「…あのぅ所長、ちょっと良いですか?」
「お なんじゃ」
「……所長の書かれた文章なんですが」
「うんっ で」
「なぜ句読点を入れないんですか?」
「わはははっ」
「いえ、文句がある訳ではないんですが」
「うんうんっ前から思ってたんやね」
「……はぁまぁ、そうですね」
「で 漸く言えた訳やね」
「はぁ、そうです」
「何で今まで言わんかったん」
「はぁ…そりゃぁまぁ…所長ですから」
「おぉそりゃ如何なぁ」
「はぁそれも分かっていたんですが」
「おかしいと思ったら言わなあかんでぇ
相手が誰で或ろうと」
「はい、それも分かっていたんですが」
「うんっまぁ良え 解らんでもないからね」
「ぁ…はいっですよね」
「わはははっ
長くなるかも知れんけど聞くか」
「はいっ是非」
「良し分かった じゃぁ昼飯し乍らやな」
「はいっ分かりました
えぇと、じゃぁ電話しますね」
「おぉ 何にする」
「ぁ…選んで良いですか」
「おぉ 君は何が良いんや」
「私は、吾妻庵の定食にしようかと」
「ふんふん じゃぁ儂も其れにするわ」
「はい、頼んどきます」
「で、所長…」
「おぉ句読点な」
儂はなぁ抑も句読点は
文章に慣れてない子供向きや考えてんねん
日本語には所謂る漢字と
平仮名とカタカナと有るやろ
其れにアルファベットも使うやろ
其れ等を美味く使い熟せば
句読点は必要ないと診ているんや
本来なら此の行替えも必要ないねん
ただ余りみっちり埋め尽くすと
読む気を失う人も出て来るみたいやから
少々とだけ妥協してんねん
「君は小説読むか」
「はい、所長ほどじゃ有りませんが」
「小説家の中にはな
頁の下半分が真っ白の人が居るやろ」
「ぁはい、いますね」
「儂は アレは原稿代稼ぎやと診てんねん」
「……」
「否々 勿論そう感じるってだけで
そうとは限らんけどな」
「はぁ…まぁそうですよね」
「確かに空白に意味の有るものも有る
そやけどな 殆度は矢張り如何っ
1時間で読み終わる様な作品はあかん
其れに会話だけ読み進めたら
内容が解る様なんもあかん
つまり儂の文章の発露は
其れ等のしょうもない小説への
アンチテーゼかも知れん」
「ははぁ………」
「葵さん、何の話」
「あっ泉さん、おかえりなさい」
