南を目指して旅立った儂
是もビジャフの誘導かも知れないし
毎晩続いた睡眠学習の成果かも知れないが
旅のイメージは出来上がった
準備は万端
農作業用のムンを〆て
焼き上げた肉は暫くは保つだろう
ただ残念乍ら
干し肉に仕上げる時間はなかった
但しブランに教えた作り方は
軈ては皆に広がる筈だ
彼等の作った農作物の内
幾つかの野菜も加えて改良した
新オスマンヌシチューは気に入って呉たし
後は彼等次第だ
旅立つ儂に
彼等が餞別をくれた
四本脚のコイツは
タントゥラよりは小型だが
足は速そうだ
さっそく名前を授けようと色々考えたが
矢張りBeeとしか浮かばず
二代目を襲名させよう
「悪くはないだろう」
但し四本脚な処以外は随分と違う
短毛のざらざら肌のタントゥラとは違い
白く長い毛は
陽射しを受けてキラキラと輝き
時に銀毛や半透明に映って
瑞々しく神々しい
脚も膝から下はスマートだし
顔は先細って鋭く
裂けた口には牙も有り
とても草食には見えないが
与えていないだけで雑食かも知れない
ブランの歴史が
猛々しい争いの時代を経て
今の穏やかな世に成った様に
家畜と成る以前は
彼も
広い草原を駆ける野性だった筈だから
ブランには武器はない
畑を耕す農具や建築用の工具は有っても
戦いを止めた彼等は武器を棄てたのだ
だが儂には必要だ
ブランの鍛冶屋に協力して貰って
農具や工具を改良し乍ら
頭にイメージした通りとは言えないが
まずまずの得物が仕上がった
闘う事すら忘れたブランに
必要のない武器なのに
彼等は協力して呉た
矢張り此処はparadisなのかも知れない
だが儂には必要なのだ
人と争いたい訳ではないが
再び未知の世界に出発する儂の前に
何が現れるか
其れは分からない
キバやマンドゥロやクンマ
話の通じない獣たちに
いつ襲われるかは分からない
鞣した革で作った上着とズボンだけでは
寂しい防具の替わりに
ドゥドゥの殻が欲しい処だが
paradisには存ないみたい
ウォラが編んでくれたトゥニカは
処々破け解れてきたが
縫い直して今も着ている
革の編み上げ靴も未だ履けるし
愛用のスクレも研いだ
「さぁ行くぞっBee」
遥か彼方まで続く平原を越えて
河を渡り山を跨ぎ
生き延びた先で
霧を攘い
闇を切り裂き
手探りでも
夜を走れ
生き延びた先に
未知なる世界が待っている
そう
儂が行く処
新しい世界が生まれ出ずるのだ
そして
兎にも角にも
新しい相棒との旅は始まった
我が名はオズマ
未知の世界を旅する者