心の切り替えはしたもののやっぱり、決勝進出発表までの2時間が永遠のように感じられたし、だいたいこの待ち時間自体が無意味なように思えた。プチフルールの子たちが数人、外で待っているのは分かってはいたけれど、会いに行ける気分には到底ならなかった。
「決勝に行けなかったら、どうしよう。きっと行けない… 」思いが込み上げてきて再び涙が押し寄せてきた。
その時ちょうどナナ先生が戻って来た。
「私、今日はもう帰るから、結果を教えてね。きっと行けるから!笑顔で、また明日リベンジね!あ、後、足今日はゆっくりさせて痛みを取るようにしてね!」
「え?足?」悔しさで今朝の足の痛みはもうすでにどこかに飛んでいっていた。
「先生は本当に決勝行けるなんて信じてるの?」
笑顔で去って行った先生に軽く会釈をしながら凜はそう思った。
片付けをしたり、メイクを落としている間に時間はなんとなく過ぎて行った。そして、いよいよ決勝進出発表の時間になって凜は重い腰を上げ、ママに連れられるようにして2階のロビーへと向かった。
周りにはすでに他のお教室の出場者たちが何も張られていない掲示板を取り囲んでいた。
ワクワク感を抑えきれず、はしゃいでいる子、悲壮感漂う子、冷静に掲示板を見つめる子など、様々な様子が見て取れた。凜はママと二人、賑やかな場所からは離れて掲示板が見える向かい側の壁前に立って、その瞬間を待っていた。
その時、奥の方から大きな稿判用紙を持った女の人が現れた。出場者たちはワーッと一声上げるとその稿判
用紙に釘付けとなった。
女の人が丸めていた紙を広げてテープで張り付け始めた瞬間から悲鳴とも歓声ともいえぬ声が辺りに響き渡り始めた。
凜はその様子をしばらく外から眺めていた。掲示板を取り囲んだ輪が次第に崩れていくのを見計らって大きく息を吸ってノロノロと目の前の掲示板に近づいて行った。
「25 番、25 番」凜は何度も心の中で呟いた。
その瞬間、隣にいたママが「あった!」
不意を打たれた凜は自分でも確認したくて目を凝らした。
1.2.8.10.12.13.14.20.22.25.26…….
確かに凜の番号があった。
ダメだと思ってた凜の目からはさっきとは違う涙が頬を伝った。
ママが慌てたように
「先生にLine しなくちゃ!」と叫んだ。
あ、そうだ。ナナ先生に明日来てもらわないといけないんだった。