この記事はPudding Jan 3, 2014から持ってきた。
人間魚雷 回天 1955 新東宝
「昭和十九年 菊薫る秋」
ここは嵐部隊大津島基地
特攻兵器「回天」
酸素魚雷を改造した人間が操縦する
有人魚雷である。
彼らは少し前まで大学生だった
予備学生あがりの士官、
予科練あがりの少年の面影を残す下士官。
上官も予備学生あがり。
兵学校出の士官たちとは そりが合う
はずもなく、最後まで対立を残す。
学生側から見れば彼らは野蛮で無学。
兵学校出(本ちゃん)から見れば
彼らは娑婆っけがありすぎて、気合が
入っていない。 たった半年で将校に
なっているのが気に入らない。
どんな戦争映画にも出てくるテーマ。
自分は学生上がりの 予備学生としての
誇りを持って死のう。 祖国のために
いやもっと身近な人のために 故郷のために
死のう というレトリックで死ぬ準備をする。
以下は引用を取り混ぜて書きます。
兵を殴っている甲板士官に対して
「人間を人間として扱わないこと。
それがもし帝国海軍の伝統なら
タイヘンな誤りだと、学生あがりの
予備士官が言い残して出撃していったこと、
時々は思い出してくれ」と言う。
控え室に戻り、「従兵。俺のベッドにある本を持ってきてくれ」と命令する朝倉少尉。
しかし従兵の一人、田辺一水は朝倉少尉の本を
手にとって不思議そうな顔をする。
「どうした」「はい、出撃の日まで、よくこういう本をお読みになれると思いまして」。これには朝倉少尉の方がビックリです。
その本はドイツ語で書かれた
カントの純粋理性批判だったから・・。
「貴様はドイツ語が読めるのか」と
聞いた朝倉少尉に、田辺一水は
召集されるまで私立大学で教授を
していたことを打ちあけるのでした。
思わず丁寧な口調になって、
「あなたはどこの大学でした」と
聞いてみる朝倉少尉。
「はい、東京帝大であります」
「じゃ先輩だ。さっ、どうぞ座ってくださいよ」。
いきなり、打ち解ける朝倉少尉です。
田辺一水と久々に自由な雑談をする。
田辺一水は「貴方のような人は死ぬべきではない」
朝倉少尉は答えて「Es ist gut」 それで良いのです。
(カントの言葉を引用)
仲間を追って妓楼にあがった玉井少尉ですが、
どうも宴会の雰囲気に乗れません。
早稲田出身の村瀬少尉が、求められるままに、
色紙に「紺碧の空、紺碧の海」と早稲田の
応援歌をもじった辞世を書いたりしている
のも気に入らないようす。
さらに主計長のあてがってくれた
娼妓にも「バカ、お前には女としての誇りはないのか。俺は女というものは、もっと美しいものだと思っている」と、怒鳴りつけて泣かしたりして、まあ典型的なイヤな奴になっています。
艦上に整列した特攻隊員の4人を代表して、
関屋中尉が見送りの人たちに、
大声を張り上げます。
「慶應義塾大学経済学部出身、
海軍中尉関屋武雄ほか3名。
回天特別攻撃隊菊水隊として、
出発しまーす」。
陣之内大尉も「天晴れな娑婆っけだぞぉー」
と笑い返すのでした。
伊36潜は静々と出港していきます。
それが沖合い彼方に遠ざかるのを
見ている早智子。
まるで、見えない引力に引かれるように、
一歩、一歩と海に入っていきます。
腰、肩、そして頭。婚約者早智子はやがて、
海に消えていく。
伊36潜は、南洋にある、ビスマルク諸島の
アドミラルティ泊地を目指して一路進撃を続けます。
そこにいる米軍の艦艇を一隻でも二隻でも
沈めるために。
無電が入り、別の潜水艦で出撃した
陣之内大尉たちは、回天に乗り込むことも
かなわず潜水艦ごと撃沈されたようです。
「あの人だけは何としても、空母か戦艦に突撃させてやりたかったよ」と残念がるみんなですが、
人のことを嘆いている場合じゃなくなってきました。
伊36潜は敵輸送船を魚雷で撃沈したものの、
護衛駆逐艦に追い回され、今にも爆雷でやられそうです。
思わず艦長(伊沢一郎)に、「艦長、私をやらせてください」と頼む関屋中尉。しかし、艦長は回天を駆逐艦ごときに使えないと、ダメ出しをするのです。 爆雷攻撃は続きます。
回天を載せているために深度をとれない伊36潜は、
このままでは海底の藻屑になるしかありません。
「関屋中尉、一号艇回天戦用意。
搭乗員乗艇っ」と命令を出す艦長。
ハチマキをしめて回天に乗り込んだ関屋中尉。ハッチをしめて、連絡用の受話器をとります。「発進用意」「発進用意よし」「用意。発進」。ザザッ。潜水艦と回天をつないでいた電話線が切れるノイズがして、今や、関屋中尉は完全に一人になりました。息を潜めて結果を待つ潜艦長たち。ズズーン。どうやら、関屋中尉の回天は駆逐艦を葬ったようです。
「潜航やめ。浮上。メインタンクブロー」。
厳しい警戒網を潜り抜け、どうにか伊36潜はアドミラルティ泊地を目前とする海域に達しました。 そこに司令部からの帰投命令が入ったのです。 緊張の極みにあった朝倉少尉たちは、突然の展開にグッタリ。「村瀬、貴様はこんな気持ちを二度までも耐えてきたのか」と朝倉少尉が焦燥した表情で言えば、玉井少尉は早智子の写真を見たりしています。もちろん、玉井少尉は、早智子が入水したことを知る由もありません。
今回の出撃では回天戦はない。命が少しだけ延びたと気が抜けている3人。そこに、大量のスクリュー音が聞こえてきました。 米艦隊が迫地を出撃したようです。警戒厳重な泊地ではなく、外海に出てくる最中であれば、まさに回天戦にはうってつけです。「昭和十九年十二月十二日。伊号三十六潜水艦、会敵の機会に接し、艦長は今はあえて諸君に行けと命ずる」「はいっ」「回天戦用意っ」。
準備を整え、回天に乗り込む朝倉少尉、
玉井少尉、そして村瀬少尉。
「計器整合」「敵速18ノット」「よーい、発進」。
ザザッ。人間界と自分をわずかにつなぎとめていた、電話線が切れるノイズと共に、3隻の回天は発進します。
しかし朝倉少尉の回天は、いきなりに悲運に。
爆雷攻撃でどこかがゆるんだのか、
海水が侵入、回天は海に着底しました。
一方、玉井少尉の回天は空母に、そして村瀬少尉の回天は見事戦艦に突入。敵は轟沈です。
「これより帰途につく」と伊36潜は、危険な海を再び日本目指して航海していきます、海底に突き刺さった朝倉少尉の回天を残して。水位を増す回天の中で腕組みをしていた朝倉少尉は、短刀を出し、特眼鏡に、なにやら刻みはじめました。「十九年十二月十二日 一五三〇 我未ダ生存セリ」。
予備校同期から直接本人から聞いた話。
京大で哲学を専攻していた上田正昭教授
回天搭乗員の訓練を受け出撃寸前に終戦。
精神的に緊張がみなぎる 哲学する環境に
なるのかも知れない。
