轍の跡を辿る
期待に胸を湧く湧く膨らませる
儂の予感は当たり
其れは真に嬉しい事では或るのだが
此処はひとつ
思案のし処だった
ウマに牽かれた
三台の馬車の周りで今やっ
まさに
怒号を叫んで剣を交え様とする男達
此の現場を見ての推測は容易だが
さて問題は
儂の予想が外れて
加勢する相手を間違えたら
何うしようと云う事だ
彼等が
荷を強奪しに来た山賊などではなく
悪い貴族が強引に奪った年貢を
取り返そうと
勇気を奮い起こし覚悟を決めた
義の者達だとしたら何とする
って事だ
だが
何れにしろ長くは保たない
此処は思案六方している場合ではない
方や鎧と兜を身に着けてはいるが
数では劣勢だ
救うなら矢張り少数派か
否々少数派が正しいなんて誰が決めた
いやっそもそも
矢張り此処は静観すべきか
あっしには関係御座いませんと
だが儂の直感が働く
人相風体ともに悪い多勢派と
逃げずに闘う覚悟の少数派
其れは
彼等には守るべき物が在るからだ
「良しっ行けっBee」
儂も覚悟は決めた
前後を挟まれ防戦一方の
今にも堕ちそうなアイツ等を助けよう
「ハウハウハウッハウオオォーーーンッッ」
オスマン仕込みの
奇声を上げて突進する
儂を見た多勢派の一人に
手槍を投げ付け
向かって来る一人を薙ぎ払い
次いで返す剣で又一人斬り落とす
馬車を背にして
甲冑達の前に割り込んだ
建築用具の一種を改良した此の剣が
何時まで持つかは分からないが
今の儂には之しかない
左右に群がる山賊どもを蹴散らすBeeは
初陣とは思えない身のこなし
手綱を操らなくても
敵は判っていると許りに
馬車の周りを駆け回る
「助太刀っ」
ツルハシ剣を振るい乍ら
叫んだ儂の言葉を
理解した筈もない甲冑隊だが
意志は伝わった様だ
其の証に
儂の背に剣は振られなかった
「もう一押しやっ」
まだ堕ちたのは数人だが
盗賊どもの戦意は落ち落伍者が出始めた
奪うのが難しいと覚れば
命が惜しく為るのも当然だ
遂に背を向けて
撤退する彼等の脚も早かった
「逃げる者は追うな」
とでも
誰かが言ったのか
改めて馬車を囲んで
守りを固める甲冑隊は
矢張り命令に忠実な兵士だった
投げ槍でスケた一人がずるずると落馬した
甲冑達が彼を囲んで
声を掛け抱き抱えはするが
何を為すでもない彼等を押し退け
腕から流れる血を洗い
シャカン婆さんの泥薬を塗っる儂を見て
慌てて止め様とする一人に
我が胸を見せ
大丈夫と言うも
これまた理解したのかは判らない
儂の傷痕を見せて之で治ると
示したつもりだが
何れだけ伝わっている事やら
ただ彼等に治療の術はないらしく
黙って儂等を囲んで様子を見ているのは
一応理解したものと受け止めよう
問答無用と
斬られる事もなさそうだ
治療は終えたと言う
儂の顔を見据えた一人が
他の甲冑達に命じて
彼を馬車の荷台に押し上げさせた
手槍を抜いてBeeに跨った儂に
話し掛けてきた一人に
「ワシの名はオズマ」と
paradisのコトバで言うが
矢張り伝わらない様だ
「やれやれ またいちからやり直しか」
呟く儂の肩を
叩いてくる甲冑達が
意外に若い者達だったのを知ったのは
大きな街に着いた後だった
そして
果たして
儂の選択が
如何なる結果を齎すかは
今は未だ誰にも分からない
我が名はオズマ
未知の世界を旅する者