11時からの最後のステージが終わった。
もう午前0時近く。

二組の夫婦は、それぞれ心地よい気分で

家路についた。



10月の最後の金曜日、雪絵は

久しぶりに銀座に出た。


万年筆のカートリッジと墨を買いに

行きつけの丹青堂にやってきた。


高校時代 選択科目で書道に親しんで以来、

我流とは言え暇暇に好きな歌人の

歌を和綴じの句帳に書き写したり、

また彼女の短歌も認めている。


佳彦は彼女の歌を見て 女子高生を引きずっているけど、優しさに溢れていて、

文字が流麗だと褒めてくれている。 

夫に愛され、自分は世界にひとつしかない

歌集を編んでいることだけで、

幸福を感じていた。


結婚して26年、夫婦には子供はいない。

友達夫婦の典型で月に2-3度は

外で待ち合わせて恋人時代に戻る時間が

今でも一番幸せな時間である。



丹青堂の女店員と立ち話しているところへ

偶然 波平がやってきた。


(やっと というのか 無理やり

  波平と雪絵が二度目の出会いをする)


    ああ しんど でも楽しみ


    モデルに恋をするのは作者の自由