Q256)
単純未来のwillは、未来を指す場合でも、実現確率(可能性)によって、may など他の助動詞と使い分けられているかと思います。will > would > can > could > may のような順かと思います。
(https://www.voanews.com/MediaAssets2/classroom/article_media/efl7_teacher.pdf)
先日の授業でこの話をした所、生徒と以下の会話がありました。
生徒「probablyやperhapsのように副詞にも確率を示すものがありますよね」
私「そうだね 未来の場合、will absolutely のようにして、確実性を高めて使うこともあるね」
生徒「willは高い確率を示すとさっき習いましたけど、可能性が高い副詞だけ使えるんですか」
(私の心中)「いや、will perhapsとかあるな....」
私はこの時点で疑問が出ました。
疑問:will は可能性の低い副詞と共起できるのか。何らかの条件があるのか。例えば、指す可能性が近い場合のみ等
これをインターネット上で調べると以下の論文が出てきました。
「認識の法助動詞、その意味するもの -- can, may, must, will を中心として」(林 高宣)*>
(https://ir.lib.shimane-.ac.jp/ja/list/shimane_creators/H/fd282e5bdafdf383510e1447f4e515cf/item/6075)
Sawada によれば、<will は未来の will(futurate will)と、推論の will(inferential will)に分類されるが、事実性条件に従うのは後者である。
(39a) に含まれている未来の will は、(39b)のように、低い可能性を表わす副詞と共起できる。
(39) a. He will be sick tomorrow.
b. He will possibly/perhaps be sick tomorrow.
(40) a. He will be sick now.
b. He will *?possibly/*?perhaps be sick now.
引用ここまで
(事実性条件とは、命題内容は真である可能性が高い、もしくは真であるという条件のようです。)
この論文の内容をまとめます。
・未来の will は事実性条件を持たず、推論の will は事実性条件を持つ。
・未来の will は可能性の低い副詞とも使える。
このようになります。
しかし疑問が湧きます。
今回の質問です。
疑問1:単独の will の場合は、どのようになるのか。ただ未来を表すだけなのか、それとも may 等との使い分けから、高い可能性を持つのか。
疑問2: 副詞と共起した will は、will + 副詞のとき、命題の可能性は、副詞の持つニュアンスに依存するのか。will perhapsなら、可能性は perhaps の持つニュアンスである 「もしかしたら」 (30%程度)になるということか。
今回も宜しくお願いします。
A) 実は「単純未来」という言葉が文献によって違っているため混乱が起きやすいですね。
ジーニアス英和辞典第六版のwillでは、今回の問題に関連する「単純未来のwill do」は次の3通りになっています。(「一般的な真理」の用法や「能力」は除きます)
<文献1>
4a [S will do] …する、…になる(時間の経過による不可避の変化を表す)
I will be eighteen years old next year.
4b [S will do] きっと…だろう(話し手の判断を含む用法)
The ambulance will be here in a minute.
5a [現在の推量] [S will do]…だろう
[語法](1) 動詞は通例状態動詞。
(2) 一般にcould<might≦ may< can(否定文・疑問文で)< should< ought to <would< will< mustの順に確信度は概ね強くなる。
He will be at home now.(= It is probable that he is at home now.)
That will be john-- he said he was going to call. (That must be…とも言う)
[語法](1)このwillは高い確実性を表すので、意味を弱めるためにI suppose, I expectなどがよく添えられる。
上記の3つ以外に「確信度については不明な」第4の単純未来の用法があるのでしょうかと柏野先生にお聞きしました。以下がその回答です。
<柏野1>
第4の用法はないと思います。ジーニアス英和の4aはpure future(話し手の判断を含まない)を表し、4bと5aは話し手の判断を表しています。前者のwillは単に未来であることを表すtense markerで、後者のwillは認識的な(epistemc)用法です。
「基本動詞辞典簡約版」(小西友七編)(大修館)のp.1436にはこう書かれていました。
<文献2> will Ⅰ 概説
現在では時制助動詞と法助動詞の2つの用法を持つ。未来の出来事は不確かで、単純な未来表現でも話し手の態度が入り込む余地があるため、実際には両者を明確には分けがたい場合も見られる。
時制助動詞としてのwillはいわゆる単純未来と呼ばれるもので、意志の関与しない未来の出来事を表すのに用いられる。法助動詞としてのwillの意味は大別して意志と予測性に分けられる。
この<文献2>「基本動詞辞典簡約版」で使われている「単純未来」は「pure future」の意味と解釈しましょう。
本稿ではジーニアス英和辞典の記述にそって考えていきます。よって、4aは「時制助動詞」でpure futureを表し、4bと5aは「法助動詞」の用法で、「話し手の判断を表す」と考えます。なお、この4bと5aは同じ用法として取り扱います。4bは未来への言及、5aは現在への言及という違いはあるがともに「確信度の高い予測」を表すからです。
それでは、4b [S will do] きっと…だろう(話し手の判断を含む用法)について次の文献を見ましょう。「ここがおかしい日本人の英文法Ⅰ」(T.D.ミントン著)(研究社)のp.11にこうあります。
<文献3> 3.未来を表す時制(その3)
・willが「その瞬間の意向」を表さない場合
(略)
Tom will go to bed early tonight.は何を表すのでしょうか?
トムが今晩早く寝ることをすでに決めていたり、予定していたり、手はずを整えていたりしていることを、もしあなたが知っていたら、次のように言わなければならないでしょう。
Tom is going to go to bed early tonight.
Tom is going to bed early tonight.
ということは、Tom will go to bed early tonight.とあえて言うときには、あなたはトムの決心・予定・手はずについては知らないことになります。実は、willを使うと、「トムは今晩早く寝るとあなたは思っている」という意味内容を聞き手に伝えることになるのです。換言すれば、予測です。これがおそらく、willの主要な用法でしょう。ここで注意しておかねばならないのは、この表現は、予測がはずれる可能性を認めていないということです。
・「予測」のwillを使うときの安全策
しかしながら、たいていの場合には、I thinkやI expectやprobablyなどの修飾語を使って、willの持つ断定の意味を和らげるほうが安全です。新聞記者が、The prime minister will resign next month.(首相は必ずや来月辞任する)とはふつうは書かない理由もそこにあります。そのような自信たっぷりの予測が間違っていれば恥をかくことになるからです。Probablyを付け加えるだけで明らかにこの文は安全なものになります。ちなみに、もし新聞記者が、The prime minister is going to resign next month.と書けば、それは事態がそうなるという予測ではなくて、(極秘情報か何かで)その新聞記者が実際に知った事実を読者に告げていることになります。
さて、最初の例文に戻りましょう。Tom will go to bed early tonight.という文は自然ではありません。次の会話を見てください。
A: Shall we ask Tom to come along with us tonight?
B: No. He'll go to bed early tonight.
Bの返答の仕方はそもそも不可能なのです。一体どうしてBは、トムが今晩早く寝ることに対してこれほどの確信を持ち得るのでしょうか?トムが早く寝るつもりであることを知っているなら、
No. He's going (to go) to bed early tonight.
と言わなければならないはずですよね。逆にはっきりしたことを知らないのであれば、当然次のような修飾語がつくはずです。
No. He'll probably go to bed early tonight: he usually does on Sundays.
この<文献3>から、「予測のwillは予測がはずれる可能性を認めていない。そのため、実際に使うときはI thinkやI expectやprobablyなどを使って、willの持つ断定の意味を和らげる」ことがわかりました。それで、willと副詞が共起することが多いのですね。では、どんな副詞が使えるのでしょうか?
ジーニアス英和辞典第6版のperhapsにこうあります。
<文献4>
[語法]
確信の度合い
同種類の副詞を話し手の確信度によっておおまかに分類すると以下のようになる。
a 30%以下:possibly
b 30%以上:perhaps
c 35-50%:maybe
d 65%以上:likely
e 70%以上:probably, presumably
f 80%以上:doubtless
g 90%以上:inevitably, necessarily, unquestionably, undoubtedly
h 95%以上:definitely, certainly
そこで、これらの法副詞がwillと共起するかどうか調べてみました。
<データ1>
a 30%以下:possibly 大ジーニアス/英和活用/ジーニアス和英
b 30%以上:perhaps 大ジーニアス/ランダム/オーレックス英和
c 35-50%:maybe 大ジーニアス/ランダム/ウイズダム英和
d 65%以上:likely 大ジーニアス/ランダム/ウイズダム英和/新英和
e 70%以上:probably 大ジーニアス/ランダム/新英和
f 80%以上:doubtless ランダム/オーレックス英和/英和活用
g 90%以上:inevitably ランダム/オーレックス英和/新英和
h 95%以上:certainly 大ジーニアス/ウイズダム英和/オーレックス英和
掲載されている辞書の数が3つあったらそれ以上は見ていませんので、このデータは完璧なものではありませんが、ざっとすべての法副詞がwillと共起することはわかりますね。
ところが、ここで問題が生じます。本来willは「「常識」(common sense)や「経験」(experience)に基づいて、すなわち「以前からの知識(previous knowledge)」に基づいて、「確信をもって予測する」(I confidently predict that…)」でした。(ここは、「英語語法詳解」(柏野健次著)(三省堂)のp.32からの引用です)
しかし、possiblyは「30%以下の確信度」を表すので、矛盾するように思えます。
このことは、次の文献「例解現代英文法事典」(安井稔著)(大修館書店)のp.205にも書かれています。
<文献5>
84. Possibly, it may survive.
標記の文のitはプールから救い出されたコウモリである。一般に法性(modality)の表現と考えられているpossiblyとmayが1つの文にあって協調関係(harmony)をつくっている。(1)も同様である。
(1) Possibly he will recover.
問題は法副詞(modal adverb)と法助動詞(modal auxiliary)の共起関係である。
問題とする副詞はcertainly, probably, possiblyの3つである。
(4) a. The toy may {*certainly/ *probably/ possibly} be dangerous.
b. The toy must {certainly/ *probably/ * possibly} be dangerous.
mayはpossiblyと、mustはcertainlyと協調関係をつくることがわかる。こういう場合の助動詞と副詞との意味関係が問題になるが、ここではとりあえず、確率度を表す副詞が付加されたことで法助動詞の意味はそれだけ限定されると考えておく。
(5) a. The toy can { certainly/ ?*probably/ possibly } be dangerous.
b. The toy will{ certainly/ probably/ possibly } be dangerous.
canはprobablyとの折り合いが悪いが、willの方はいずれの副詞とも協調的である。probablyは、canやすでにみたとおりmayやmustとも折り合いが悪い。そうなると、probablyと共起できるのはwillだけということになり、このことがwillを特徴づけることにもなるであろう。
(略)
可能性を表すcanはposssiblyのみならず、certainlyとも共起できる。同じように可能性を表すmayがcertainlyと共起することはふつうではないだけに、canとcertainlyとが共起できるという事実は興味深い。この事実の説明が必要だが、ここではcanが表すのは理論上の可能性(theoretical possibility)であるというLeechの指摘が重要なかかわりをもつことを示唆するにとどめたい。また、一方のcertainlyについては、次例のcertainlyを強調語とみるGreenbaumの主張から有効な示唆を読み取ることができるであろう。
(7) They can certainly leave early.
この<文献5>を次の<文献6>と照らし合わせましょう。
<文献6>ジーニアス英和辞典第6版のmight
(2) 一般にcould<might≦ may< can(否定文・疑問文で)< should< ought to <would< will< mustの順に確信度は概ね強くなる。
<文献5>で、mayが「95%以上」のcertainlyや「70%以上」のprobablyと共起せず、「30%以下」のpossiblyと共起するのは、<文献6>で、mayは確信度が低いことと合致しています。
mustが「95%以上」のcertainlyと共起するが、「70%以上」のprobablyや、「30%以下」のpossiblyと共起しないのは、<文献6>で、mustは確信度が一番高いことと合致します。
canについては、canが表すのは理論上の可能性(theoretical possiblity)であるのでここではふれません。
さて、willは「95%以上」のcertainly、「70%以上」の probably、「30%以下」の possiblyのどれとも共起しています。<文献6>によると、willはmustに次いで確信度が高い。そうであるならば、certainlyやprobablyと共起するのはわかるが、なぜpossiblyと共起するのでしょうか。
質問者の方の引用部分をここに書きます。
Sawada によれば、will は未来の will(futurate will)と、推論の will(inferential will)に分類されるが、事実性条件に従うのは後者である。
(39a) に含まれている未来の will は、(39b)のように、低い可能性を表わす副詞と共起できる。
(39) a. He will be sick tomorrow.
b. He will possibly/perhaps be sick tomorrow.
(40) a. He will be sick now.
b. He will *?possibly/*?perhaps be sick now.
この問題について柏野先生にお聞きしました。
<柏野2>(4
0)(40)の容認性に対するLance Ecclesのコメントです。の容認性に対するLance Eccles 氏のコメントです。
(40) He will possibly/ perhaps be sick now.
Yes. Both are possible.
If "perhaps" is used, it is more common to place it at the beginning:
(40a) Perhaps he'll be sick now.
"Perhaps" and "maybe" usually go first in the sentence.(以上Lance)
私はいま、possibly, certainlyなどと共起するwillは上で見た「pure futureを表すwill」と考えています。
1つの文の中に法的要素は1つだけなので、それは法副詞が担っていてwillは客観化されていると思います。
例えば、*If he’ll be better tomorrow, he’ll go to the show.とは言えないのはこのためです。[cf. 拙著『英語語法詳解』p .93]
この根拠になっているのは、10年前にRodney Huddleston氏からいただいた以下のメールです。(下線は柏野)
In the following example, “maybe” is used with “will” although “maybe” expresses low possibility while “will” expresses high possibility. I do not know why?
(1) A: How long do you think this rain is going to continue?
B: Maybe it will last forever.(以上柏野)
I wouldn't say that 'will' expresses "high possibility". Take (2):
(2) They will be home by the end of the week.
This expresses firm prediction. If they aren't home by the end of the week,
then what I said in uttering (2) was false. It's just like (3) in this respect:
(3) They are home now.
If they are not home now, then (3) is false.
However, both (2) and (3) can be qualified by means of modal adjuncts. And these may be of any strength:(a) 'definitely', 'certainly'; (b) 'probably', 'surely'; (c) 'possibly', 'perhaps', 'maybe'.(以上 Rodney)
ただ、Lance氏はこの考え方には慎重なようです。
I think that (1) is good.
(1) Tom will possibly/certainly come to the reunion tomorrow.
It seems to me that “will” above expresses “pure future”.
It does not indicate the speaker’s judgement (i.e. something like “high possibility”).
The speaker’s judgement is shown by “possibly” or “certainly”.
Am I right?(以上柏野)
I think you are right.
But it is hard to separate pure future from the conjectural meaning of "possibly/ certainly”.
(以上Lance)
<文献5>では、「確率度を表す副詞が付加されたことで法助動詞の意味はそれだけ限定されると考えておく」とありましたが、柏野先生は「「possibly, certainlyなどと共起するwillは上で見た「pure futureを表すwill」と考えています。1つの文の中に法的要素は1つだけなので、それは法副詞が担っていてwillは客観化されていると思います。」とおっしゃっています。つまり、will possiblyなどとなったとき、このwillは「法助動詞」の役割から「時制助動詞」の役割になっているということのようです。
ここで質問に戻りましょう。
疑問1:単独の will の場合は、どのようになるのか。ただ未来を表すだけなのか、それとも may 等との使い分けから、高い可能性を持つのか。
(1)「単独のwill」は、ジーニアス英和辞典第6版の4a [S will do] …する、…になる(時間の経過による不可避の変化を表す)の場合は、pure futureを表す用法で、「可能性」については言及していません。
(2) 「単独のwill」は、4b [S will do] きっと…だろう(話し手の判断を含む用法)の場合と、5a [現在の推量] [S will do]…だろう の場合は、「高い可能性」を持つ。
ただし、(1)(2)どちらなのか判別できないことがあります。
疑問2: 副詞と共起した will は、will + 副詞のとき、命題の可能性は、副詞の持つニュアンスに依存するのか。will perhapsなら、可能性は perhaps の持つニュアンスである 「もしかしたら」 (30%程度)になるということか。
その通りです。これは法副詞が「可能性」を表すので、will perhapsは30%以上になりますね。willはpure futureを表すだけになります。
以上です。
なお、ご質問がある方は、以下のルールを踏まえてお願いします。
質問のルールです。
1.対象として高校の英語教師の方と予備校・塾の英語講師の方を前提としています。
よって受験生の方の質問はお断りします。
2.授業の教え方という前提から、問題文は出典を明記し、答えやマニュアルをそのまま写し、ご自分の考えを書いてください。
「次の文の訳をお願いします」「次の問題の答えをお願いします」といった受験生のような質問には一切お答えしません。
なお、質問は文法語法の問題と英文和訳に限らせていただきます。
言うまでもありませんが、「どうしたら下位レベルの授業がうまく行くのでしょう」といった漠然とした質問には一切お答えできません。
3.質問は下記のメルアドにお送りください。題名(例 need doingについて)と氏名と職業を書いてください。
kawashimayuuzou@yahoo.co.jp
答えはブログに書きますが、その際質問者の方の実名などは一切公表しません。
それでは質問をお待ちします。