Q35)前回(Q34)、次の2文は同じ意味だとの回答を受けましたが、それならなぜ(a)のように言うのでしょう?(b)の方が簡潔で短いのですから、わざわざ(a)のように言う必要が感じられません。

(a) The question to be discussed at today's meeting is whether we should postpone the plan till next month.

(b)The question to discuss at today's meeting is whether we should postpone the plan till next month.



A)「講座・学校英文法の基礎 第5巻動詞(Ⅱ)」(大江三郎著)(研究社)の189ページにこうあります。



(69)のような、補うto不定詞が受動態の場合は概して一般論で、行為主体が一般的であるのに対し、(70)のような目的語の関係にある名詞句を補う能動態のto不定詞句ははっきりした行為主体をもっているのがふつうである。

(69)a. The room was losing shape; it was dark and getting darker and there was nothing to be done about it;...

(70)d. Their grandmother would not let the children throw the box and the paper napkins out the window. When there was nothing else to do they played a game.



たしかに、(69)a.では、行為主体は明示されていないし、(70)d.では、行為主体は主節の主語であるtheyと明示されている。しかし、次の文はどうでしょう?


There was nothing to be done, so they fastened their seat belts and sat tight as the Fair Child make a rough landing at Mendoza.(何もすることがなかったので、彼らは安全ベルトを締め、フェアチャイルド機がメンドサ空港に荒々しく着陸したときは身を固くしてすわっていた)


この文の行為主体は明らかに文の主語のtheyですね。そこで次のように整理しましょう。



<仮説1>to不定詞の形容詞用法で、to不定詞が受動態である場合、to不定詞の行為主体は次の三通りある。

①一般の人

The snow melted at last and as soon as the roads were passable, there were a great many things to be done.

by usと考える)

②文全体または主節の主語

I wanted to take a taxi, but there wasn't one to be found.

by meと考える)

③文脈で明らかにわかる人

The letters to be answered immediately are usually put in a special folder.

by meと考える)



また、「英語語法辞典簡約版」(大修館)の297ページにこうあります。


This is too hot to eat.

This is too hot to be eaten.

受動態の不定詞の構文(後者)は合理的・意識的構文と言えましょう。これに反して能動態の構文(前者)は熟語的・無意識的構文と言えましょう。この2つの構文が可能な文は、実際には意味が同じと考えてよいと思います。

同様に、There was no time to lose.は不定詞の主語が表れていないため、There was no time to be lost.の構文を生じたのですが、意味は同じです。ところが、There was の代わりにHe hadを用いればHe had no time to lose.となりますが、この場合は不定詞の主語が表されていますから、He had no time to be lost.という構文は生じません。



さらに、「基礎と完成・新英文法」(安藤貞雄著)(数研出版)の310ページに、こうあります。



259.不定詞の態

a)There's a lot of work to do[to be done].

b)I have work to do.

(×)I have work to be done.

a)では、to doto be doneのどちらも可能であるが、「行為者」を特に考えていてればto doの形を、「仕事」を特に考えているならば、to be doneが用いられる。②b)to be doneがだめなのは、「人」が主語として明示されているので、「人中心」の視点が定まってくるからである。



ここから、次のように言えると思います。

<仮説2> to不定詞の形容詞用法で、受動態を使う場合は、「行為を受けるもの」、たいていは「物」を中心に言う場合である。



これらをヒントに質問文の2文を見てみましょう。

(a) The question to be discussed at today's meeting is whether we should postpone the plan till next month.

(b)The question to discuss at today's meeting is whether we should postpone the plan till next month.



<仮説1>を基準にして考えると、(a)の行為主体は③のタイプで、あとに出てくるweになります。一方(b)の行為主体もあとに出てくるweです。つまり、(a)(b)も行為主体は同じであり、違いはないことになります。

<仮説2>の考え方によると、(a)は「問題中心」の視点であり、(b)は「人中心」の視点になります。どちらも文法的には可能ですが、The question to ... at today's meetingという書き出し部分に行為主体が書かれていないことを考えると、主語のquestionを中心にした、(a)の方が、頻度が高いように思われます。このことは、「学校英文法の基礎」の188ページに、「to不定詞句が補う名詞句がその不定詞句に対して主語の関係にあるものとして分析される場合」、として「to不定詞の形容詞用法で主格関係の場合」について以下のように書かれていることにも合致するのではないでしょうか。



the first/ last (one, etc.) to~という言い方が最も多い。

次のようにto不定詞句が受動態の場合も多い。



よって、質問者の方の考え方、「to不定詞が能動態でも受動態でも意味が同じなら能動態を使うはず」という考え方は、一理ありますが、(a)の方がむしろここでは頻度が高いと思います。



結論の傍証としてgoogleで検索しました。ただし、このgoogleの検索は注意が必要です。そこで私は「Google検索による英語語法学習・研究法」(衣笠忠司著)(開拓社)で推奨する方法を使っています。" ......... " site:eduを使うのです。詳しくは同書を読んでください。

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