1週間後。
4人は藍羅に呼ばれて藍羅の家に向かう。
岬は藍羅の家の近くに住んでいるらしかったので、問題なく藍羅の家につけたようである。
楽器も持って来いというお達しだったので、陸人はギターを持って道を歩く羽目になった。
「よう陸人!」
後ろから元気な千種の声が聞こえてくる。
今日は親に近くまで送ってもらったらしく、疲れたような表情はない。
そんな千種の呼びかけに「おう」とだけ答えて並んで歩く。
「やっと活動できるな…」
「ああ、岬もいい子そうだしな」
「なんだその言い方は…!まさか!陸人はロリコン…!?」
「んなわけねえだろ!どうしてそうなるんだ!」
「流石陸人!俺たちに出来ないことを平然とやってのける!そこに痺れるっ!あこがれるぅ!」
「まだ何もしてない上にそんなことで憧れんな馬鹿!」
ギャーギャーと騒ぎながら道を進んでいくと、交差点で藍羅と岬に会った。
「あれ?どうしたんだ?」
「これから行くとこだったんだが…」
「あんた達が遅いから、道中で拾ってそのまま目的地に行くことにしたのよ」
「「目的地?」」
2人そろって疑問符をあげる。
そんな様子が面白かったのか、岬は少し笑って言った。
「【YOMEHA?】に行って練習させてもらうんですよ」
「そう。スタジオみたいなのを貸してもらってね。もちろん出費は陸人の貯金よ?」
「…悪魔かお前は」
だからお金もありったけもってこいっていってたのか…と納得してしまう。
そんなこんだで4人は目的地である【YOMEHA?】に到着する。
スタジオを貸してもらって、それぞれチューニングを始める。
「そういえば岬ってドラム歴どれくらいなん?」
ふと気になった陸人はギターのチューニングをしながら岬に尋ねる。
「はい、私は8年ほどやってます」
「…は?」
「…長いな…8歳の時からやってる…だと…!?」
「両親がもともとバンドマンで、今も活動を続けてるんです」
「なるほど、それに影響されたってわけね」
「へえ…ちょっと見せてもらっていいか?」
「はい!」
元気よくさわやかな返事をしたあと、岬はバッグからスティックを取り出し借り物のドラムを試すように叩く。
しばらく微調整をしたあと、3人のほうを見て「じゃあ、始めますね」と告げる。
1.2.3.4と、自分でリズムを刻んでいく。
テンポよくスネアを叩き、ドラム特有のスティックパフォーマンスも忘れない。
出せる音が明快で単純、だがこなすことが出来れば何よりもバンドに大きな影響力をもつドラム。
そんな難しい楽器を、岬は簡単そうに奏でていた。
すべてを弾き終えた岬は、「どうですか?」と3人の先輩に感想を求める。
「すごい…」と驚きのあまり言葉が出ない藍羅に対し、演奏途中からなぜか静かな2人は何も答えない。
「…何やってんの?」
「「…」」
「ねえ!何やってんの!?」
「「…」」
「…私、何かダメだったんでしょうか?」
「ううん、そんなことないよ!すごかった!」
「「…」」
「なんなのよ!ぶっとばすわよ!?」
「…し」
「はあ?」
「足…」
「だから足がなんなのよ!」
流石に藍羅にぶっ飛ばされたんじゃ敵わない。
そう判断した陸人は感想を頑張って話す。
「…だから!岬の足が開きすぎて…その…見えてんだよ!」
現在岬は短いスカートを履いている。
ドラムに隠されるとは言っても、このドラムは透明なタイプのもので完全に向こう側見えている。
そんな状況で激しいスティックパフォーマンスなどしたら…
今初めて気付いたらしい岬は、恥ずかしそうに部屋の隅のほうへと歩いていく。
「…」
「大丈夫、あいつらは生かしておかないから」
「しょ、正直に言ったのに結局ボこられる!」
結果、2人は女性用服売り場にズボンを買いに行くという辱めを受けてから練習を行うことになった。
幸い岬は立ち直り、後まで話を引きずるなんてことにはならなかったので特に問題はなく練習を続けることが出来た。
途中ふざけながらも、1週間で予習してきた内容、唯一の楽器のベテランである岬の指導、そして3人の(変なところで)天才的な音楽センスを糧に、何とかこの1日で最低限楽器の扱いはできるようになった。
・つづく・