「くそっ…!勝機がねぇ…!」
ボロボロになり、立っているのが精一杯な俺。
その横で倒れている霧谷さん。
「どうした小僧。それっぽっちのチカラでまだ戦おうとするわけではあるまい。」
そして俺の前で傷一つなく悠然と語りかける男。
2度目の戦いを終えた俺は、ほとんど休むことも許されないまま次の浄化に取り掛かっていた。
俺と霧谷さんの目の前に突如俺たちより一回り大きいくらいの前身鎧男が現れた。
「ソウルカリバー!SET!」
両手で持った大きな剣を鎧男に向かって振り下ろす。
ガコン。鎧男は抵抗も出来ないままその片腕が地面に落ちていく。
しかし俺は呆然としてしまっていた。切ったのではない――落としただけだったのだ。
そう。そこには実体はなく、鎧だけが落ちていて――動いていた。
呆然とする俺の横で鎧男は落ちた腕を拾い――装着した。
がむしゃらに切りつけ続ける俺。しかしどんなに切られても鎧は元通り修理されていく。
新しいチカラを使うしかない。そう思った俺は呪文を詠唱した。
「大地の怒り(アウェイク)!」
鎧男の地面から無数の土の槍が現れる――と同時に目の前に奇妙な紋章と一人の男が現れ、鎧男を助けた。
「…誰だ!?」
俺が聞くとその男はゆっくりと低い声でこう言った。
「小僧。お前がゼロツーと組んでマンダスを浄化しているというガキだな?」
「ゼロ…ツー?」
隣で鋭い目で男を睨みつける霧谷さんに気づかないまま俺は聞きなれない単語を繰り返した。
「そうか。今は…霧谷咲…と名乗っているんだったか。」
ハっと大きく目を開く俺を、不敵な笑みを浮かべながら男は続けた。
「その女…そいつは私の部下でな。マンダス製造の第一人者だ。コードネームはゼロツー。わかるか小僧?」
困惑しながらも、俺は自身の説得の意味も含めて言い返した。
「…嘘だ…彼女はマンダスを浄化しようとしているんだぞ!?マンダスを作ったやつが浄化なんて――」
「もしも浄化――という行為も研究の一環だったら?」
男の言った最悪の展開に俺は何も言い返せない。
「…やめろ…。」
ずっと黙っていた彼女が口を開いた。
「私はマンダスなど…マンダスなど…作ってなん――」
彼女がしゃべり終わる前に、男はまるで瞬間移動をしたように彼女の目の前に現れ、彼女の顔面にハイキックを喰らわせた。彼女は大きく吹き飛ばされ気を失った。
「咲!!!!!」
とっさに俺は名前を呼んだ。
「上司の前でしゃべんじゃねぇよ。」
そう言い捨てる男に俺は何も考えずに突っ込んでいった。
「うおぉおおおお!!」
思い切り剣を振り下ろすが、男はまたもや瞬間移動で俺の背後に移動していた。
「おいおい。調子乗ってんじゃねぇぞ。」
振り返ると腹にミドルキックが炸裂する。
「ぐふぅ…!」
それでも俺は再度切りかかる。が、何度やってもやつからは一方的に反撃を受けるだけだった。
「くそっ…!勝機がねぇ…!」
圧倒的なチカラの前で俺は何も出来なかった。
攻撃がまるで効いていない。そんな絶望的状況に呆然と立ち尽くす俺に、本体から容赦ない攻撃が繰り出される。
衛星の光線とは比べ物にならない大きさのレーザーが直撃――
は免れたようだ。どうやら霧谷さんが俺を突き飛ばして助けてくれたらしい。俺に覆いかぶさるように二人で地面に横たわっていた。
「あなた死にたいの?戦闘中に気を抜くなんて…」
小声で、胸に突き刺さるような声で彼女は言う。
「わ…悪い。でもあいつ…攻撃が効いてないみたいなんだ…どうすれば…」
情けない声で彼女にすがる俺。カッコ悪いにもほどがある。
「斬撃だけが攻撃じゃないはずよ。少しは頭を使いなさい。あなた頭悪いの?」
良くはないさ。でも悪くなんてない。仮にも有名進学校に通ってるんだぜ。
何か弱点があるはずだ。頭をフル回転させて考える。おそらく攻撃が効いていないのではなく、一発が小さすぎて打ち消されているんだろう。だったらどうにかして一発の重い攻撃を――ポツポツ――雨だ。雨が降ってきた。
雨――電撃――これだ!
「霧谷さん。槍って大量に出せる?」
「えぇ。数十本なら可能。何か作戦があるようね。協力するわ。」
「奴の周りを囲むように大量に槍を突き立ててくれ。」
「いいわ。銀の牙(シルバーファング)!」
彼女の詠唱と共にマンダスの頭上から槍の雨が降り注ぐ。
たちまちマンダスの周囲に槍のバリケードが構成された。
「これでいいかしら?」
「あぁ。十分だ。」
天候は雨。中心に向かってそびえたつ大量の槍。
「サンダーブロウ!SET!おらおらおら!」
俺は狂ったように剣を振り回し、いくつもの斬撃を飛ばす。
だがその狙いはマンダスではない。
そう。斬撃の先にあるのは槍。斬撃を受けた槍が次々と電気を帯びていく。
すべての槍が電気を帯びたところで俺はマンダス目掛けて剣を投げつけた。
「しっかり浴びろよ!」
中心に放られた剣に対して、周囲のいくつもの槍から一斉に電撃が放出される。
計り知れないほどの電撃がマンダスを貫いた。
ゴゴゴ…マンダスはうなりを上げて消えていった。
「ハァ…ハァ…やったか。」
安堵に包まれた俺はその場に腰を落とした。
「さすがね。どうやらあなたを選んだのは間違ってなかったようね。」
霧谷さんが近づいてきて言った。そして無言で何かを指さした。
その先には緑色に輝くエレメントがあった。
俺も無言でエレメントに向かって指輪をかかげるとエレメントは静かに指輪に吸い込まれていった。
「今度はどんなチカラだろう。」
ボソッとつぶやいたが霧谷さんの反応はなかった。
辺りはすっかり暗くなっていて、いつの間にか雨も止んでいた。
「また戦闘で会いましょう。」
そんな台詞を残して彼女は去って行った。
慣れない戦闘で酷く疲れた俺は気を抜いたら今にも寝てしまいそうだったので足早に帰宅した。
衛星の光線とは比べ物にならない大きさのレーザーが直撃――
は免れたようだ。どうやら霧谷さんが俺を突き飛ばして助けてくれたらしい。俺に覆いかぶさるように二人で地面に横たわっていた。
「あなた死にたいの?戦闘中に気を抜くなんて…」
小声で、胸に突き刺さるような声で彼女は言う。
「わ…悪い。でもあいつ…攻撃が効いてないみたいなんだ…どうすれば…」
情けない声で彼女にすがる俺。カッコ悪いにもほどがある。
「斬撃だけが攻撃じゃないはずよ。少しは頭を使いなさい。あなた頭悪いの?」
良くはないさ。でも悪くなんてない。仮にも有名進学校に通ってるんだぜ。
何か弱点があるはずだ。頭をフル回転させて考える。おそらく攻撃が効いていないのではなく、一発が小さすぎて打ち消されているんだろう。だったらどうにかして一発の重い攻撃を――ポツポツ――雨だ。雨が降ってきた。
雨――電撃――これだ!
「霧谷さん。槍って大量に出せる?」
「えぇ。数十本なら可能。何か作戦があるようね。協力するわ。」
「奴の周りを囲むように大量に槍を突き立ててくれ。」
「いいわ。銀の牙(シルバーファング)!」
彼女の詠唱と共にマンダスの頭上から槍の雨が降り注ぐ。
たちまちマンダスの周囲に槍のバリケードが構成された。
「これでいいかしら?」
「あぁ。十分だ。」
天候は雨。中心に向かってそびえたつ大量の槍。
「サンダーブロウ!SET!おらおらおら!」
俺は狂ったように剣を振り回し、いくつもの斬撃を飛ばす。
だがその狙いはマンダスではない。
そう。斬撃の先にあるのは槍。斬撃を受けた槍が次々と電気を帯びていく。
すべての槍が電気を帯びたところで俺はマンダス目掛けて剣を投げつけた。
「しっかり浴びろよ!」
中心に放られた剣に対して、周囲のいくつもの槍から一斉に電撃が放出される。
計り知れないほどの電撃がマンダスを貫いた。
ゴゴゴ…マンダスはうなりを上げて消えていった。
「ハァ…ハァ…やったか。」
安堵に包まれた俺はその場に腰を落とした。
「さすがね。どうやらあなたを選んだのは間違ってなかったようね。」
霧谷さんが近づいてきて言った。そして無言で何かを指さした。
その先には緑色に輝くエレメントがあった。
俺も無言でエレメントに向かって指輪をかかげるとエレメントは静かに指輪に吸い込まれていった。
「今度はどんなチカラだろう。」
ボソッとつぶやいたが霧谷さんの反応はなかった。
辺りはすっかり暗くなっていて、いつの間にか雨も止んでいた。
「また戦闘で会いましょう。」
そんな台詞を残して彼女は去って行った。
慣れない戦闘で酷く疲れた俺は気を抜いたら今にも寝てしまいそうだったので足早に帰宅した。
朝7時。目覚ましが鳴り、それを止めて二度寝。
朝7時30分。遅刻ギリギリに慌てて家を出る。
朝8時30分。朝のホームルームに滑り込みセーフ。
昨日のことが嘘のような日常がやってくる。
夢だったんじゃないかとしか思えないが、このポケットには確かにあの銀色の指輪がある。なんだったんだろう。
「おいおい、どうしたんだよ?悩んでるなんてらしくないじゃん。」
と放課後一番に声をかけてくるのは悪友の桜木友輝。
「あーいや。別に。」
「今日カラオケ行こうぜ。」
「悪い。パス。」
「やっぱなんかあんじゃねーか。」
「なんもねーよ。じゃーな。」
そう言って学校を出る。すると腕時計が鳴った。
盤面に地図が表示される。意外にハイテクだな。
地図上に赤い点がある。おそらくこれがマンダスの位置を表してるんだろう。
幸い目的地まではここから15分ほどだ。俺は急いで向かった。
目的地に着くとすでに霧谷さんの姿があった。しかし、マンダスらしき怪物の姿は見当たらなかった。
「霧谷さん。マンダスは?」
駆け寄って彼女に問いかける。
「咲でいいわ。マンダスはまだ具現化されていない。」
咲ねぇ。女の子とこうやって話すのも実に数年ぶりで恥ずかしいし、そんな勇気はない。
それよりももっと聞きたいことがある。
「具現化…って?」
「マンダスは生まれたときはまだ可視出来ない。人の欲望を餌として成長すると具現化される。」
漫画やらアニメやらでありそうな設定だ。そこで俺はふと思った。
「成長する前に浄化することは出来ないのか?」
誰もが思うことだろう。敵の成長やら変身やらを指を咥えて見てることが出来るのなんて、戦隊ものの特撮ヒーローだけだろう。
「見えない敵をどうやって倒すつもり?」
「もっともだ。」
当然のような答えで俺の思いは打ち砕かれる。
『待てるヒーロー』に対して尊敬の眼差しを向けていると不意に指輪が光った。
「…来る。」
次の瞬間、俺たちの目の前に、黒くて巨大な丸い物体が現れた。その周りには小さな丸い球が10個、まるで衛星のように飛び回っている。
先にしかけてきたのは敵の方だった。小さい方の球――衛星から光線が放たれる。
「ソウルカリバー!SET!」
光線を剣で弾き、光線を放ってきた衛星に直進する。
「喰らえ!」
大きく剣を振りかぶると両サイドから光線が向かってきていた。
「くっ…!」
攻撃態勢に入っている今の状態からでは回避は間に合わない。
「防護壁(ウォール)!」
霧谷さんの詠唱と同時に俺の周りに透明な膜が張られる。
その膜に光線は反射され、俺は窮地を逃れた。
「サンキュー。」
一言つぶやいてからそのままさっきの衛星に切りかかる。
ズシャッ。衛星は消滅した。しかし、まだ1つ目。残り9つだ。
間髪入れずに光線が襲い掛かってくる。バックステップでかわして攻略法を考える。
――敵の遠隔攻撃に対して接近は危険だろう。この剣以外に何かチカラは…
そうだ。エレメントで得た新しいチカラがあるじゃないか。一体どんなチカラだろう。効果はわからないが、昨日同様唱え方はなぜだか知っている。
「風雷(サンダーブロウ)!SET!」
唱えると同時に両手の剣が電撃と風を帯びた。
「せりゃー!」
剣を横に薙ぎ払うと電撃を帯びた斬撃が飛んでいく。
飛んでくる光線を掻き消して斬撃が衛星を破壊する。
別の衛星から再び光線が放たれる。しかしそれは俺の方向には射出されなかった。
光線の先にいるのは霧谷さんだ。
「危ない!」
「ウォール!」
光線を弾く膜が彼女を護った。
「私なら大丈夫。防御系スキルなら唱えられる。でも私は攻撃スキルは使えない。だから倒すのはあなた。」
彼女の言葉にうなずいて、俺は斬撃で次々と衛星を破壊していく。
「これでラストだ!」
俺の放った斬撃が残り1つの衛星に直撃し、それを砕き散った。これで残りは本体だけだ。
「丸裸だぜ!」
複数の斬撃が本体に襲い掛かる。斬撃は本体に直撃。
これでマンダスも浄化――と思いきや、斬撃はまるで飲み込まれたかのようだった。
効いてない…!?どうすればいいんだ…
俺は呆然とそこに立ち尽くしていた。
朝7時30分。遅刻ギリギリに慌てて家を出る。
朝8時30分。朝のホームルームに滑り込みセーフ。
昨日のことが嘘のような日常がやってくる。
夢だったんじゃないかとしか思えないが、このポケットには確かにあの銀色の指輪がある。なんだったんだろう。
「おいおい、どうしたんだよ?悩んでるなんてらしくないじゃん。」
と放課後一番に声をかけてくるのは悪友の桜木友輝。
「あーいや。別に。」
「今日カラオケ行こうぜ。」
「悪い。パス。」
「やっぱなんかあんじゃねーか。」
「なんもねーよ。じゃーな。」
そう言って学校を出る。すると腕時計が鳴った。
盤面に地図が表示される。意外にハイテクだな。
地図上に赤い点がある。おそらくこれがマンダスの位置を表してるんだろう。
幸い目的地まではここから15分ほどだ。俺は急いで向かった。
目的地に着くとすでに霧谷さんの姿があった。しかし、マンダスらしき怪物の姿は見当たらなかった。
「霧谷さん。マンダスは?」
駆け寄って彼女に問いかける。
「咲でいいわ。マンダスはまだ具現化されていない。」
咲ねぇ。女の子とこうやって話すのも実に数年ぶりで恥ずかしいし、そんな勇気はない。
それよりももっと聞きたいことがある。
「具現化…って?」
「マンダスは生まれたときはまだ可視出来ない。人の欲望を餌として成長すると具現化される。」
漫画やらアニメやらでありそうな設定だ。そこで俺はふと思った。
「成長する前に浄化することは出来ないのか?」
誰もが思うことだろう。敵の成長やら変身やらを指を咥えて見てることが出来るのなんて、戦隊ものの特撮ヒーローだけだろう。
「見えない敵をどうやって倒すつもり?」
「もっともだ。」
当然のような答えで俺の思いは打ち砕かれる。
『待てるヒーロー』に対して尊敬の眼差しを向けていると不意に指輪が光った。
「…来る。」
次の瞬間、俺たちの目の前に、黒くて巨大な丸い物体が現れた。その周りには小さな丸い球が10個、まるで衛星のように飛び回っている。
先にしかけてきたのは敵の方だった。小さい方の球――衛星から光線が放たれる。
「ソウルカリバー!SET!」
光線を剣で弾き、光線を放ってきた衛星に直進する。
「喰らえ!」
大きく剣を振りかぶると両サイドから光線が向かってきていた。
「くっ…!」
攻撃態勢に入っている今の状態からでは回避は間に合わない。
「防護壁(ウォール)!」
霧谷さんの詠唱と同時に俺の周りに透明な膜が張られる。
その膜に光線は反射され、俺は窮地を逃れた。
「サンキュー。」
一言つぶやいてからそのままさっきの衛星に切りかかる。
ズシャッ。衛星は消滅した。しかし、まだ1つ目。残り9つだ。
間髪入れずに光線が襲い掛かってくる。バックステップでかわして攻略法を考える。
――敵の遠隔攻撃に対して接近は危険だろう。この剣以外に何かチカラは…
そうだ。エレメントで得た新しいチカラがあるじゃないか。一体どんなチカラだろう。効果はわからないが、昨日同様唱え方はなぜだか知っている。
「風雷(サンダーブロウ)!SET!」
唱えると同時に両手の剣が電撃と風を帯びた。
「せりゃー!」
剣を横に薙ぎ払うと電撃を帯びた斬撃が飛んでいく。
飛んでくる光線を掻き消して斬撃が衛星を破壊する。
別の衛星から再び光線が放たれる。しかしそれは俺の方向には射出されなかった。
光線の先にいるのは霧谷さんだ。
「危ない!」
「ウォール!」
光線を弾く膜が彼女を護った。
「私なら大丈夫。防御系スキルなら唱えられる。でも私は攻撃スキルは使えない。だから倒すのはあなた。」
彼女の言葉にうなずいて、俺は斬撃で次々と衛星を破壊していく。
「これでラストだ!」
俺の放った斬撃が残り1つの衛星に直撃し、それを砕き散った。これで残りは本体だけだ。
「丸裸だぜ!」
複数の斬撃が本体に襲い掛かる。斬撃は本体に直撃。
これでマンダスも浄化――と思いきや、斬撃はまるで飲み込まれたかのようだった。
効いてない…!?どうすればいいんだ…
俺は呆然とそこに立ち尽くしていた。