「やる気スイッチ」
どこかの広告代理店のコピーライターが考えのだろうか。
受験に挑戦する小学生を持つ親の多くが常に探しているものを表現する、実にうまい言葉だと思う。
さて、そのやる気スイッチ、うちの息子の場合、明確に探し続けたわけではなが、比較的早い時期にヒントは見つかった気がしている。我が家の息子の場合、どうやら、自己顕示欲の刺激がキーのようだ。
競争が好き。
競争に勝ちたい。
勝ってだれかに「すごいね」と褒められたい。
要は「目立ちたい」という、誰しもが持つ自然な感覚。
競争にはいろいろ種類があるが、大きく分けるとすれば、運動系と勉強系であろう。
うちの息子の場合、運動系はあまり得意ではない。
運動は好きな方であるが、どうにもどんくさい。いやはや、とにかくどんくさいのである。
これは父ちゃんと母ちゃんから受け継いでしまったのだろうか?
父ちゃんも母ちゃんもそこまでどんくさくなかったと思うが・・・・。
ま、それはさておき、残念ながら運動では自己顕示欲の充足は期待できないことに息子は早い段階から気が付いていたようだ。その代わり、勉強系なら目立てるチャンスがあると思っている節があった。
そんな折、小学校の授業で百マス計算がスタートした。
ただやるだけでなく、スピードも競わせる内容。
早く終わった子から所要時間を記録していく。いくら早くても全問正解できなければ記録はなし。
その週のベスト3と歴代の最高タイムを記録した人を「チャンピオン」として、その名を壁に貼っておくというもの。
このシステムが息子のやる気スイッチを押した。
そして、この小さな競争に勝ち、目立つために、息子は積極的に勉強をするようになった。
その効果がすぐに現われた。
初期の段階からトップの常連となることができたのだ。
チャンピオンをとれると満足そうに報告してくる。
もちろん、ライバルたちもいるので、いつも勝てるというわけではない。
悔しい負け方をすると、「今日は〇〇君に〇〇秒差で負けた。次回は絶対に勝つ!」などと悔しそうに、でも実に楽しそうに話をしていた。
最初は足し算だけだったがそのうち引き算、掛け算が追加されるようになった。
何算をするかは曜日ごとに決まっていて、毎回、それぞれのチャンピオンが決まる。
一番良かった時は、全種目でチャンピオンになった時もあった。
この百マス計算を通じて勉強という種目での競争に勝つことの楽しさを覚えたのだ。
ただ、最後に百マスに割り算が入ってきたが、割り算にはツワモノがいて圧倒的に強い。
ついにチャンピオンにはなれなかったようだ。
こうして、自己顕示欲をくすぐるとスイッチが入ることがわかった。
そして、今の受験勉強につながる。
完全な競争世界だが、これは息子の性にあっていると思う。
YTテストなど、毎週、成績がはっきり出るのは息子も楽しいようだ。
そして何より、成績優秀者として名前が載ることがうれしい。
これが、息子のやる気スイッチを押し続けるポイントだ。
ただ一つ、ライバル心を刺激されることも大切だと思っているが、YTや組み分けでは、顔の見えない相手との競争となっているので、今一つ実感に乏しい様子。
なので、父ちゃんは成績優秀者の冊子に名前がいつも載っているような優秀な生徒さん(名前しかわからない)を何人かピックアップし、毎回、その子たちとの差を見るようにしている。
仮想ライバルである。
彼らはいつも成績優秀者として名前が載っているので、息子より遥かに先に行っているが、息子のスイッチを押し続けてくれる大切な存在なのである。