私のバレエ人生を振り返ると、バレエシャンブルウエストに所属していた頃のことは、今でも大切な思い出として心に残っています。
もちろん、楽しいことばかりではありませんでした。
むしろ、当時の生活は決して余裕のあるものではありませんでした。
プロのバレエダンサーとして舞台に立つことは、華やかに見えるかもしれません。
でも、その舞台の裏側には、厳しいレッスンやリハーサル、怪我との向き合い、そして生活そのものの大変さもありました。
当時は、お金にも余裕がありませんでした。
新しい服を買うこともトウシューズを買うことも大変でした。
友人が普通に洋服を買ったり、食事をしたり、旅行をしたりしているのを見て、
「私もこんなふうに生活できたらいいのに」
と羨ましく思ったこともあります。
当時は、それが少し苦しく感じることもありました。
バレエを続けるために、何かを諦める。
欲しいものがあっても我慢する。
踊るために生活を合わせる。
ときには、
「どうして私はこんなに大変な生活をしているんだろう」
と思うこともありました。
でも、今振り返ると、その頃のことを後悔していません。
むしろ、
「あの経験があったから、今の私がある」
と心から思います。
そしてプロのバレエ団にいたからこそ経験できたことがあります。
それは、生のオーケストラの演奏で踊るということ。
舞台の上で音楽が生まれ、その音楽と一緒に身体を動かしていく。
あの空間は、今思い返しても特別なものでした。
そして、一流の舞台スタッフの方々がつくり上げる舞台。
照明
舞台装置
衣裳
音響
さまざまな専門家が、それぞれの仕事を通して一つの舞台をつくっていく。
ダンサーは、その中の一人として舞台に立ちます。
今振り返ると、本当に貴重な経験だったと思います。
これは、発表会とはまた違うものです。
もちろん、発表会にも発表会だからこその素晴らしさがあります。
生徒たちが一生懸命練習して、舞台に立つ。
その成長を見ることができる。
それは、私にとってもとても嬉しいことです。
でも、プロの舞台には、また別の緊張感と責任があります。
多くの専門家が関わり、長い時間をかけて一つの作品をつくり上げていく。
その舞台にダンサーとして立てたことは、私の人生にとって、とても大きな財産になっています。
当時は、自分がどれだけ恵まれた環境にいるのか、十分に理解できていなかったかもしれません。
毎日のレッスン。
厳しいリハーサル。
自分の身体と向き合う日々。
思うように踊れない日。
怪我をすること。
役をいただくことの責任。
いろいろなことがありました。
でも、その一つひとつが、今の私の土台になっています。身体を使うことだけでなく、
時間を守ること。
人と協力すること。
自分の役割を果たすこと。
舞台をつくるために、たくさんの人が動いていることを知ること。
そして、どんな状況でも自分自身を整えて舞台に立つこと。
バレエ団時代に経験したことは、今、私が人にバレエを教える上でも大きく影響しています。
そして、もう一つ、私にとって大きな財産があります。
それは、バレエ団時代に出会った仲間たちです。
今でも交流が続いています。
毎日のように会っていた頃とは違い、今では、それぞれの生活があります。
それでも、久しぶりに会うと、不思議なくらい自然に話ができます。
同じ時代に、同じ場所で、同じようにバレエと向き合ってきた。
厳しいレッスンを一緒に受けて、舞台を一緒につくり、同じように悩み、笑い、苦しみ、喜んできた。
そういう経験を共有した仲間だからこそ、言葉にしなくても分かり合える部分があるのかもしれません。
何年ぶりに会っても、
「あの頃は大変だったよね」
と笑い合える。
私たちにしか分からないたくさんの思い出があります。
それは、今の私にとって、とても大切な宝物です。



