夢想している間に決勝が終わってしまっていた。

 表彰式までの時間を使ってロイヤルバレエスクールの校長先生からお話が聞けるという時間があった。

 一応任意での講話だったけれど、コンクール参加者や関係者で客席はほぼ満席だった。通訳を介しながらの挨拶を終えるとすぐさま本題に入った。内容は若いダンサーたちがトウシューズを履く事への疑問だった。

「こんにちは、皆さん!今日はトウシューズの危険性についてお話ししたいと思います。日本の参加者の技術はとてもすばらしく、努力があなた達をここまで成長させてきたのだいう事を確信しています。しかし、どんなに技術があっても若いダンサーたちはまだ骨が成長段階にあるということを忘れてはいけません。11 歳未満の子供たちの骨の成長にとってトウシューズは危険なものという事を忘れてはいけません。」

 ロイヤルバレエスクールの校長先生は力強く、参加者に語り掛けていた。

 凜はもうその対象の年齢ではなかったけれど、校長先生の熱い語り口調に引き込まれていたし、こうやって参加者の技術だけではなく、成長にまで気を使ってくれる先生って素晴らしいなと感じていた。

「将来先生になった時にはこの思いを大事にしなくっちゃ!」

 凜は自分のキャリアを築いた後に先生になる道を夢見ていた。ロイヤルバレエスクールの校長先生の話を聞きながら空想を膨らませながら、

「自分の夢を掴み取るのは自分自身!待っていても向こうからはやって来てはくれない。掴みにいかなくちゃ!そう、私が掴みに行くの!」

 目の前にある現実や自分の未来に胸をワクワクさせていた。

 講話が終わり、表彰式までの間にナナ先生とコンビニで買った軽い夕食を済ませると、出場者達の集合場所である袖へと向かった。

 幕が上がる前、全員がきちんと部門毎に並び、列をなす。そこに前回同様、今回もワークショップでコンテを指導してくれたボンバーヘッドのキャサリン先生が陽気なパフォーマンスで皆を和ませた。

幕が下りた状態の舞台上ではそのキャサリン先生の指示の下、

「ウ~!!!!!」と唸るような低い声と共に全員で床を踏み鳴らして、最後に大きな声で「ワー!!」と叫ぶのを繰り返した。参加者たちは最初こそ、それぞれ緊張した面持ちだったけれど、次第に知らない者同士が顔を見合わせ思わず笑いあった。

 それから程なく盛大なバックミュージックと共にゆっくりと幕が上がり、客席から歓声と共に拍手が沸き上がった。舞台からナナ先生を探そうと思ったけど、暗い客席の中を探すのは困難だった。威風堂々の曲と共に鳴り止まない拍手の中、前列の参加者から順々に客席へと降りていく。心の中で凜は、

「もう一度、この舞台に上がりたいな。この後名前を呼ばれたら… 」

 そう思いながら、前の人について客席に着席した。

 例年通りの滞りのないアップテンポの進行がキャサリン先生によって行われ、プリコンペティティブ部門に続いてジュニア部門が呼ばれ始めた。最初はコンテンポラリーの順位発表。そして、ジュニアのTop12 が発表された。凜は緊張で心臓が飛び出してしまうのではないかと言うくらい鼓動が早くなるのを感じたし、もしかしたらこの音、隣の人に聞こえてるかもしれないと思うと恥ずかしくもなってきた。「うわぁ、どうしよう。って、どうしようも、出来ないんだけど… あああ!」