3要素はあらゆる産業に当てはまる
ここまで話した内容は、香料メーカーに限った話ではありません。どの業界にでも当てはめて考えることができます。
「付加価値とコストの非対称性」について例を挙げると、例えば寿司屋で本当に儲かるネタはなにか。トロではありません。トロは仕入れは高いので、」高い値がつくだけです。
一方、サーモンは仕入れ値が非常に安い。だから寿司屋では、トロよりサーモンを握ったほうが、利益が大きくなるのです。
医者の世界でも同じことが言えます。医者は経済的に豊かなイメージがありますが、現実はかなり大変です。「非対称」にはなっていないからです。
それに比べて、実際に経済的に豊かなのは獣医でしょう。現在では、ペットはまるで人(家族)のように大事にされている。
けれども、獣医が仮に医療過誤でペットを死なせてしまっても、倫理的・道義的な点は別として、器物損壊罪という軽い罪にしかなりません。つまり、背負うべきリスク以上に、多額のお金を支払ってくれる人がいるのです。
ハリー・ウィンストンがダイヤモンドで装飾品を作っても、原材料に対する粗利益率は所詮40、50パーセントです。
それに対して、ティファニーは、最も安い金属である銀で装飾品を作るために粗利益率が70パーセントもある。にもかかわらず意味的価値を感じてくれるのです。
もちろん、ティファニーののブランドが30年後、50年後も輝きを保ち続けるかどうかは、誰にもわかりません。
ですが、10年前や20年前、さらに100年前からあるブランドを、親が、妻が、子供が、今喜んで使っているこれらが孫の代では変わっていることを予想するほうが難しいでしょう。
投資家に求められるのは、その輝きが損なわれる事情が発生しないかどうか、継続的にウォッチすることです。
ビジネスとは、非対称であるからこそ大きな利益が出る。この「ズレ」に注目することが、利益率が高い企業を見極める重要な点の一つです。
まとめると、高い付加価値については、単に「人の役に立つ」というレベルではなく、非対称などの構造的に儲けやすい要素があるかどうか。
参入障壁については、単に「わが社は○○が強い」というレベルでなく、ビジネスプロセスのそれぞれの段階で、他社に参入を思いと土間せるような参入障壁があるか。
さらに長期潮流については、今後不可逆的に起こっていく社会の変化は何か。
これらを一つ一つ見ていくことで、ビジネスモデルを見る目が養われます。
そして、分析を通じて得た知見を、ぜひ自身のビジネスに落とし込んでみてください。
例えば取引先に営業に行くときに、単に御用聞きに行くのと、その会社のビジネスモデルや競争環境を踏まえたうえで、どのような課題を抱えているのかの仮説を考えて行くのとでは、相手の反応は全く違ってくるでしょう。
つまり投資先企業を考えることで、ビジネスに対する解像度そのものが上がっていくのです。
これこそが、長期投資をビジネスパーソンが行う際に得られる、最も大きな副産物です。
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