鳥が鳴いてる
大砂漠の上から
広い空から影を落す
ヤツが見下ろしている
幾度となく滑空を繰り返し乍ら
我が躰が欲し
我が頭を染め
我が心を蝕んで
我が夢をも占拠した水辺
其の水に辿り着いたのは何時の事
飛び込んだ水溜まり
走った激痛に
喉も裂けよと飛び出した叫び
長く長く尾を引いた嗚咽
鳥も鳴いている
翼を広げ影を落し
儂を見下ろしている
焼けて爛れた皮膚が悲鳴を上げた
砂混じりの水
まるで
剥き出しの神経を
逆撫でるかの様な激しい痛み
渇き切っていた筈の瞳から
鳥が泣いている
広い空から見下ろしている
幾度も挑んだ
迸る嗚咽
歪む躰
鳥が泣いている
漸く痛みが慣れた頃
聞こえた鳴き声
砂上に走る影
見上げれば翼を広げ滑空する鳥
いつ気付いたのか
いつ見付かったのか
何時から狙っていたのか
鳥が鳴いてる
声が聴こえる
薄曇りの空に黒一点
陽射しが反射して
キラキラ輝く眩い水
そぉっと掬った緑の水
震える手で掬った命の水を
そっと当てる
皺涸れた口を開くと
ひび割れた唇がピキンと裂けた
血の味が混じる唇を舐め回す
痛みに歪む表情が
映っていたかも知れない水面から
掬い取った水を
むせる喉に流し込んだ
撹拌しない様に
そぉっと掬って飲み干した
二度三度繰り返し
啜る口から溢れ落ちる水が勿体なし
鳥が鳴いている
広い空から見下ろして
滑空し乍ら狙っているのは
水か獲物か
お前にはやらない
此の水は儂の物
全て飲み干すまで儂のもの
止まらなくなった
掌で掬ってなんて間に合わない
水溜まりに顔を浸す
痛みに歪む声
突っ込んだ手に浮いた砂粒
吸い上げる唇
飲めば飲むほどに
浮き上がった砂粒が
砂混じりの水が
口の中を砂利つかせている事も
一切気にせずに
飲み干した水溜まり
鳥が鳴いている
広い空から見下ろして
未だ足りない
隣の水も儂のもの
お前にはやらないぞ
鳥が鳴いている
広い空から落とす影
滑空し乍らヤツが見下ろしている
お前には翼が有る
自由自在に何処にでも行ける筈
大砂漠を亘り
やっと辿り着いた命の水辺
此れは儂の水溜まり
お前は他を探せ
鳥が鳴いてる
声が聴こえる
漸く満足した喉の渇き
だが
未だ満ち足りない
次は身体だ
干乾びた躰に
躰全身で浴びろ
水の有難みを堪能しろ
痛みさえ心地よい
其れは生きてる証だから
生を感じろ
痛みも伴に堪能しろ
我が緑の水辺は儂のもの
砂混じりの水溜まり
掌で掬い頭から浴びる水
我が命を救ったほんのり温かい水
鳥が鳴いている
広い空から見下ろして
儂がくたばるのを待っている
見下ろす鳥を見上げる儂
降りて来いっ
水を飲みたきゃ降りて来い
お前が降りて来るのを待っててやる
捕まえて喰ってやる
此処が何処かは判らない
だが名前は授けよう
鳥が鳴く
緑の水の砂漠と名付けよう

