バリに暮らしはじめて5ヵ月程たった頃、田舎のおじいちゃんが亡くなりました。はじめてのお葬式。はじめての田舎での長いお泊まり…。不安がつのります。



バリには日本のようないわゆる葬儀屋というのがなくて、全て自分達で一から作り上げます。近所の人達が次々とやってきて各自、作業を行います。この時親族は作業がスムーズに行えるように必要な材料を調達したりと、雑用係にてっします。ここでもやっぱり男性と女性の役割分担があります。



作業以外の時でも男性同士、女性同士と別れて固まる習慣があるので、私はどうしたらいいのか分からず、やっぱりアリさんの金魚のフンになっていました。何かと雑用で忙しいアリさんは出掛ける事も多く、そんな時は一人で部屋に閉じこもり、不安で泣いていました。



バリでは悪霊は人の死んだ臭いを嗅ぎ付けて夜中にやって来ると言われているので、悪霊を近づけさせない為にお葬式の日まで近所の男の人達が交代で家に来て、朝方近く迄遺体の側でバクチをして騒ぎます。アリさんも毎晩それに付き合います。なので私は一人で寝なければいけません…。



翌日、バリアンという祈祷師の所へ行きます。バリでは人が亡くなった時や産まれた時、儀式の時など必ずバリアンの所へ行って、亡くなった人達とコンタクトを取ります。祈祷師を通じて普通に話をします。あの世とこの世がとっても近いのが、バリヒンズーなんです。お葬式はあの世へ返る儀式なので、泣いている人もいません。



田舎での生活が3日目も過ぎると私もだんだんなれてきて、お供え物作りを手伝ってみようという気持ちにもなってゆきました。汚れていく自分にもなれてゆきました。



いよいよお葬式。はじめに遺体を親族全員で洗います。唯一デジカメを持っていた私に“写真を撮れ!“とジェスチャーした人がいたけれど、嫌なので無視して遠くから様子を見ていました。バリヒンズーには日本のお墓というのがないのですが、一応お墓と言われる場所があってそこへ運び、遺体を鉄板にのせてから小さいけど強力なバーナーで焼いていきます。そしてその様子を見ながら平気で食事をする人達…。このあと骨を海に流し再び家に戻って儀式をして、全てのお葬式の儀式が終了。ようやく私は家に帰れました。この時の経験が相当キツかったらしくこの月、私は生まれてはじめて生理が来ませんでした。