなは、口の開け方からして、 “ Yay = イェ~イ ” じゃなく、どうも、 “ ホゥレ~イ ” って叫んでるみたいネ。
他にも“ Hurray “ とか “ Hurrah “ って綴ることもあるそうだけど。
Ron: Right. They are all expressions of Joy and Approval.
( そう。 ぜんぶ歓喜や称賛を表す掛け声だね。 )
“ Yay ! “ or “ Yea ! “ came from “ Yes “ .
( “ Yay ! ” と “ Yea ! ” の方は ⦅ 共にイェーイの発音 〙 両方とも “ Yes ” から生まれて来てる。 )
私: “ No ! “ の場合もあるの?
Ron: Naturally. We shout “ Nay ! ,“ at the top of our lung.
( 当然。 「 ネーイ ! 」 と、声を限りに叫ぶ。
― 訳注 : 直訳は、 「 肺のてっぺんから叫ぶ 」 。 ― )
By the way, “ Hooray “ is sometimes used for encouragement.
( ところで、 「 ホゥレーイ 」 は、時として激励に使われることもあるんだ。 )
私: あ、ワタシ、聴いたことあるョ。
“ Hip, hip, hooray ! “ ( 「 ヒップ、ヒップ、 ホゥレーイ ! 」 = 「 行け、行け、頑張れ~ ! 」 ) って、あれネ。
Ron: I’ve also heard that it means “ Good Bye. “ in Australia and New Zealand.
( 豪州やニュージーランドでは、 「 サヨナラ 」 を意味するんだとか。 )
私: じゃ、ヤッパ、卒業式にはぴったり。
「 卒業 」 って、一つの 「 別れ 」 だもん ・・・。
ところで、日本で応援する時の 「 フレー、フレー 」 も、実は、この “ Hooray ” が語原らしいのョ。
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「 しりあがり寿 」 という、ペンネームからしてひどくひょうきんな作家の4コマ漫画が朝日新聞に連載されている。
『 地球防衛家の ヒトビト 』 と、これまた独創的なネーミングのこの漫画は、一風変わったルックスの登場人物達によって繰り広げられる、ごくフツーの日常生活が題材。
しかし、豊富な知識に裏打ちされた鋭い批判精神とグローバルな視野に立って、ごく平凡な出来事から、時としては深刻な時事問題に至るまで、ユーモア溢れるタッチで焦点を当てる。
作者の暖かな人間味の伝わって来る、ごくオトナ向きのユニークな味わいだ。
著作権の関係上、写しを載せる訳には行かないが、セリフだけだったら許されるのでは ・・・ ?
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1コマ目 『 オレ、高校の時 応援団で甲子園に行ったんだ 』 『 キャー スゴイ !! 』 『 フレーッ フレーッ ってやつね 』
2コマ目 『 一回戦で 負けちゃったけどね 』 『 あの フレー フレー って どういう意味 ? 』 『 バット 振れーって こと? 』
3コマ目 『 えー たしか 外国の言葉が 元だったような 』 『 わからないんだ ? 』 『 わからないで 応援してたんだ ・・・ 』
4コマ目 『 それで すぐ 負けちゃった ・・・ ・・・ のかな ? 』 『 やめてくれ~~~ !! 』
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~ Juilliardの楽器スローイングに戻って・・・ ~
私: 当てっこしてみない? 誰がどの楽器を放っているのか。
Ron: Well, that’s almost impossible.
( う~ん、それ、ちょっと難題だナ~。 )
私: んだね。 卒業記念写真も全員手ぶらで、スマイルだけはみんなスッキリと爽やか (#^.^#) (⌒∇⌒)。
バイオリンとかフルートとか、あまりかさばらない楽器だったら持とうと思えば持てるんでしょうけど、誰も楽器持ってない。
ここに写ってるどの一人を取っても、一見しただけではその人が音楽家かどうかさえ分からない。
まして、それぞれの専門楽器を想像して見るなんて、先ず無理な注文よネ。
Ron: Anyway, all heavy instruments are flying in this picture.
Trombone, Saxophone, Tubas, Cellos, A Double Bass, and even A Drum Set.
( それにしてもサ、この絵ではかなり大物の楽器がみんな飛んでるヨネ。
トロンボーン、サキソホン、チューバ、チェロ、ダブルベース 〔 又はコントラバス 〕 、ドラムセットまで。 )
私: チューバは金管楽器でも、20キロもあって、トランペットなんかと比較して随分大きい。
ブラスバンドでも、何人ものチューバ奏者が足並み揃えて堂々と行進して行く様子はホントに勇壮。
Ron: In general, tuba players are big men, just like my grandpa.
( チューバ奏者は概して身体の大きい男性だョ、僕の祖父みたいに。 )
私: おジイ様は、Musicus ( ミュージカス ) という名字のとおり、チューバもバイオリンも弾きこなす優れたミュージシャンで、同時に、その繊細さ以上の大変な豪傑だったそうネ。
ロシアでユダヤ人に対しての迫害が起こった時のこと。
一人のユダヤ人が何人ものロシア兵に囲まれて暴行されている所に差し掛かって、ご自分も同じユダヤ人のおジイ様は、危険も顧みず止めようとなさった。
ロシア兵達がおジイ様に矛先を向けて来たのは当然の成り行きだったんだけれど、多勢に無勢をものともせず、丸太で立ち向かって、全員起き上がれない程にやっつけちゃったっていう話、よく覚えてる。
Ron: Well, that was why he had to leave Russia.
( まあ、だからロシアを離れなければならなくなっちゃったんだヨネ。 )
私: でも、何事も起こらなくて、おジイ様がその侭ロシアに留まっていらっしゃったとしたら、ワタシはアナタに出会えなかった。
Ron: The Russian soldiers must’ve been our match-makers.
( ロシア兵が僕たちの縁結びをしてくれたとはネ~。 )
私: あ、重い楽器の話に戻るけど、Timpani ( ティンパニー ) は重さだけじゃなく、場所取り過ぎるから入れなかった。
直径60センチ前後のティンパニーを最低2個並べて叩き分けるんだから、少なくとも1メートル半位の幅を取る。
Ron: Timpani evolved from military drums to become a staple of the classical orchestra by the last third of the 18th century.
For many years, a set of two timpani were played, but today, there are
four to five, sometimes even six of them are used in orchestras.
( ティンパニーは、軍用の太鼓から進化して、18世紀末30年ぐらいの間にクラシック・オーケストラの主要な楽器になった。
長い間大小2個のティンパニーだったのが、最近は、4、5個、時には6個も大中小のサイズを取り合わせて、高低の変化に富んだ音色を出すようにしているそうだ。 )
私: 原語がイタリア語の “ Timpano ” だから、複数形では “ Timpani ” になるのネ。
6個も並べると、それこそ壮観で、この頃は、クラシック畑だけじゃなく、ロックバンドなんかでも使う時があるんですって。
それはそうと、大型楽器では、Harp ( 竪琴 : 重量40キロ前後 ) なんかも姿が綺麗で、ホントは入れたかったんだけど、もう画面が一杯になっちゃって ・・・ 。
Ron: Is that instrument, shaped like a table under the cello on top left, a marimba?
( 左上のチェロの下にある、テーブルみたいな形の楽器はマリンバかな? )
私: そ。 重いよ。 木琴なんだけれど、がっしりした金属製の共鳴管が一つずつの琴に全部付いてるんだから、全体は85キロぐらいあるんですって。
Ron: But, Pianos are definitely “ the heavy weight champions “ of all the music instruments.
A large piano weighs 500 kilograms, half a ton.
There are no other instruments, heavier than Pianos.
( けどサ、ありとあらゆる楽器中の 「 ヘビー級チャンピオン 」 は、ヤッパ、ピアノだネ。
大きいピアノは500キロ、つまり半トンもある。
ピアノ以上に重い楽器は無い。 )
私: それはそうと、ロシア出身の歴史的ピアニスト、ウラジミール・ホロビッツが何かの政変に巻き込まれた時に、グランド・ピアノを、暴虐な兵卒達に2階の窓から道路に放り落されたっていう体験談、覚えてる?
ピアニストの魂ともいえるピアノを窓から投げ出すなんて、これ以上の乱暴狼藉は考えられない。
Ron: What a great job !
The damage on the road and the cost to repair it must have been enormous.
( 全くご苦労なこった! 道路のダメージも、修理代も、桁外れだったことだろう。 )
私: 半トンのピアノが道路を直撃なんて、マー、おっそろし~い (≧∇≦)
Ron: Horowitz was lucky, that they didn’t throw him out of the window.
( 奴らが彼自身を窓から放り出さなかっただけ、ホロビッツは幸運だった。 )
私: 命あっての物種だもんネ (”^ω^)・・・ 。
まー、ピアノが身代わりになってくれたともいえるし、国家功労者級の大ピアニストの前には、暴徒もさすがにひるんだんじゃないかしら ?
Ron: I guess so.
( マーネ。 )
私: そーいえば、私も一度、放り上げられたことあるんだョ。
Ron: Wow! In a dance ?
( ワオ ! 踊りで ? )
私: ノー。 「 胴上げ 」 されたの。
あれは、ワタシの生涯で、後にも先にもたった一回だけの 「 胴上げ 」 だった。
Ron: It must have been fantastic to be thrown.
But, it was a risky experience for you, because there have been quite a few serious accidents by “ Do-Age . “
( 放り上げられるのは最高だったろうナ。
しかし、 「 胴上げ 」 って、失敗して酷い事故になることも多いそうだから、君にとっては危ない所だったんだョ。 )
私: コワイ ! Σ(゚∀゚ノ)ノ
でも、彼達はある文化団体の中学生の男の子達でね、 「 胴上げ 」 も良く訓練されていたらしく、ぴったりと呼吸を合わせてしっかりと受け止めて呉れたのは感動的だった。
Ron: Dancing must have been a new experience to many of them.
( 彼等にとっては、ダンスなんて初めての経験だったろう。 )
私: そ。 ヒップホップが体育の一環に加えられている、 “ 今どき ” とは大いに違ってね。
1970年の5月頃だったか、私の発案した “ 群舞隊 ” というグループ名でスタート。
なにせ中学生の反抗期だし、最初は照れたり拒絶反応を示したりしていたけれど、私は、内心踊りたくてうずうずしてる彼等のホンネをはっきりと見抜いていた。
それを実証したのは、振り付け指導を開始するや、全員の態度が 「 ナットク ! 」 と、180度転換したこと。
一人一人が、残らずグングンとダンスの磁力に引き付けられて行って、見る見るステキな若いダンサーに変身して行く手応えを味わいながら指導する、実にやりがいのある仕事だった。
私は、丁度NY渡航に向けての旅支度の最中だったんだけど、出発間際に迎える本番を、日本のバレエ界に残して行く 「 置き土産 」 とも考えて、猛暑もすっかり忘れて、振り付けと指導に熱中して過ごした7,8月だったのョ。
“ 群舞隊 ” というカッコイイ呼び名も、この文化団体には気に入って貰えたようで、50年近く過ぎた現在も、其の侭変えずに使っているらしい。
Ron: Young boys must have wanted to show their appreciation and affection to you by giving you a traditional “ Doh-Age ,“ which seems to be very common in Japan.
( 日本では良く見られる、伝統的な 「 胴上げ 」 なんだが、少年達は、君を胴上げすることによって、彼等の君に対する感謝と、ほのかな慕情を示したかったに違いないナ。 )
私: カモ。 皆、そろそろ 「 オトナ = オトコ 」 に育って行く年頃だったから ・・・。
和製語では、 「 スキンシップ 」 って言うけど、肌で触れ合うことは、人間関係の潤滑油。
Ron: “ Skin ship “ in Japanese English could be replaced with “ Physical Contact “ in English. “
( 和製語でいう 「 スキンシップ 」 は、英語だと、 「 フィジカル・コンタクト = 身体的な接触 」 って言い換えられるかな。 )
私: 常に ” スマイル ” とのセットにして ・・・ (⌒∇⌒)
Ron: Handshake, hug, and kiss, and “ Do-Age .
( 握手、ハグ、キス、そして 「 胴上げ 」 。 )
私: それでこの絵のアナタも、愛器のピアノを 「 胴上げ 」 。
500Kgの怪物を絵のてっぺんまで、しかもたった一人で !
わりかし腕力あんだナ~ (^▽^)/
Ron: (o^―^o)
I got extra energy as soon as I thought of it’s price.
( ハハ、お値段の方を思い出した途端、超能力がモリモリ沸いちゃってネ。 )
私: このコラージュなら、ピアノ、落っこちて来る心配はないしネ。
Ron: ( ̄∇ ̄;)ハッハッハ
私: で、マジ、幾らぐらいするの?
Ron: Steinway D274 is priced $161,300 as of now, and the price goes up 4 % each year.
( スタインウェイ社製、D274 ⦅ 全長274センチを示す品名のグランド・ピアノ ⦆ は現価格161,300ドル 《 2016年7月27日現在の換算レートで、16,980,374円 》 で、毎年4%値上げするシステムを取っている。 )
私: (≧∇≦) 長さ3メートルとはチョー・デカ物だけど、値段も2千万円近くもするとはネ~、ちょっとした家なら、一軒買えるくらいジャン。
なんでそんなに高いのカナ~ ・・・。
Ron: Because it demands the best material, technique and the time to build.
It takes 12 months to complete a piano.
( それはネ、最高の材料、最高の技術、そして、かなりの 「 時間 」 が要求されるからなんだ。
一台のピアノを完成させるのに12カ月かかる。 )
私: ナンカ怖くなって来た。
Ron: You don’t have to be scared. There is no comparison between the time to build a piano and the time that you have taken to finish your work to become a professional dancer.
( 君が怖がることなんか無いよ。 ピアノ一台を造るのに必要な時間なんて、プロのダンサーになる為に、君が今まで費やして来た時間の比じゃない。 )
私: そういえば、確かにそうダネ。
私も、アナタがピアノを習い始めたのと同じ5才の時からずっとバレエを踊り続けた挙句の果てに、とうとうこのNYまで紛れ込んで来ちゃった。
そして、ジュリアードで4年間もみっちり絞り上げられて、卒業してから、ん十年も経った今の今になっても、毎日、 「 まだまだ 」 って自分に言い聞かせながら勉強し直し続けている。
Ron: All the Juilliard graduates must have started their study when they were very young, just like us.
( ジュリアードの卒業生も、皆僕たちのように、随分小さい時から習い始めているんだもんナ。 )
私: そう考えると、一見面白い発想のこの絵にも、一つ疑問が湧く。
Ron: Question ?
( 疑問 ? )
私: 子供の頃からずっと抱え続けて来た大切な楽器を放り上げることなんか、出来ないんじゃないかな~?
放るってことは、自分の手から放すこと。 放してしまった後では、その楽器に自分の手は届かない。
どこかに落ちて壊れてしまっても。
Ron: What you are saying is very true.
( 君の言ってること、本当だね。 )
私: 「 放る 」 っていう行為は、時として、 「 後はどうとでもなれ 」 とばかり、腹立ちまぎれにやってのけてしまうもので、ひどく破壊的な一面を持っている。
動作自体は同じでも、歓びや祝いの気持ちで放る時とは正反対に。
Ron: Just like little babies start throwing things, when they lose their temper.
( 丁度、機嫌を損ねた幼児が、そこいら辺の物を放り散らすように。 )
私: 限りなく自分の芸術を愛しているアーチストにだって、やけっぱちに全てを放り出して何処かに隠れてしまいたくなる気持ちに駆られる時だってある。
Ron: There is a funny story about the great cellist, Pablo Casals.
He was so happy that he didn’t have to touch his cello any more when he hurt his hand by accident.
( 偉大なチェロ奏者のパブロ・カサルスにも面白い話があるんだョ。
彼が事故で手に大怪我をした時、もう二度とチェロに触らないで済むんだって、大喜びしたんだって。
私: ハハ、判るネ~ !(^^)!
どんなに傑出した人物でも、人間である限り、凡人と少しも差のない 「 心の弱さ 」 を持っている。
だからこそ克己心を奮い立たせて、一旦選んだアーチストの道を貫き通した時に、その一筋の道が輝くのネ。
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大学生活4年間の緊張から一気に解放される卒業式が、日本では3月下旬、アメリカでは5月下旬と、少しずれているのは興味深い。
日本の3月下旬というと、早咲きの桜ならもう五分咲きの、温暖な 「 春 」 の気候。
所がアメリカでは、その頃はまだ冬の気配が残っていて、分厚いコートを必要とする日も少なくない。
大陸気候のこの国では、 日本の 「 春 」 に当たる期間は短く、やっと「 冬 」 から抜けたかと思う4月を過ぎるや、あっという間に 「 夏 ( 初夏 ? ) 」 にどんでん返しする。
大学生活4年間の緊張から一気に解放される晴れ晴れしい 「 卒業式 」 が、日米の二国共に、寒さから脱し切って本格的に温かさを迎える時期に開かれるというのも、自然のリズムにちゃんと沿っている。
長い年月をかけて定まって来る習わしというものは、合理的だ。
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卒業の解放感もさめやらぬ8月6日、私は、当時日本の音楽・舞踊の専門紙として重要な役割を果たしていた、 “ 音楽新聞 ” の社主、音楽舞踊評論家の村松道弥氏宛に手紙を出している。
日本のバレエ界は、私が育った一つの家庭のようなものだった。
そして、バレエを始めた5才の頃からプロのバレエ・ダンサーとして独り歩きして行くまで、私の成長の過程を逐一見守っていた、村松氏をはじめとする評論家や、バレエ界の先輩達は、私にとっては皆親しい 「 オバサン 」 、 「 オジサン 」 のような存在だった。
‘70年渡米の4カ月前に、私は、東京新聞主催のバレエ・コンクールで大勝しているが、コンクール初出場の私をこの勝利に導いたのは、審査員の内の2人が、その持ち票を全部私の作品に投じたことによる。
その1人は、昨年94才で亡くなられた、日本バレエ界では知らぬ人のない、谷桃子さん。 そして、もう1人が、村松道弥氏だったという。
私の出場作品は、ラベルの 「 ボレロ 」 を制限時間の7分に短縮編曲して、少しモダン・ダンスの手法も取り入れて振り付けた、 「 闘牛士 」 という新作で、それまでのこのバレエ・コンクールには見られたことのない作風のバレエだったと思う。
因みに、かつての恩師橘秋子先生は、重病 ( 翌‘71年5月にご逝去 ) をおしてのご出席だったが、なぜか、私の作品には1票も投じて下さらなかったと、後で知らされた。
【 私から村松氏に宛てた手紙は、殆どカットなしで‘70年9月14日付、 “ 音楽新聞 ” に掲載された。
“ アメリカに根を下ろす ” 「 バレエの佐々木弥栄子からの便り 」 という2行の大見出しに、 「 ジュリアード大学課程を卒業8月末に結婚 」 の小見出しと、 写真にも、 「 ロングビーチにて、佐々木弥栄子とラノルド・ミュージカス 」 とのキャプションが加えてある。
数年間にわたる無沙汰の詫びと報告を兼ねての個人的な書簡だったので、記事としてこれ程大きく取り上げて頂こうとは思いもかけなかった。
添付した写真まで掲載して下さった村松氏の暖かい激励を、私は一生忘れることがないであろう。
下の画像は、掲載写真のオリジナル。 キャプションに “ Yaeko & Ron, June,‘ 75 ” とあるとおり、前記事、 「 ジュリアードで昼食を 9-3. で触れた、元ルームメイト、ジェーンのアパートを引き払って来た日、それからしばらく住むことになる、ロングビーチの彼の実家前で撮ったもの。 引き取って来た家具に囲まれているが、私が右手を置いている、車のボンネットに括りつけて来たらしいタイ製の衝立と、ランの座っている中国製の籐椅子は、40年以上も過ぎた今もさほど古びずに、健気に頑張ってくれている。 】
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( 掲載記事を、ごく一部のみ下記する。 )
『 バレエの佐々木弥栄子は幼いころから橘バレエ学校に学び、大原永子、岡本佳津子らとともに将来を嘱望されていたが、 途中高橋彪の20世紀バレエ団に移り、5年前渡米して、ジュリアード音楽院に学び、今回同校の大学課程を卒業し久し振りで便りがあった。
「 村松先生おげんきでいらっしゃいますか。 5年もの間、すっかりご無沙汰してしまい、申し訳ありませんでした。 決して日本の舞踊界をないがしろにする積りでは無かったのです。 渡米して、ニューヨークの地を踏んだ瞬間から、自分の殻をこわすことに専念し、それをアメリカ・ダンスを学ぶ基本の姿勢にしていたため、エネルギーの全てをこちらの生活のリズムに集中させておりました。 読み書きも、英語に上達するためには日本語で読むこと、書くことを制限して参りました。 5年前に 「 ゼロから出発する 」 という思いで日本を離れて来た私にとってはこの態度より他には無かったのです。 しかしそれだけ堅固な基礎を固めることが出来たと自負しております。 ( 略 )
お送りした写真のように、ジュリアードで4年の大学課程も無事終えることが出来、いよいよこれから活躍の時と決意しております。 ( 略 )
私は8月24日にラノルド・ミュージカスと結婚をします。 ラノルドは姓にミュージックという言葉が這入っている通り、親戚にも音楽家が大変多いとは興味のあることですが、彼自身もジュリアード修士課程卒業のピアニストです。 ( 略 )
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「 結婚 」 の二字には重みがある。
その重量感のためだったのかどうか、いわゆる 「 適齢期 」 を越した20代後半から30代に入って行く頃の私は、生活の中心を占める 「 バレエ 」 の横に、 「 結婚 」 というものを二義的な問題として押しのけて置くような傾向があった。
しかし、ランとの関わりは、それまで私の内面で離れた存在としてお互いを牽制し合っていたような 「 結婚 」 と 「 バレエ 」 の二者を融合させて、無理なく一体化してしまうような大きさを私の生活にもたらした。
私は 「 バレエ 」 を、常に 「 音楽 」 の一部に位置する芸術として捉えていたが、 「 音楽 」 という世界の持つ大きさがランその人の大きさなのだった。
ある哲人が言った。 「 愛するとは、お互いを見つめ合うことではない。 真実の愛は、その両人が肩を並べて、共に同じ方向を見つめ合う所にのみ存在する。 」
そしてランと私は、確かにその 「 同じ方向 」 を向いて立っていたのだ。
実は、ランとの 「 結婚 」 イコール 「 アメリカに移住 」 という進展は、ジュリアード卒業に伴う学生ビザの失効によって、NYでの居住権をも失うことになった為に浮上したものだったのだが、そのように深刻な決断にも拘らず全くためらわなかったのは、彼と知り合って間もない頃からずっと、私は、二人が 「 同じ方向 」 に向かって進んでいることを信じたからなのである。
こうして、新カップル、Mr.& Mrs.Ronald Musicus ( ミスター・アンド・ミセス・ラノルド・ミュージカス ) は誕生した。
英語で夫婦二人を並び称する場合には、敬称のMr.& Mrs.を付した後は夫の名前のみで妻の名前は入れないので、 その “ Mrs. ” が “ Yaeko ” であることは、字面(じづら)では分からない。
日本では、「 田中一郎、花子 」 のように、田中夫人は 「 花子 」 という女性であることが一目で見て取れるのに反して。
しかし、 私一人だけの名前を書く場合には、 “ Mrs.Yaeko Musicus ” となるので、私が日本人であることもはっきりする。
いずれにしても私は、 “ Musicus ( ミュージカス ) ” という、 見ただけで何処かから 「 音楽 」 が聞こえて来るような名字を持って、ランとの新生活をスタートすることになった。
続く: 「 彼と彼これ40年 ジュリアードで昼食を 9‐6.」へ